最新モデルLPL・山上氏に聞く

爽快な走り、その存在価値 〈後編〉

スポーティーで爽快な走りのシビックe:HEVの開発思想を探る、開発責任者(LPL)の山上智行へのインタビュー後編をお届けする。次世代2モーターハイブリッドシステムをはじめとする性能面に関する開発エピソード、そして初代から11代目まで多くのファンを魅了し続けるシビックの、さらなる未来について語っていただいた。

山上智行氏

スポーティーな走りを

支える性能。

シビックe:HEVには、専用に開発された“次世代2モーターハイブリッドシステム”が搭載される。モーターとエンジン、3種類のオペレーションを状況に応じてシームレスに切り換え、最適なモードで走行する。こうしたパワーユニットを含めた高度な技術開発で、最も苦労した点を聞いてみた。

「めざしたのは、より質の高い軽快感です。実はこれが大変難しい。アクセルを踏み、エンジンが反応する。動力がタイヤに伝わり、クルマが加速しGを感じる。動的性能は様々な要素が複雑に影響し合い、体全体で感じるものです。だから何か一つの性能を変えるだけで、すべてのバランスが崩れてしまう。その微妙な、そして絶妙な調律をすべての領域で積み重ねていくことでe:HEVの軽快感を実現しました」。

また、ハイブリッド車はバッテリーなどを搭載する必要があるため、ガソリン車に比べてどうしても車重が増す。そこでシビックe:HEVはIPU(インテリジェントパワーユニット)をリアシートの下に配置し、クルマの重心をより低くするとともに足回りも見直した。「エンジニアたちは不利な要素を言い訳にせず、ポシティブに捉えました。その結果、低く一体感のあるハンドリングと、快適なグランドツーリングを実現する乗り味を両立できたのです」。

さらに感覚性能を重視したとのことだが、開発する中で音の比重も大きかったのだろうか。「シビックで大切なのはFun to driveです。新開発エンジンは気持ちよく回り、クリアなサウンドなのでもっと聞かせようとなりました。濁音の『ガーッ』や『ゴーッ』は嫌な音ですが、濁音のない『クーッ』や『コーッ』はすごく気持ちよく響く。そこでエンジンの原音を活かしたアクティブサウンドコントロールを装備しました」。

シビックは

Hondaのポリシーを体現。

初代から11代目まで、オーナーの数だけシビックストーリーが存在している。クルマ好きやHondaファンが集まると、あの頃自分が乗っていたシビックの話、現在乗っているシビックの話に花が咲くという。そうしたファンについての印象的なエピソードを聞いてみた。

「先日、11代目シビックを購入したお客様の話を聞きました。シビックオーナーになったことで、すごく家族が幸せになったそうです。その方の奥様は、週末が近づくとドライブに出かける支度をはじめるそうです。それもご主人が知らないうちに。お二人が笑顔でシビックに乗っているシーンが頭に浮かびました。ああHondaに入って、シビックに関われて本当によかったと思いました」。

同じ名前を冠したクルマが50年間も続いている。このことだけを考えても、シビックというクルマが、いかに多くの人たちから愛されてきたのかがわかる。今回、11代目シビックとシビックe:HEVの開発責任者を務めた山上は、この先のシビックの未来をどう見ているのか。

「Honda=シビックといえるほど、Hondaのポリシーを体現しているクルマです。これからも未来へ向けて、シビックのストーリーはしっかりと受け継がれていくでしょう。その長い歴史の中に、私もひとりのHondaエンジニアとして関わった11代目も並んでいる。これは大変光栄なことだと感じています。具体的に、シビックがどんなクルマへと進化していくのかはわかりません。しかし、今後も走りの楽しさを与えられる、人のためのクルマであり続けることは絶対に変わらないと思います」。

このページをシェアする