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inside HPD〜語り継がれるアメリカン・ホンダ・レーシング・スピリット
vol.3堀内大資(Daisuke Horiuchi)Hondaパフォーマンス・ディベロップメント(HPD)チーフ・エンジニア
「ゼロからのエンジン開発」

経験者を雇ったほうが即戦力になるかもしれませんが、「Hondaのエンジンの作り方」を一から学んでもらうには、他の会社に染まっていないほうがいいと思いました。新卒だから年齢も非常に若いですし、フレッシュで指導のしがいがありましたね。本当にやる気十分なメンバーばかりで、教えたことをいくらでも吸収してくれる。もちろん技術的な面で、あるパーツの設計を任せたら、すぐに壊れちゃったとか、そういうことはありましたよ。

ただ、教えるほうとしては英語が難しかったというのがあって、よく日本人同士で「日本だったらもっと楽に、何でもできるのにね」って愚痴っぽくなったことはありましたけど(笑)。その部分では経験者にキーマンとなってもらい、彼自身の経験も含めて英語で指導してもらいました。

指導にあたった日本人スタッフが開発に携わった歴代のCARTエンジンがHPDに飾られています。 指導にあたった日本人スタッフが開発に携わった歴代のCARTエンジンがHPDに飾られています。

とにかく、HPDでHondaのレースエンジンを創ろうと決めたからには、我々が知っているすべての技術を包み隠さず教えようと。それもただ教えるのではなく、最初は自分で考えてもらい、それぞれのアイデアを持ち寄ってディスカッションをするんです。Hondaでよく言われる「ワイガヤ」で物を創っていくみたいな感じで、みんなのアイデアをどんどん出してもらって、意見を出し合います。

例えば構造に関する設計をするとして、みんな経験が少ないからけっこう派手な図面を書いてくるんですけど、そこに私が過去に経験したアイデアも出して「さあ、どれが良いか?」ってやります。我々が見ればすぐにここが壊れるというのが解るんですが、今は昔に比べてすごく手軽に構造解析や応力解析ができますから、シミュレーションすればすぐに結果が出てくるんですね。

HPDの中ではいつもスタッフが集まってディスカッションを繰り広げています。 HPDの中ではいつもスタッフが集まってディスカッションを繰り広げています。

そういうことを繰り返していくと、勘の付け所というのが解ってきて、新しい部品をデザインする場合、部品だけじゃなくて構造その物をコンポーネントとして考え、どこに注意しなければならないのかが解るようになります。それこそがHondaのやり方であり、みんなでディスカッションしながらできたものが、Hondaのエンジンだというのをスタッフに解って欲しかったんです。(vol.4につづく)

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