OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2016.01.25
海を走るレーシングカーデザイナー

こだわりのボートライフを楽しむ、
由良拓也氏。

BF250をマウントした由良拓也氏の愛艇、「Streamline」で安倍川沖を行く。
駿河湾・安倍川沖での僅か3時間余りの釣行で、生涯最大サイズの真鯛を二匹釣り上げた由良拓也氏。
真鯛を釣り上げるために自作した、タイラバというルアーを使っての釣果だった。
BF250を2基掛けした愛艇「Streamline」を、巧みな操船で真鯛の棲家の真上にピタリと停め、迷わず50mの海底にタイラバを落とすその姿に、
「彼には泳ぐ魚が見える」と、デッキで囁く声が聞こえた。
ポイントに着き、さっそく釣り。由良氏はベルト型のライフジャケットを使用。
スポーツフィッシングのために建造されたOceanMaster31。
レーシングカーデザイナーとして知られ、フォーミュラニッポンやル・マン24時間レースなどにチーム監督として参戦するなど、常にモータースポーツの最前線で活躍される由良拓也氏(ムーンクラフト株式会社代表取締役)だが、マリン関連でもヨット、モーターボートなど、多くの商品の開発に携わってこられた。
趣味も多彩で、由良氏個人のホームページ&ブログの「ゆらたく屋」のプロフィールには、「クルマのみならず、ボート、飛行機など乗り物なら何でもOK。グルメ、ファッションにも少々こだわりを持ち、暇ができると自分のボートで釣りにでかける」とある。
釣りに関してうかがってみれば、どんなに忙しくても、ひと月、あるいはふた月に1〜2度は、「Streamline」と名付けた愛艇で海に出て釣りをしているとのことだ。
「Streamline」という船は、OceanMaster31というスポーツフィッシングのために設計された31フィートのボートで、由良氏の手に渡って10年ほどが経つ。エンジンはBF船外機のフラッグシップであるBF250を2基マウントしている。2012年にBF225から換装した。
BF250をマウントし、高い走破性を誇る由良氏の愛艇。
第7回御前崎ビルフィッシュトーナメントで、74.5kgのクロカジキをランディングした「Streamline」。
写真提供:由良拓也氏(Photo by BE-FLAT MASAYUKI AKAZAWA)
以前は静岡県の沼津を拠点にボーティングを楽しんでいた由良氏だが、現在は駿河湾西岸の静岡市にある用宗フィッシャリーナに船を置いている。もともと沼津に船を置いているころから、伊豆半島東岸の戸田や田子、あるいは魚種豊富な漁場として知られる石花海(せのうみ)まで釣りをするために船を走らせていたそうだが、その通い慣れた釣りポイント近くに船を置きたいという理由からホームポートを移した。
OceanMaster31という船は走破性に優れているので、近海の遠征釣行は得意とするところだが、実釣時間をより長く確保するという意味では、走行距離は短いにこしたことはない。もちろん経済的な負担も減る。
ちなみに石花海というのは、御前埼と石廊埼というふたつの鼻に挟まれ、北に懐を広げる駿河湾の湾口付近に位置する海底台地のことで、南堆と北堆と呼ばれる二つの隆起からなっている。水深が32メートルから100メートルと浅いことが特徴だ。
「Streamline」のエンジンは、2012年にBF225からBF250へと換装された。
今回の釣行には、由良氏(手前)の釣り仲間の原氏が同乗。ラジコンレース界の名手にして元バスプロだ。
BF225からBF250に換装した直後の由良氏率いる「Streamline」は、第7回御前崎ビルフィッシュトーナメント(2012年8月24日~26日)に参加している。 そして石花海の南堆付近で、30LBラインで74.5kgのクロカジキをランディング。大会最終日の26日のことだ。実はこの日、早々にヒットコールを本部に伝えていた「Streamline」だったが、1匹目はおしくもラインブレイク。 しかし南堆付近にカジキがいると確信し、執念で仕留め直した。当時の資料を見てみると、参加40チーム中釣果があったのは9チームだけで、「Streamline」は6位という成績を残している。

昨年の12月中旬、由良氏の釣りに同行する機会を得た。狙いは真鯛。釣り場は用宗フィッシャリーナの目の前ともいえる安倍川沖だ。 タイラバというルアーを使って真鯛を釣るのだと、前日訪ねた由良氏が社長を務めるムーンクラフト株式会社のオフィスでお聴きした。 タイラバというのは、もともとはプロの漁師さんが使っていた漁具のひとつで、それが一般に広まったものだ。なんと由良氏はそのタイラバを、 重さ別に3種類(60グラム、80グラム、100グラム)自作していた。それがどういうものか、活字で説明するよりも写真を見ていただいたほうがわかりやすい。 真鯛を釣り上げてやるという由良氏のこだわりが詰まったタイラバだ。その自作タイラバが翌日の釣行で、由良氏に「生涯最大サイズの真鯛」をもたらすことになる。
これが由良氏自作のタイラバ。60グラム、80グラム、100グラムと三種類ある。
愛用するLOWRANCE(ローランス)のGPS魚探でポイントを確認する。
「ゆらたく屋」のプロフィールには、レーシングカーデザイナーという肩書と、もうひとつ「乗り物創造作家」という肩書が併記されている。レーシングカーデザイナーということで言えば、それは「紫電77」(1977年富士グランチャンピオンレース用マシン)をはじめとして、これまで由良氏が製作に携わってきたF-1やルマンカーなどの数多くのレース用マシンのことだが、乗り物想像作家という肩書で思い浮かべるのは、25年ほど前の取材だ。

由良氏から連絡を受け、伺ったご自宅のガレージから出てきたのは、市販の着座式の水上バイク。だがそれは、ロッドホルダーなどが装着された釣り仕様にアレンジされた一台だった。水上バイクのキビキビとした走行性能を利用して釣り場に急ぎ、すみやかに糸を垂れるための「フィッシング・ジェット」である。今でこそ沿岸のレスキュー艇としても使われるようになった水上バイクだが、当時、誰も「ジェットで釣り」とは考えつかなかった。
いま、ご自宅のガレージには、レーシングカーなどの車両輸送用のトレーラーに載せられた12フィートの小型カタマラン「Love me TENDER12」が収まっている。由良氏が所有するその小型カタマランの双胴には4つの車輪が付けられ、 スロープの汀ぎりぎりまで進めたトレーラーから、自走して降ろせるようになっている。レーシングカーを運搬するトレーラーは海水に付けられない。しかし、そのトレーラーを使ってボーティングができないか。そんなことを考えた末に生まれたようだ(くわしくは「こだわりのアイテム」を)。
取材協力:ムーンクラフト株式会社
〒412-0048 静岡県御殿場市板妻11番地の5

由良拓也氏個人のホームページ&ブログ: ゆらたく屋
文・写真:大野晴一郎
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