2017年の全日本選手権もいよいよ終盤戦です。10月の終盤2連戦は、まず中部大会。愛知県岡崎市のキョウセイドライバーランドに設営された会場は、ギャラリーにとっては観戦の容易な、そしてダイナミックで見ごたえのあるものでした。好天に恵まれ、多くの新しいトライアルファンを迎え、熱い戦いが繰り広げられました。
雨予報もあり、実際に土曜日の朝まで雨が残っていたこともあり、セクションはいくぶん易しめ。小川友幸(Honda)が、オールクリーン勝負で、競技時間の短い者が勝利する展開になるのではないかと予想していたほどでした。
自身の予想通り、小川は快調にクリーンの山を築いていきます。1ラップ目、急勾配を上がり向きを変えて降りてくる設定の第8セクションで、唯一、わずかにバランスを崩して1点を失いますが、減点はこの1点のみでした。
一方ライバルは、小川ほどにうまく走れてはいませんでした。タイトル争いのライバル、黒山健一(ヤマハ)は第3セクションで5点となり、さらに他セクションでも減点があって徐々に小川の敵ではなくなっていきました。
この日、小川の勝利を脅かす存在となったのは、野崎史高(シェルコ)と柴田暁(ヴェルティゴ)の2人。野崎は全日本での優勝経験もあり、柴田は前戦北海道大会で小川に次ぐ2位になっています。1ラップ目、野崎は5点、柴田は6点。リードする小川のワンミスでトップが入れ替わる可能性のある試合展開です。
そして2ラップ目、小川が第3、第4と立て続けにミスを犯しました。どちらも5点になるほどの失敗ではなかったものの、2点と3点で合わせて5点。これでトップは野崎のものとなり、柴田とも同点、一気に三つ巴のトップ争いとなりました。
しかし、柴田は第6セクションのヒルクライムで失敗して5点、野崎も難セクションだった第8セクションで5点と、再び小川がトップに返り咲きます。結局この点差を守って、12セクション2ラップの戦いを終えた小川は、2位の野崎に4点差。残るはSSの2セクションでの争いになりました。
SS第1は水の流れる岩場から、巨大タンクに飛びつくというアクロバティックな設定。ここをクリーンしたのは、小川ただ一人でした。野崎は1点。これで野崎との点差が5点となり、SS第2を待たず、小川の勝利が事実上決まりました。
続くSS第2は、建築資材やコンクリートブロックなどを組み合わせた人工セクション。アイデアを一般公募して生まれました。毎年、豊かな発想の演出が楽しみな、中部大会の目玉セクションでもあります。これが難セクションであり、斎藤晶夫(Honda)が3点、小川毅士(ベータ)が2点で出たほかは、みな5点となりました。すでに勝利を決めていた小川は、ここを美しくクリーンして、自身の勝利に華を添えるべく、自慢の美しい走りでトライ。しかし、惜しくも1度だけ足を着いてしまいました。それでも、ライバルがことごとく5点となる中、この日の小川の好調ぶりを見せつけたSSとなり、中部大会の戦いは幕を下ろしました。
これで、小川は第3戦からの4連勝。今回後半に追い上げた黒山が3位となり、この大会だけで、タイトル争いにおいて黒山に5点差をつけることに成功し、最終戦に向けて12点のアドバンテージを得ました。リタイアのほとんどないトライアル大会において、12点のリードは、まず間違いなくタイトルを獲得できる安全圏と見ていいでしょう。もちろん、最後の最後まで油断は禁物ではあるものの、次の最終戦は、シーズン5連覇、そして7度目の全日本タイトルを獲得する、小川にとって記念すべき大会となるはずです。
小川友幸(優勝)
「勝利できたし、しかも4連勝でいい戦いができました。ただ自分としては、どこかの戦いでオールクリーンをしたかったので、1ラップ目に1点、2ラップ目に2つのセクションでミスが出て、2ラップともにオールクリーンができなかったのは残念です。2ラップ目こそはと守りに入ってしまったのがいけなかったのかな、と思います。これでタイトルの獲得はほぼ間違いないと思いますが、やはり最後の最後まで油断せず、しっかり戦い抜きたいです」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
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1 | 1 | 小川友幸 | 0 | 7 | 22 | |
2 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 0 | 16 | 20 |
3 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 21 | 16 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 39 | 13 |
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 44 | 14 |
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 0 | 58 | 9 |
8 | 8 | 斎藤晶夫 | 0 | 64 | 6 | |
13 | 14 | 砂田真彦 | 0 | 90 | 4 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||||||||
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1 | 1 | 小川友幸 | 114 | |||||||||
2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 102 | ||||||||
3 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 86 | ||||||||
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 82 | ||||||||
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 72 | ||||||||
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 55 | ||||||||
7 | 8 | 斎藤晶夫 | 55 | |||||||||
12 | 14 | 砂田真彦 | 24 |