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ジェンソン・バトンのF1ダイアリー
 「B・A・Rは素晴らしいチームだよ」とジェンソンは言った。
 「本当に上手くいっていると思っている、その理由のひとつとして、チームの雰囲気がものすごくいいんだ。ドライビングに関しては、ウィリアムズのときと同じくらいリラックスして走れているし、そのことがレース結果につながっている」
 それはジェンソンが成長した証と言えよう。

 現在のジェンソンは、心理状態も良好だ。
 「今はレースがとても楽しいよ。チームのスタッフ全員が心の底から勝ちたいと思ってがんばっている。いい雰囲気だ。このチームで走るのは楽しいし、自信もついてきた」

 モナコGP予選2日目の5月31日(土)、フリー走行2回目のセッション開始早々にジェンソンはトンネル出口のシケインで単独大クラッシュ。トンネル通過直後にスピンしたマシンは、右サイドから防護壁に激突した。ジェンソンは自力で脱出することができず、すぐに救急車で市内のプリンセス・グレース病院に運ばれた。幸い外傷もなく脳震盪と打撲ですんだものの、決勝レースへは大事を取って出走せず・・・・。
 レースに詳しい人たちの中には、この大アクシデントが、ジェンソンにとっては良い方向に作用したと言う人たちがいる。ジェンソンは、サーキットに対して常に最高の敬意を払ってレースに臨まなければ、つまり、一瞬でも細心の注意を怠っては、サーキットは瞬時にこれほど恐ろしい牙をむいて襲い掛かる、ということ学んだ。
 この経験により、ジェンソンはサーキットを決して過小評価することなく、ミスも少ない、と評されているのだ。モナコ以後の4レースを観ていると確かに違うとうなずけるくらい、ジェンソンはひと皮向けたように素晴らしい走りを見せている。

 興味深いことに、もうひとつモナコGPのアクシデントを通じて明らかになったのは、誰も知らなかったジェンソンのドッグ・ファイターとしての資質だった。
 「僕はここ(モナコ)が大好きだ」
 モナコGP予選2日目の朝、ジェンソンはサングラスに短パンとチーム・シャツという姿でとてもリラックスした様子だった。彼はB・A・R Hondaのモーターホームで、ミューズリー(シリアル)を食べながら言った。
 「ここにはグランプリ・レーシングのすべてがある。豊かさと、素晴らしい気候と、たとえひとつの小さなミスも許されない高い技術と集中力が要求されるサーキット・・・・」
 その数時間後、フリー走行での大クラッシュ。
 しかし、翌朝、元気を回復したジェンソンが最初に発した言葉は、「僕はレースできるのか?」だったのだ。
 それはベネトン時代の2年間に報われなかったレースへの情熱とエネルギーであり、彼が時を経て、速くて経験豊かなレーサーとして成長したことの証だった。チームの決断によって決勝レースの出場を辞退せざるをえなくなったと聞いた時、フラストレーションとともにジェンソンは叫んだ。
 「僕が走らなければならないんだ!」

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