Behind the ScenesVolume17

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.17

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.17

皆さま、こんにちは。このコラムでは初めてになりますが、Honda F1マネージングディレクターの山本です。今回は「日本GPを終えて」というテーマでお話しさせていただきたいと思います。

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.17

ただ、まずその前に、先週末に東海・中部・関東・東北などに上陸し、猛威を振るった台風19号の被害によりお亡くなりになられた皆さまに哀悼の意を示すとともに、被災された皆さまに対してお見舞いを申し上げます。被害の報道などを見る度に心を痛めていますが、被災地の少しでも早い復興を心よりお祈りしています。

そして、この台風で土曜のプログラムがキャンセルになり、新幹線などの交通網にも大きな混乱が起こる中でも、日曜の決勝レースに足を運んでくださった皆さま、また、TVなどを通してご声援を送っていただいた皆さまにも感謝を申し上げます。今回は昨年の倍以上となる12000席のHonda応援席をご用意しましたが、早いタイミングでの完売となりました。日曜に青と白で染まったスタンドを見たときには、私自身、こみ上げるものがありました。

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―素敵なグランプリを作ってくださったことに感謝

これはHondaのメンバーだけでなく、Toro Rosso、Red Bullのメンバーも同じことを話していましたが、両チームにこのような熱烈な声援を送っていただけるのは、世界中のレースの中でも日本をほかにしてありません。様々なオリジナル応援グッズを手作りで用意してくれることも日本でしか見られないことで、皆さまからは、毎年たくさんパワーをいただいています。

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ほかのチームも同様ですが、温かいもてなしで迎えてくれるファンがいて、ドライバー/エンジニアにとって非常にチャレンジングな鈴鹿サーキットでレースができる日本GPを、例年みんなとても楽しみにしているんです。皆さん、素敵なグランプリを作っていただき、本当にありがとうございます。

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―レースは悔しい展開に

それだけに、日曜のレースでは、多くのファンが見ている2コーナーでRed Bullの(マックス・)フェルスタッペン選手がスタート直後に接触し、実質的にレースを終えることになってしまったことは非常に残念でした。

一方で、(アレクサンダー・)アルボン選手が力強い走りとともに多くのオーバーテイクを見せて自身のベストとなる4位、昨年は入賞を間近で逃したToro Rossoの(ピエール・)ガスリー選手も、サスペンションの不調に苦しみながら戦い抜いて8位入賞。(ダニール・)クビアト選手もスタートで順位を落としながらもべストを尽くし、12位まで順位を上げました。

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ここまで、Honda F1は、ファクトリーやサーキットのエンジニア/メカニックの血のにじむような努力と献身により、非常に大きな進歩を遂げてきました。実際の数値にもそれは現れていますし、Honda F1の一員として彼らの努力を誇りに思っています。でも、我々のライバルたちは非常に強力で、黙ってその進化を眺めてくれていたわけではありませんでした。かなり近づいてはいるものの、私たちが目指す場所に到達するためにはまだまだ実力が足りていません。ここからさらなる努力と進化が求められていると感じています。

今回は、このような結果になってしまったこと本当に申し訳なく思っています。一方で、ここからさらなる進歩を遂げるための道のりを、また皆さんと一緒に歩んでいけたらとも思っています。

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.17

―日本人F1ドライバー誕生という夢

あと一つ、山本尚貴選手が金曜のFP1にToro Rossoから出走したことについて話をさせてください。HondaとしてF1の舞台に日本人ドライバーを乗せることは悲願であり、そのために一歩前に進むことができたという事実はもちろんですが、応援してくれている皆さまと一緒に、私自身も「日本人がF1に乗る姿」を見られたことがとてもうれしかったんです。尚貴選手に「夢を見せてくれて、ありがとう」と伝えたいですね。

山本尚貴

昨年までのモータースポーツ部長の仕事を通して、彼がどれだけの想いを持って、ここまで努力を重ねてきたかを見ています。それだけに、Toro Rossoのスーツを身にまとい、あこがれのセナをオマージュしたヘルメットをかぶった彼がマシンに乗り込む姿を見たときには、胸が熱くなりました。セッションでは、プラクティス担当のドライバーとして、きっちり仕事をしてくれましたね。メディアセンターにいた多くの海外メディアはその走りに驚いていたと聞いていますが、わずか90分間の中で「日本人でも戦える」ということを見せてくれたのではないでしょうか。

山本尚貴

もちろん、この場所を目指して奮闘を続ける日本人ドライバーは山本選手だけではありません。現状でF1ドライバーに必要なスーパーライセンスを保持するのは彼だけですが、それに次ぐ若い才能が数多く育ちつつあります。今回の山本選手の走りは、そんな彼らに向けても大きな刺激になったと考えていますし、「夢の舞台」ではなく、「次なる目標」として捉え、前進を続けてほしいと思っています。もちろん、Hondaとしても引き続き、それをサポートとし、実現するための努力を続けます。

山本尚貴(右)

長くなってしまいましたが、今年の日本GPを通して感じたことを書かせてもらいました。総じていえば、悔しい想いとともに終えたレースでしたが、随所にうれしいこともあり、また何よりも、改めて皆さまにパワーをいただいた週末でもありました。

改めまして、応援いただいている皆さまに、Hondaを代表して心からの感謝を申し上げます。そして、いただいたパワーをさらなる進化につなげられるよう、Honda F1一同、より一層の努力を続けていく次第です。

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