Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 佐々木歩夢 SIC Racing Team

Moto3 佐々木歩夢 SIC Racing Team
Profile
生年月日
2000/10/04
出身地
神奈川県(日本)
身長・体重
170cm・62kg
チーム(マシン)
SIC Racing Team(NSF250RW)
2016年の成績
RedBull MotoGPルーキーズカップ
チャンピオン
Vol.2

「自分では全然納得のいかない前半戦。開幕前に思い描いていた内容と比べると、満足できないレースばかりでした」

今シーズンからMoto3クラスへのフル参戦を開始したSIC Racing Teamの佐々木歩夢は、2017年シーズンの前半9戦を振り返り、悔しそうな口調で話し始めました。

「はっきり言えば、自分の腕はまだ甘いし、詰め方も甘いし、アグレッシブに走るという面でもまだまだ甘い、ということだと思います。ムジェロ(第6戦イタリアGP)からマシンがまとまってきたので、今の課題は予選の改善です。例えば、アッセン(第8戦オランダGP)では天気が悪かったために、トライしてみたかった作戦がうまくできずに22番手。ザクセンリンク(第9戦ドイツGP)でも、予選の最後にポジションを落として21番手という流れでレースを迎えることになってしまいました。シーズン前半戦を終えて、上位グループで走ることができたのはカタール(開幕戦カタールGP)とムジェロだけでした。この9戦は学ぶこともたくさんありましたが、“どうして自分はこんなミスをしちゃったんだろう”ということの連続だったので、もったいないことをしたという気持ちの方がむしろ強いです。1年目にしては悪くない、と言ってもらえるのですが…。それが自分の限界だったなら“よくやった。がんばったな”と思えるのかもしれません。でも、実際はその逆で、レースが終わったあとは“あそこがダメだった、ここはもっと行けたはず”という反省点ばかりです。自分の力を出し尽くしてやりきった、と思えるレースはまだ一つもないので、それができない自分自身に対して満足できない前半戦でした」

思い通りの走りができず、もどかしかったり悔しかったりの連続ですが、そのような状況でも、佐々木は常に落ち着いて自分の足りなかったところを受け止め、次の走りでその改善を図る、という取り組みを続けています。冷静さを保てているために「自分の芯にある自信が揺らぐことはない」と話します。


「レースが終わったあとには“今回はここが悪かった”と分かるから、すごく悔しいんですが、問題点が分かるだけに落ち着いているし、簡単に言えば開き直れているんだと思います(笑)。トップを走れる、という自信はシーズン初頭と全く変わっていません。シーズンは半分が終わってしまいましたが、今後は毎戦トップグループについていって、来年はトップ争いができるようする。こうした頭の中で思い描いている狙いは、今後も変えるつもりはないですね。1年目だから、という言い訳はグランプリでは通用しないと思うし、自分の中に逃げ道を作りたくはありません。シーズン終盤には表彰台争いをする、という開幕前の目標は変えずに、今後も自分に厳しく、でも、焦らずに一歩ずつ進んでいきたいと思います」

この言葉からも分かる通り、佐々木は自分がルーキーであることを言い訳にしてはならない、と考えています。

「ルーキーなのは事実ですが、セッションの回数は皆同じで、走れる時間も同じ。そんな中で言い訳をしていたら、どこまでも言い訳ができてしまうじゃないですか。自分は言い訳をするライダーにはなりたくないし、言い訳をする逃げ道も作りたくない。だから、今年は初年度だからとか、ルーキー・オブ・ザ・イヤーのトップにつけているからまずまずとかは、言いたくないです」

「上位を走るライダーたちと比較して今の自分に足りないものも、シーズン前半戦を通じて把握できるようになった」と、佐々木は話します。

「プッシュする、ってどういうことなのか。自分ではプッシュしているつもりでも、まだそれは限界じゃないでしょ、ということが分かりました。自分では限界だと思っていても、まだ限界までいけていないレースが多いと思います。予選でも決勝レースでも。今の自分はマージンを持ちすぎているように思うので、マージンはあるけれどもぎりぎりまでプッシュして走れるようになりたいですね」

シーズン前半の9戦を終えて、現在の佐々木歩夢のランキングは20位。最上位は第6戦イタリアGPでの8位ですが、トップ15圏内でのフィニッシュは4戦。ポイントを取り逃したレースは5戦ありました。

「なかなか思い通りにはいかないのですが、これが今の自分の実力です。自分の本来の力をなかなか出しきれないことも、今の実力なんだと思います。毎戦学ぶことの連続で、すごく難しいレースばかりですが、少しでも早くトップを走れるように、後半戦はさらにがんばっていきたいです」