山根 和明 氏
月刊『つり人』 編集長
山根 和明 氏
1994年つり人社入社。2006年より月刊『つり人』編集長を務める。渓流釣り、アユ釣り、磯釣り、沖釣り、コイ釣りなどなど四季折々の釣りを楽しむ。コイ釣りニュースタイルマガジン『Carp Fishing』、渓流釣り専門誌『渓流』、トラウトルアー専門誌『鱒の森』編集長を兼務。

月明かりに見た多摩川の流れ

東日本大震災から4ヵ月が経ちましたが、まだ多くの方々が避難生活を余儀なくされています。被災された地域の皆様、関係の皆様に、心よりお見舞い申し上げるとともに、被災地の一刻も早い復興を、心より祈念申し上げます。

3月11日の夜、私は家族と連絡が取れなかったこともあり、編集部のある千代田区神田神保町から川崎のゼロメートル地帯の自宅まで、歩いて帰ることにしました。距離にして約25km。日ごろから渓流釣り、アユ釣りで鍛えているのでどうにかなるだろうと思っていましたが、釣りをしながら歩くのと黙々と歩くのとでは、勝手が大分違いました。
高層ビルの灯りをバックに夕マヅメのビッグチャンスをねらう
高層ビルの灯りをバックに夕マヅメのビッグチャンスをねらう
しかし、首都圏の交通機関が完全にマヒしてしまった以上、歩く以外道はありません。外堀通り、日比谷通り、国道15号は人波が絶えず、三車線道路の左車線にまで歩行者があふれていました。幾度となく「この辺りで休憩でも…」と弱気の虫が心の中で騒ぎましたが、連絡のつかぬ妻子の元へ一刻も早く戻らねばと、速足で歩き続けました。国道15号の新六郷橋から月明かりに照らされた多摩川の流れを見たとき、「ついに帰ってきたぞ」という感慨が、体中をみなぎりました。新六郷橋から拙宅までは2kmほど。国道を折れて市街地の道に入るとようやく人波も消え、日常に戻った気がしたのでした。

自然豊かな六郷川

夏から秋にかけて朝夕のマヅメ時にイソメエサのブッ込み釣りでねらうと、25~30cmのセイゴの数釣りが楽しめる
夏から秋にかけて朝夕のマヅメ時にイソメエサのブッ込み釣りでねらうと、25~30cmのセイゴの数釣りが楽しめる
新六郷橋が架かる多摩川下流部には、六郷川の別称があります。地図を見ると分かると思いますが、この辺りの流れは大きく蛇行していて、昔は豪雨で増水するとたちまち暴れ川に姿を変えました。江戸時代には橋が何度も架けられましたが洪水のたびに流され、橋の代わりに渡し舟が発達するようになります。それが、六郷渡しです。大正時代に近代的な橋が架けられるまで、渡し舟は活躍していたそうです。
現在、この新六郷橋を中心にした多摩川の六郷エリアは、釣りがとても盛んです。今が旬のテナガエビ、これからベストシーズンを迎えるハゼをはじめ、コイシーバスアングラーも1年中目にします。また、干潮時に露出する干潟にはシジミなどの貝類、イソメなどの環虫類も多く生息し、それらを目当てに渡り鳥も多くやってきます。
子どもでも安心して楽しめるのがハゼ釣りの魅力
子どもでも安心して楽しめるのがハゼ釣りの魅力
お盆も過ぎると、このサイズのハゼが顔を出す
お盆も過ぎると、このサイズのハゼが顔を出す

多摩川に潜む大ゴイ

先日、同エリアに月刊つり人の編集部員を伴なって、コイ&ウナギねらいで釣行しました。ウナギはあいにく不発に終わりましたが、編集部員が87cmの丸々と太った大ゴイを釣りあげました。しかし、当地でこのサイズはまだ関脇クラス。90cm超の大関、そして1mを超す横綱も生息しています。メーターオーバーを夢見て、遠方から訪れるコイ釣りファンも少なくありません。
6月上旬に編集部員が釣った87cmのコイ。このような野生の魚が、大都市を潤す川に潜んでいること自体が素晴らしい
6月上旬に編集部員が釣った87cmのコイ。このような野生の魚が、大都市を潤す川に潜んでいること自体が素晴らしい
世界有数の大都市、東京を潤す川に、これだけ多くの自然が残され、誰もが手軽に釣りを楽しめるということは、素晴らしいと思います。海外では、都市部を流れる大河で老若男女が気軽に釣りを楽しむということは、環境面、行政面からも容易ではありません。

3月11日の夜、新六郷橋から多摩川を見たとき、「釣り」の二文字は頭にありませんでした。ある意味、釣りは平和の象徴です。多摩川には釣り人が戻りました。被災地にも釣りの風景が戻るよう、一刻も早い復興を祈るばかりです。
今回ご紹介したエリア
東京都・神奈川県/多摩川のコイ、ハゼ、etcMAP
アクセス
多摩川下流部への釣行は首都高横羽線・大師出入口で降り、国道409利用が便利。ただし、河川敷には駐車場が少ない。周辺のコインパーキング利用か土日祝日であれば、ガス橋、新六郷橋のたもと(東京側)の駐車場が開場している。
※このコンテンツは2011年7月の情報をもとに作成しております。

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