Team Asia Report

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2017年シーズンレビュー ナカリン・アティラプワパ

今シーズン、世界選手権デビューを果たしたHonda Team Asiaのタイ人ライダー、ナカリン・アティラプワパは、第3戦アメリカズGPで見せたアクロバティックなスーパーセーブで、一気にその名を世界に知らしめました。また、レインコンディションでも強さをみせ、さらに存在感を発揮。この一年間のたくましい成長は、周囲の期待や、おそらく彼自身の予想をも大きく上回るものであったのではないでしょうか。

―Moto3世界選手権のデビューイヤーは、どんな一年でしたか?

「一筋縄ではいかないシーズンでした。うまく走れたレースもあれば、厳しいレースもたくさんありました。チームのおかげで、今年はとても多くのことを学べました。中でも教訓になったのは、悲観的な気持ちでいるとすべてが悪い方に行ってしまう、ということです。シーズンが始まった直後はとても張り切っていたのですが、レースが進んでいっても全然ポイントを獲得できませんでした。第5戦のル・マンでようやくポイントを獲れて、『自分にもできるんだ』という自信を持つことができました。今から考えれば、最初のころはほかのライダーたちは僕よりもずっと速くて強い選手ばかりだと思い込み、気後れしていたんだと思います。でも、シーズンが進んでMoto3のレースに慣れてくると、『僕も彼らと戦えるんだ』という自信を持てるようになりました。だから、自分を信じることはとても大切だと思います。でも、僕はまだトップライダーではないので、いいリザルトを獲得するためにはもっとがんばらなければいけないですね」

  • ナカリン・アティラプワパ

―今シーズンはどんなことを学びましたか? また、来年に向けてどこをよくしていきたいと思っていますか?

「ライディングについては、たくさんのことを学びました。速い選手たちを観察し、身体の使い方や動かし方などをかなり勉強にしました。僕はまだ発展途上のレベルで、まだまだテクニックを磨いていかなければなりません。今年はたくさんの選手たちとバトルをしましたが、ほとんどいつも中段以降での争いだったので、来年はトップグループで速い選手たちに混ざってバトルをしたいですね。高い目標であることはもちろん分かっていますが、常に前向きに考えることはとても大切で、その姿勢がやがて目標を実現させてくれるのだと思います」

―アティラプワパ選手にとって、チーム、マシン、周囲のスタッフ等、今年はすべてが初体験の連続でした。世界選手権に慣れるために、なにが一番たいへんでしたか?

「気持ちの持ち方、だと思います。なにもかもが初めて尽くしの一年で、チームもメカニックたちもサーキットも、すべて初めて体験することばかりでした。だから、さっきも言ったように、自分はまだ世界選手権で戦えるレベルじゃないのかもしれない、と思ってしまったんです。なので、いつも自分を奮い立たせる必要がありました。僕にとって大きな変化だったから、自分自身を変えていくためにとてもがんばりました」

―アジアの選手にとって、ヨーロッパはいろいろな面で環境が異なります。その生活へ馴染むまでに、時間を要する場合もあるようです。

「そうですね。今年は飛行機に乗る機会が多く、時差ボケにも悩まされました。僕の場合、時差ボケを解消するには数日かかるのですが、ヨーロッパの選手たちはそんなことに悩む必要がありません。だから、この問題を解消するために少し工夫を凝らしてみました。出国する数日前に、タイにいるときでもヨーロッパ時間で生活するんです。寝る時間と起きる時間を遅くすることで、ヨーロッパに行ったときの時差ボケ解消がかなり楽になりました。食べ物も、今ではヨーロッパの食事に慣れて好きになりましたが、最初のころはわざわざタイから食材を持って行ったりもしていましたよ」

  • ナカリン・アティラプワパ

―アジア勢の選手たちの特徴として、ウエットコンディションでの速さには目を見張るものがあります。アティラプワパ選手も、雨の強さには定評がありますね。

「僕の場合はときどき雨で速い場合もある、という程度ですよ(笑)。でも、全体的にアジアの選手たちは雨で速さを発揮しますね」

―なぜ、雨でそんなに速いのですか?

「おそらく、僕はほかの選手たちと考え方が反対なんだと思います。ドライではまだそんなに速くないのですが、ウエットだとまずまずの走りができます。雨では、楽しく、楽に走れるんです。タイやアジア選手権で走っていたころ、ウエットコンディションでのレースを何度も経験しました。タイのレースでは、雨になってもウエットタイヤに交換せず、スリックのままで走るんです。雨が得意な選手はたくさんいて、彼らの走りを観察することで、ウエットで速く走る勉強にもなりました」

  • ナカリン・アティラプワパ

―では、2018年の目標を教えてください。

「表彰台を獲得したいです。今年は、セッションによってはトップ3の位置を走れたこともありました。だから、来年は上位グループでレースをして、表彰台を獲得したいですね」

―そして2018年には、タイGPが開催されます。重要な一戦になりそうですね。

「本当ですね。僕にはかなり有利なレースだと思います。食べ物の面でも気候の面でも、さらにモチベーションの面でも。ホームグランプリだから、落ち着いていいレースをしたいですね。今からとても楽しみです」

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