新型TYPE Rの開発責任者・柿沼氏に聞く

Hondaスピリットの象徴〈後編〉

グランドコンセプト『Ultimate SPORT 2.0』に基づいた、究極のバランス性能が持ち味の新型CIVIC TYPE R。その開発責任者の柿沼秀樹へのインタビュー後半をお届けする。スポーツモデルの本質である速さと、官能的ともいえるドライビングプレジャーを両立。その魅力的な特徴はもちろん、未来へ向けたCIVIC TYPE Rのあるべき姿についても語ってもらった。

柿沼秀樹氏

CIVICのTYPE R、

その存在意義。

コンパクトカーとして誕生したCIVICは今年、誕生から50周年を迎える。時代のニーズを先取りしながら変遷を重ね、ワールドワイドなベーシックカーとしての地位を築きあげてきた。この歴史を誇るクルマのTYPE Rを開発するにあたり、最も重視したことを柿沼に聞いてみた。

「CIVICは、なによりHondaらしさを満載したクルマです。そのCIVICをベースに、TYPE Rの名に相応しい速さと操る喜びを研ぎ澄ませることが開発の大前提となります。しかし、ただ速さを追求することだけに固執した結果、乗る人を選ぶようなクルマになってしまっては本末転倒。TYPE Rの前に“CIVIC”がついている意味をしっかりと理解すること。我々はそのことを胸に刻みながら開発を続けました」。

柿沼の指揮のもとに開発された新型CIVIC TYPE Rは、これまでのTYPE Rを上回るパフォーマンスを発揮する。TYPE R専用の2.0L VTEC TURBOエンジンを磨き上げ、より高出力・高レスポンスを実現。スポーツモデルの本質的価値である速さと、官能に響くドライビングプレジャーを両立した、魅力あふれる仕上がりだ。では、デザイン面のアピール点はどこなのだろう。

「迫力と美しさを兼ね備えたロー&ワイドなパッケージです。第一印象でまず、『カッコいい、乗ってみたい』 というエクステリアデザインに吸い込まれるようにしてフロントドアを開けると、レッドカーペットと真紅の玉座が出迎える。TYPE Rと時をともにすることへの期待感や特別感を醸成していくわけです。そして走り出したとたん、人車一体の走行フィールに陶酔してしまう。そんな一連の乗車体験を描きながらこだわったデザインです。どなたもきっと心打たれ、心満たされるはずです」。

挑戦し続けることが

TYPE Rの使命。

「クルマは、単なる便利な機械ではありません。『愛車』という呼び方があるように、血の通ったバディであると私は捉えています。だから、人とクルマにおいても、相棒への理解や意思の疎通がとても大切になります。いまクルマの状態がどうなっているのか、自分は上手に操れているのか。生き生きと走らせてあげられているのか。そんな思いから、データロガーアプリ “Honda LogR” を開発し、今回のTYPE Rに搭載しました」。

これまでは容易に知ることのできなかった車両側の情報をあえてドライバーに提供することで、クルマ側の様々な状況や状態を認知・把握することができる。それによって自分の運転操作に対する気付きや、運転の質の向上にもつなげていくことが可能となる。さらには、世界中のTYPE Rユーザー同士と繋がって、それらを分かち合うこともできる。最新技術の導入によって以前は考えられなかった、より豊かなスポーツカーライフを満喫する時代がやって来た。

最後に、これからCIVIC TYPE Rはどのようなクルマになっていくのか。その黎明期から開発に携わってきた柿沼が考えるTYPE R像を語ってもらった。

「時代は待ったなしで、カーボンニュートラルの実現へ向けて進んでいます。そんな時代においてもCIVIC TYPE Rを、より多くのお客様から期待されるブランドとして受け継いでいきたい。求められる要求と進化を果たしながら、そのためのチャレンジを惜しまず続け、さらなる未来へ“走る喜び”をつなげていくことが、私たち開発者に課せられた重要な使命だと考えています」。

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