モータースポーツ IRL インディカー・シリーズ松浦孝亮のだからインディはおもしろい!
松浦孝亮の「実感篇 だからインディはおもしろい!」

vol2
1.オーバルコースを走るマシンは、
 スタッガーなど独特のセッティング
 があるからおもしろい。

誰にも言わなかったけど、
はじめてインディカーに乗ったとき本当はフラフラだった。

スタッガー

F1をテストドライブしたときは加速Gと横Gが衝撃的だったけど、今までF3などのレーシングカーに乗って体がフラフラになることなどなかった。
でも、インディカーにはじめて乗ったとき、ほんの10周走っただけでまるで貧血みたいにフラフラになった。コクピットに座っていると『まだまだ走れる』と思うんだけど、クルマを降りて歩きはじめたとき『あれっ』と。油断すると倒れそうになるほどフラフラしたんだ。その理由は、超高速でオーバルコースを左にばかり回るので、体の血液が右側に寄っちゃうから。頭のなかもそういう状態になってフラフラしたんだと思う。
マシンから降りて実はフラフラだったけど、そんな所を見せると『アイツ体力ないな』と思われるといけないので、我慢してその場をつくろい誰にも言わなかった。そのときは、『僕だけがフラフラするのかな』ってすごく不安だった。『インディカーはすごい、みんな平気なのか』と思った。
しばらくして、インディドライバーとして長年の参戦経験を持つ、当時チームオーナー兼ドライバーだったエイドリアン・フェルナンデスが『はじめはフラフラするだろ?』と話しかけてきてくれた。それまで黙っていて誰にも気づかれていないと思っていたけど、ベテランのエイドリアンにはわかっていたんだ。だから正直に『フラフラするよ』って答えた。するとエイドリアンは、『僕もフラフラするよ』って言ってくれたんだ。それで『僕だけじゃなかったんだ』とホッとした。ドライバー同士は互いにライバルなので絶対に弱味は見せない。でもエイドリアンは、ドライバーとしての自分の弱味を話してでも、チームオーナーとして新人の僕の不安を取り除いてくれたんだ。
インディカー・シリーズは、単にスピードが高いだけじゃなく、体にとってキツい状態で闘うレース。3〜4レースすると慣れてそれほどフラフラしなくなったけど、相変わらず体の血液は右側に頻繁に寄っているわけだからね。そうした体の状態で、350km/h以上ものスピードを出して一瞬も気を抜かずに1時間以上も闘っている。ちょっとでも気を抜くと負けるからね。そこがインディの厳しさであり、観る側にとってのおもしろさなんだ。

 


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