2021年モデルLPL・山上氏に聞く

爽快な走り、その存在価値 〈前編〉

2021年9月に発売され、大きな注目を集めた11代目シビック。2022年7月、この11代目シビックに待望のe:HEVモデルが追加された。e:HEVならではのスポーティーで爽快な走りの開発思想を探るために、開発責任者(LPL)の山上智行にインタビューを行った。常に時代の一歩先のニーズを捉えるシビックの、絶対的な存在価値を追求してみたい。

山上智行氏

シビックが持つ

普遍的な魅力とは。

人とクルマが一体となった、質の高いスポーティーな走り---。それはまさに、Hondaシビックを形容するにふさわしい言葉ではないだろうか。初代から数えて11代目になる最新シビックに、Hondaの2モーターハイブリッドシステム e:HEV搭載モデルが誕生。

e:HEVも含めた11代目シビックの開発責任者として、総合的な視点で新車開発を牽引してきたのが山上智行だ。まずはHondaならではの走りを支え続けている、シビックというクルマについて聞いてみた。

「とにかく歴代のシビックは、その姿形がまるで違う。写真を並べて見ても、似ているクルマが1台もない。最初は、何でこんなに違うのだろうと思った。しかし、よくよく考えてみると、変わったのは時代であり、世の中です。シビックは人のためのクルマだから、人のライフスタイルが変われば、それに伴って進化していく。それこそがシビックの普遍的な魅力なのです」。

1972年に初代シビックが発売されてから約50年、その半世紀におよぶ年月を降り返ってみれば、時代がいかにめまぐるしく変わってきたかが容易にわかる。新しい時代の到来をいかに早くつかみ取り、そのニーズを次のシビックにどうやって取り込んでいくべきか。歴代の開発者たちに求められたのは、そうした敏感な肌感覚なのかもしれない。

“爽快シビック”に込めた想い。

ジェネレーションZをターゲットに発売した11代目シビックは、多くの若者層に受け入れられた。その一方で、子離れ世代から一定の支持も獲得。今回のシビックe:HEVは、メインターゲットをこの子離れ世代にシフトさせている。とは言え、2つのターゲットには「走行性能の高いクルマが好き」「自分のセンスと自信にこだわりがある」「環境意識が高い」などの共通項も多い。

「ガソリン車のときに掲げたキーワード“Approachable(親しみやすさ)” と“Speciality(特別感)”は、e:HEVにとっても変わらずに重要な要素です。この2つのワードが基盤となり、グランドコンセプト“爽快シビック”が生まれました。特に、e:HEVならではの高性能は、“Speciality”をさらに高めるものと確信します。時代性や安全性も視野に入れ、3年先、5年先を意識した企画開発を進めることで、ターゲットの心に響くクルマができると考えました」。

決して華美ではないが、自分にとって特別で、さらに自分のライフスタイルを表現できるクルマ、それがシビックe:HEVなのだ。では、そんな“爽快シビック”に乗ったとき、どんなシーンで爽快さを最も実感できるのかを尋ねてみた。「前方が見やすい、アクセルを踏み思いどおりに動く、素敵な景色の中の美しい佇まい…、お客様の数だけ、その人なりの爽快さがある。私は個人的に、クルマから降りたときの笑顔、これに勝るものはないと思っています」。

さらに、クルマと一体感を感じる瞬間については「シートに座り、ドアを閉めた瞬間に、お気に入りの心地いい空間に入る。そこがシンクロの第一歩。やはり第一印象は大切です」と答えてくれた。

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