F1復帰以来初めての2チーム供給
Red Bull Racingがシーズン3勝、Scuderia Toro Rossoも2度の表彰台と、
着実な成果を挙げる
前年からパワーユニット(PU)の供給を開始したScuderia Toro Rossoに、Red Bull Racingが加わり、Hondaにとっては、2015年のF1復帰以来、初めて2チームにPU供給を行った2019シーズン。Aston Martin Red Bull Racingがシーズン3勝、そしてRed Bull Toro Rosso Hondaは、2度の表彰台登壇と、着実な進化を示す年となった。
今回のパートナーシップは、Hondaが2つのチームをイコールに扱うことがコンセプト。昨年Toro Rossoに行ってきた供給のクオリティーを落とすことなくRed Bull Racingにも対応することが必要とされ、オペレーション面での向上が求められた。
周囲からの期待が高まるのを感じながら迎えた開幕戦オーストラリアGP。スタートポジションを守って4番手でレースを進めていたRed Bull Racingのマックス・フェルスタッペンは、ライバル勢が早めのピットインを選択する中、チームが25周目までコース上にとどまる作戦を選択。これが功を奏し、ピットストップ後はよりフレッシュなタイヤで追い上げると、30周目にフェラーリのセバスチャン・ベッテルをオーバーテイク。その後も2番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)を猛追し、3位フィニッシュ。HondaにとってF1復帰後の初表彰台をもたらした。Toro Rossoもダニール・クビアトが10位入賞を果たしてポイントを獲得し、両チームにとっていい形でシーズンのスタートを切った。

開幕戦で好走をみせたマックス・フェルスタッペン
その後、着実にポイントは獲得するものの、表彰台にはあと一歩届かずというレースが続く中、第3戦中国GPのフリー走行ではクビアトのPUにトラブルが発生するなど、厳しい状況も味わう。これを受けて第4戦アゼルバイジャンGPではSpec2の内燃機関(ICE)を投入し、第5戦スペインGPではフェルスタッペンが3位に入り、シーズン2度目の表彰台登壇を果たす。さらに、続くモナコGPでは予選で4台全車がトップ10に入りQ3進出。レースでもフェルスタッペンが、首位のハミルトンを終始攻め続ける力強い走りをみせた。このレースでHonda PU勢は1991年以来の4台トップ10フィニッシュを果たし、チームのムードも上昇気流に乗り始める。
第8戦フランスGPでは、パフォーマンスの向上を目指してSpec3のPUを投入。そして、Red Bullの本社があるオーストリア、レッドブルリンクで第9戦を迎える。この海抜700mの高地にある高速サーキットで、フェルスタッペンが躍動。31周目にタイヤ交換を終え、4番手でコースに戻ると、前を行くベッテル、バルテッリ・ボッタス(メルセデス)、を次々とパス。その後トップのシャルル・ルクレール(フェラーリ)と激しいバトルを繰り広げてオーバーテイクに成功し、そのままフィニッシュへ。チームのホームレース2連覇、HondaにとってF1復帰後初、そして2006年以来の優勝を成し遂げた。

オーストリアで今季初優勝を決めたフェルスタッペン
さらに、その2戦後の第11戦ドイツGPでは、ウエットコンディションでのスタートから雨が止み、そして再度降り始めるという難しい状況の中で、Red Bull、Toro Rossoともに抜群の状況判断でピットインのタイミングを的確に見極め、フェルスタッペンが今季2勝目、クビアトは3位に入り、Toro Rossoにとって11年ぶりとなる表彰台を手にした。さらに、続く第12戦ハンガリーGPでは、フェルスタッペンが自身初のポールポジション(PP)を獲得。Hondaにとっても復帰後初のPPとなり、レースでも残り5周まで首位を走行して2位表彰台と、好調さを示してサマーブレイクに突入した。

Toro Rossoは11年ぶりに表彰台を獲得
夏休み明けの第13戦ベルギーGP、第14戦のイタリアGPでSpec4のPUを投入し、さらなるパフォーマンスアップを狙った両チーム。しかし、ライバル勢の向上もまた大きく、ポイント獲得や表彰台登壇は果たすものの、勝利にはなかなか手が届かない状況が続く。HondaのホームGPとなった第17戦日本GPでも、フェルスタッペンがスタート直後に接触を喫して順位を落とす不運もあり、Red Bullのアレクサンダー・アルボンによる4位が最高位となった。

日本GPではアルボンが自己ベストの4位入賞
しかし、第18戦メキシコGPでは、フェルスタッペンが予選でトップタイムを記録し、モナコGP以来の全車Q3進出を果たすなど、4台ともに力強いパフォーマンスを取り戻す。レースではまたしてもフェルスタッペンが接触に泣かされるが、全4台がトップ10以内でチェッカーフラッグを受けた(レース後にペナルティーによりクビアトは11位に降格)。連戦となった第19戦アメリカGPでもフェルスタッペンが3位表彰台を獲得と、好調をキープしてシーズン最後の2戦へと進む。
続く第20戦ブラジルGPは、Hondaともゆかりの深い故アイルトン・セナ氏の母国。没後25周年という節目の年となったが、ここでもフェルスタッペンがポールポジションを獲得。さらに、レースでも終始力強いペースを発揮し、2度のセーフティカー導入など、波乱の展開となりながらも、盤石の速さで今季3勝目を挙げる。そして、2位にはToro Rossoのピエール・ガスリー。最終ラップの最終コーナーで、通算6度目のチャンピオンを決めたハミルトンに並びかけられるも、全開区間で突き放し、自身初のF1表彰台で喜びを爆発させた。Honda創業者の故・本田宗一郎氏の誕生日である11月17日に、Honda F1として1991年以来の1-2フィニッシュを飾った。

ブラジルGP、ガスリーのゴールシーンは大きな話題に
最終戦アブダビGPでもフェルスタッペンが2位表彰台を獲得し、シーズンを締めくくったHonda F1。終盤戦で手にした力強さを継続し、2020年はさらなる高みを目指して走り続ける。