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inside HPD〜語り継がれるアメリカン・ホンダ・レーシング・スピリット
vol.4堀内大資(Daisuke Horiuchi)Hondaパフォーマンス・ディベロップメント(HPD)チーフ・エンジニア
「最大の難関となった部品調達」

みんなやる気のあるスタッフばかりだったので、順調に育ってくれたのですが、その半面、最も難しかったのは部品の調達でした。現地化するにあたり、当然のことながら全部アメリカで作ろうという目標を立てたんですけど、レース部品を扱ってくれるメーカーさんがなかなかいない。最初の2年はアメリカ国内のメーカーさんを、ずいぶん回りました。

削ることで製作可能な部品はHPDの内部で作業ができるようになっています。 削ることで製作可能な部品はHPDの内部で作業ができるようになっています。

毎月、鋳造屋さんや機械加工屋さんを訪ねて話しをしたのですが、やはり日本と同じようにはいかないわけです。例えば1個だけ作るとして、日本なら狙ったどおりの精度のものが必ずできます。しかしアメリカでは習慣が違うようで、10個作って一番良いものを1個選ぶというやり方なんですね。だからコストもかなりかかってしまう。

中でも一番苦労したのが鋳造品で、何度もアメリカでチャレンジしたんですけど、なかなか良いものができない。最終的にイギリスへ頼むことになり、最初のうちは世界中から一番良い物を安く調達するというふうに、方針を変えざるを得ませんでした。削ったりする部品はできるだけHPDの中で作るようにし、現在は半分以上をアメリカ国内で調達していますが。

HPDの内部には様々な部品を製造、加工できる工作機器が揃っています。 HPDの内部には様々な部品を製造、加工できる工作機器が揃っています。

最初に立てた目標通り、将来的にはアメリカだけで完結させるのが夢です。幸い、このHPD周辺は航空機産業がすごく盛んで、NASAの研究所の試作もやっているメーカーが多いんですね。それなりの技術は非常にあって、十分我々の要求に見合った精度と品質を持った物が作れますが、すごい高級品になってしまうのが頭痛のタネです。

また、飛行機は頻ぱんにモデルチェンジするわけではなく、ロケットも5年ぐらいかけて開発するので、部品を頼むと2カ月もかかる状態でした。これからもコストダウンと時間短縮を目標に、じっくりと地元のメーカーさんに働きかけたいと思っています。和光研究所の周りにある部品メーカーさんだって、研究所と一緒に長い年月を経て育ってくれたわけで、カリフォルニアのバレンシアでも同じことができたらいいですね。

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