Formula-1 2020 総集編
Season Report

Red Bull Racingが2勝、Scuderia AlphaTauriが1勝を挙げ、
Hondaは現行パワーユニットで複数チームが勝利を挙げた
初のマニュファクチャラーに

新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅にスケジュールが変更された2020年のF1世界選手権。カレンダーは全17戦となり、そのうち3週連戦が4回という過密日程となったが、Hondaパワーユニット(PU)「RA620H」を使用するRed Bull Racing、Scuderia AlphaTauriはともにPU関連ペナルティーを受けることなくシーズンを終了。Red Bull Racingが2勝を挙げてコンストラクターズランキング2位、Scuderia AlphaTauriはToro Rosso時代の2008年以来となるイタリアGP優勝を果たした。これは、2014年に導入された現行PUレギュレーション下において、同一メーカーのPUで複数チームが勝利を挙げた初のケースとなった。

Scuderia AlphaTauriとはタッグ結成50戦目の記念レースで勝利を挙げたScuderia AlphaTauriとはタッグ結成50戦目の記念レースで勝利を挙げた

2019年に引き続き、HondaはRed Bull RacingとScuderia AlphaTauriの2チームにPUを供給。ドライバーも前年と変わらず、Red Bull Racingがマックス・フェルスタッペンとアレクサンダー・アルボン、Scuderia AlphaTauriがピエール・ガスリーとダニール・クビアトというラインアップとなった。

当初開幕戦が予定されていた3月のオーストラリア・メルボルン。フリー走行開始直前に中止の決定が下される。その後、欧米ではロックダウンに突入し、F1チーム、マニュファクチャラーもファクトリーへの立ち入りが制限されるなど、厳しい状況に。しかし、FIAやF1関係者の努力により、無観客ながら7月初旬のオーストリアで開幕戦が行われることが決定した。

最終的にシーズンは全17戦となり、F1史上初の2戦連続同一サーキットや、当初予定になかったイタリアのムジェロとイモラ、ドイツのニュルブルクリンク、トルコのイスタンブールパーク、ポルトガルのアルガルベ、バーレーンの外周コースが開催地に追加され、データが十分にない中での戦いを余儀なくされた。

急きょ中止が決まったメルボルンでは慌ただしく撤収作業が進められた急きょ中止が決まったメルボルンでは慌ただしく撤収作業が進められた

こうして始まったシーズン開幕の舞台は、オーストリアのレッドブル・リンク。その名の通りRed Bullグループのホームサーキットだったが、Red Bull Racingの2台にはPUの電気系と見られるトラブルが発生し、ともにリタイア。さらに、Scuderia AlphaTauriもクビアトが残り1周に迫るタイミングでパンクを喫して戦線離脱。Honda PU勢は、ガスリーのみが7位で完走してポイントを獲得した。続くオーストリアでの2戦目、そしてハンガリーGPでは、フェルスタッペンが3位、2位と連続で表彰台を獲得するも、上位を行くメルセデス勢とはまだ差がある状態。Scuderia AlphaTauriもこの3連戦でポイント獲得はガスリーとクビアトが1度ずつと、厳しいシーズンのスタートとなった。

1週のインターバルを挟み、2度目の3連戦がイギリスのシルバーストーンでスタート。1戦目のイギリスGPでは、レース最終盤にメルセデス勢が相次いでパンクを喫する中、フェルスタッペンが2位表彰台を獲得。さらに、同じシルバーストーンでの開催となった翌週のF1 70周年記念GPでは、予選を一番硬いハードタイヤで通過したフェルスタッペンが、巧みなタイヤマネージメントでアドバンテージを築き、最終的には2位に11秒以上という大差をつけ、今季初勝利を挙げる。その次のスペインGPでもフェルスタッペンが2位に入り、5戦連続の表彰台登壇。Scuderia AlphaTauriも3戦すべてでポイント獲得を果たし、徐々に調子が上向いていく。

今季3度目のトリプルヘッダーは、ベルギーからイタリアのモンツァとムジェロへの転戦。ベルギーではフェルスタッペンが3位に入るとともに、予選12番手のガスリーが数々のオーバーテイクを決めて8位に入賞し、ドライバー・オブ・ザ・デイを獲得した。

フェルスタッペンは、第5戦での優勝を含め、第7戦まで6戦連続で表彰台に登壇フェルスタッペンは、第5戦での優勝を含め、第7戦まで6戦連続で表彰台に登壇

超高速サーキットのモンツァで行われる第8戦イタリアGP。この大会より、予選とレースで同一のPUモードを使わなければならないこととなり、それまでのようなモードによる出力の変更は許されなくなった。これにより、Hondaのエンジニアたちは、PUのセッティングを最適化するなど新たな対応をして臨む。

また、このレースは2018年にScuderia AlphaTauri(旧Toro Rosso)にPU供給を開始してから50戦という節目。決勝はセーフティカー出動に赤旗中断という波乱をうまく味方につけたガスリーが、レース中盤で首位に立つと、後続を振り切ってF1キャリア初優勝を飾る。AlphaTauriにとってはチームとして12年ぶりの勝利。Honda PUで勝利を挙げたのは、Red Bullに続きAlphaTauriが2チーム目となり、2014年に現行のPU規則が導入されて以来、同一メーカーのPUで複数チームが優勝を果たすのは初めてのことだった。

この次戦のムジェロで行われた第9戦トスカーナGPでは、アルボンが3位に入り、キャリア初のF1表彰台。さらに、フェルスタッペンが第10戦ロシアGPと第11戦ドイツGPで2位、第12戦ポルトガルGPで3位に入り、Honda PUとしては第2戦から11戦連続での表彰台登壇となった。第13戦エミリア・ロマーニャGPではクビアトの4位が最高位で、連続表彰台が途切れたが、Hondaとしては1990年の13戦連続、1987年の12戦連続に次ぐ歴代3位タイの連続記録となった。

日本でのSF参戦時からHondaエンジンで走るガスリーが節目のレースで見事に優勝日本でのSF参戦時からHondaエンジンで走るガスリーが節目のレースで見事に優勝

ヨーロッパでのシーズン最後のレースとなった第14戦トルコGPでは厳しい路面コンディションもあって表彰台を逃したが、中東に舞台を移した第15戦バーレーンGPでは、フェルスタッペンとアルボンが2位・3位に入り、Honda PUとしては2019年ブラジルGP以来のダブル表彰台登壇。同じバーレーンでレイアウトの異なる外周コースを使って行われたサヒールGPは、予選でフェルスタッペンが首位と0.05秒差に迫るなど、着実に戦闘力を上げていた。

迎えた最終戦アブダビGPでは、フェルスタッペンが今季初のポールポジションを獲得。決勝ではスタートで首位を守ると、その後は一度もリードを譲らず、2位に15秒以上の大差をつける完勝。Honda PUとしては、4名のドライバー全員が一度もPU関連ペナルティーを受けることなくシーズンを終了。これは、F1に参戦する4マニュファクチャラーの中で唯一だった。

シーズンを通してみると、Red Bull Racingは2016年以来となるコンストラクターズランキング2位。Scuderia AlphaTauriは、Toro Rosso時代を含めてチーム創設以来最多の107ポイントを獲得した。フェルスタッペンはシーズン2勝、ポールポジション1回を獲得し、11回の表彰台登壇を果たしたが、これはHondaエンジンを使用するドライバーとして1991年のアイルトン・セナの12回に次ぐ数字。Hondaとしては、1964年の参戦開始からののべ表彰台回数は最終戦アブダビGPで199回となっており、200回目の登壇を目指し、2021年の開幕戦に臨む。シーズンを通してみると、Red Bull Racingは2016年以来となるコンストラクターズランキング2位。Scuderia AlphaTauriは、Toro Rosso時代を含めてチーム創設以来最多の107ポイントを獲得した。フェルスタッペンはシーズン2勝、ポールポジション1回を獲得し、11回の表彰台登壇を果たしたが、これはHondaエンジンを使用するドライバーとして1991年のアイルトン・セナの12回に次ぐ数字。Hondaとしては、1964年の参戦開始からののべ表彰台回数は最終戦アブダビGPで199回となっており、200回目の登壇を目指し、2021年の開幕戦に臨む。

最終戦アブダビGP スタートから後続を引き離し、完勝を飾ったフェルスタッペン最終戦アブダビGP スタートから後続を引き離し、完勝を飾ったフェルスタッペン

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