フレーム(6)


●中央に配置されたフューエルタンク
 CBR600RRのレイアウトの中で特に印象的なのが、デザインと設置場所を一新したフューエルタンクです。
 CBR600RRの設計段階での最大の挑戦が、ライダーの位置を前進させつつ燃料タンクに十分な容量を確保することでした。従来はエンジンの上に配置するのが伝統的であり、バイクによってはタンクの外観が最大の魅力となる場合もあります。ところが、エンジンの上にタンクを置くと、バイクは地上から最も離れた高い位置に重心が移動する大きな慣性力を背負うことになってしまいます。最大容量が18リットルで、1リットルあたりの重さが約710gとすると、合計で約13kgもの重量が、素早い方向転換を行うたびに、バイクの動きを阻害する要因となります。重い液体を積んだ大きな缶が、操縦性に悪影響を与えコーナリングレスポンスを低下させるのです。
 CBR600RRのフューエルタンクカバーは一見、伝統的なデザインのようですが、その下には重量とマスの配分においてまったく新しい発想が施されています。カバー内の前部にはインダクションシステムの10リットル大容量エアクリーナーが、内蔵するPGM-DSFIとともに格納。フューエルタンク本体を格納するのは、ライダーおよびバイク全体のマスの中心に近い後部であり、RC211Vと同じ配置です。フレームのアッパーレールを通して目で確認できるのは、プレス加工したスチール製タンク本体の上部2/3だけで、エンジンのクランクケースにまで達する低い場所に配置されています。積み込まれる燃料のほとんどが、CBR600RRの中心にある回転軸のそばに集中しているのです。
 この抜本的な設計変更によって、ふたつの大きな利点が得られました。ひとつは、フューエルタンクの形状変更によって、ライディングポジションがステアリングヘッドに対して70mm前進。これによってライダーとマシンのマスの中心が、回転軸により近い位置でコンパクトにまとめられました。もうひとつは、燃料をマシンの中央部に集めることでより軽く反応のよい操縦感覚が得られ、燃料の量に影響されず常に俊敏なコーナリングが可能となりました。


 


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