NSX - 1995.03

NSX
NSX

1995 NSXの新技術





緻密な制御と良好なペダルフィーリング、先進の機能を実現する
DBW
 Drive By Wire System

快適かつ高性能なドライビングを目指すNSXのミッドシップ・レイアウトにおいて、より優れた操作性をもたらすアクセルシステムを開発しました。それが[DBW]です。DBWとは、ドライブ・バイ・ワイヤの略で、ワイヤは電気的な配線を意味します。
[DBW]は、アクセルペダルの動きをセンサーが感知して電気信号を発し、ステップモーターに直結したスロットル・バルブをダイレクトに動かす画期的なシステムです。ミッドシップの場合、コクピット先端から後方に置かれたパワートレインまで、アクセルワイヤの長さは数mに達します。[DBW]は、スチール製アクセルワイヤを用いないため、フリクションなどペダルフィーリングに影響する要素がありません。そのためセンシティブなペダル感覚と、より緻密で信頼性に優れたスロットルのファインコントロールを実現します。また、このシステムは今後パワープラント系のトータルマネージメントシステムとして発展性、拡張性のあるテクノロジーです。


スロットルDBWシステムの構成
DBWは、もともとFBW(フライ・バイ・ワイヤ)という名称で高度の信頼性を要求される航空機技術として誕生しました。
油圧装置などの機械システムを排除することで、高度の軽量化と信頼性を実現させたこのシステムは、その後の航空機の進化を加速させただけでなく、F-1にも採用された高度な技術です。

スロットルDBWシステムの構成


緻密な制御を可能にする1/10度の分解能
信頼性確保のため2系統のセンサーを設置。1/10度刻みの緻密な制御とともに、高度な信頼性を実現しています。また、アクセルペダルがスロットルから機械的に分離されているため、設計時に任意に特性を設定できるメリットも生じます。新モデルでは、タイプRに近いペダルフィーリングとしました。

アクセル関連のシステムを3.0kg軽量化
従来方式で存在していた、数メートルにおよぶスチール製のアクセルケーブル、オートクルーズ制御のための機械的なアクチュエーター、アイドルコントロールバルブ、ダッシュポットなどが不要となるため、アクセル関連システムが大幅に軽量化されました。



路面状況に適合する出力制御の領域と精度を高めた
新TCS
 Traction Control System

新世代スポーツとして誕生したNSXは、さまざまな路面状況に適合し、持てるパフォーマンスを充分に発揮させるためにミッドシップスポーツ専用にあつらえたTCS(トラクション・コントロールシステム)を搭載しています。
そのTCSを、このたびダイレクトなスロットル制御を実現した[DBW]と、新たに搭載した横Gセンサーの相乗効果により、すべての制御項目の精度とレスポンスを高めました。さらに、新たな制御項目として「減速制御」を追加。これまでの「加速制御」、「操安制御」、「悪路制御」、「グリップ制御」は、アクセルを踏むという状況においてエンジン出力を抑えることでより高いトラクションを引き出す制御でしたが、「減速制御」は、アクセルを離したときのエンジンブレーキによる姿勢が乱れることなどを、エンジン出力をわずかに高めることでコントロールする新たな領域のTCS制御です。

「減速制御」を加えた新TCS
[DBW]の搭載により、従来のTCS制御機能にアクセルオフ時の「減速制御」を加えました。氷雪路など滑りやすい路面でアクセルオフした場合、過剰なエンジンブレーキによって生ずる急激な挙動変化を安定させるのが「減速制御」の目的です。過剰なエンジンブレーキを抑えるために、わずかにスロットルを開くという制御が行われます。

「減速制御」を加えた新TCS/ON
「減速制御」を加えた新TCS/OFF


精度とレスポンスを向上させた新TCS
これまで、機械式アクチュエーターで行っていたスロットル制御が、[DBW]によってダイレクトに制御を行うことが可能となり、「減速制御」を加えたすべてのTCS制御が、より速く、よりナチュラルになりました。
また、これまで前輪の速度センサーの情報を元に算出していた横Gを、専用のセンサーを新たに搭載することでダイレクトにデータ化。よりTCSの制御精度を高めました。

■新TCSのシステム構成
新TCSのシステム構成




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