モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > MotoGPで戦う日本人ライダー > 中上貴晶
中上選手は、アルベルト・プーチ氏が指導するMotoGPアカデミーを経て2008年と2009年の2年間125ccクラスに参戦。2010年には戦いの場を全日本ロードレース選手権に移し、2011年にはJ-GP2クラスでシリーズチャンピオンを獲得しました。そして、翌2012年から再び戦いの場をMotoGPへ移してMoto2クラスへの参戦を果たしました。
Moto2クラスは、CBR600RRで使用のHonda製4ストローク600ccエンジンのワンメークで争われるクラスで、エンジン戦闘力に差がないため毎戦ハイレベルの激戦が繰り広げられています。このクラスで中上選手は何度もトップ争いを展開し、連続表彰台も獲得する実力を披露してきました。
そして2014年からは元GPライダーの岡田忠之氏が監督する「IDEMITSU Honda Team Asia」に移籍し、日本代表からアジア代表として日本人初のMoto2クラスチャンピオン獲得を目指す戦いを続けています。
2011年
2012年
2014年
開幕戦カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット) - 予選:18番手 決勝:14位
2015年シーズンは、中東にあるカタールGPで幕を開けました。カタールの首都ドーハ郊外にあるロサイルサーキットは、中上選手が昨年2位チェッカーを受けた(車検で失格)サーキットで相性の良いコースです。
初日の走行では5番手タイムとまずまずの滑り出しを見せました。しかし、以後のセッションでは思ったようにタイムを詰めていくことができず、日曜の決勝レースはポイント圏内ながらも14位と厳しい結果になりました。Moto2クラスは、上記のとおりHondaエンジンのワンメークで、タイヤも全員がダンロップを装着し、フレームやサスペンションに関してもほとんどのチームが同一コンストラクターのものを使用しているのが現状です。レースリザルトの差は、マシンの違いよりもむしろ、セットアップのノウハウや、長いレース周回で刻々と変化するマシン状態や戦況を把握して上手に戦いきるライダーのスキルにあるといっていいでしょう。中上選手は、過去に何度もポールポジションを獲得し、表彰台を獲得してきた事実が示すとおり、速さを持ったライダーであることは衆目の一致するところです。
今季の課題は、レースウィークのなかで気象条件とともに変遷してゆく路面コンディションなどの環境変化にうまく対応してゆくことだと中上選手自身やチームスタッフは考えています。この適応がうまく進めば、レースの中で集団の激しいバトルになったときでも、自信を持ってマシンを操り、ライバルたちと互角以上の勝負を繰り広げることができます。その目的を達成するために、チームはレースウィークの各セッションでセットアップに大きな変更は施さず、ライダーがマシン状態の変化やタイヤ、路面状況などを感じ取りながらライディングを工夫してラップタイムを改善してゆく方向で取り組みを行っています。
第2戦アメリカズGP(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ) - 予選:6番手 決勝:10位
第3戦アルゼンチンGP(アウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンド) - 予選:15番手 決勝:20位
第4戦スペインGP(ヘレスサーキット) - 予選:5番手 決勝:17位
第5戦フランスGP(ル・マン・サーキット) - 予選:5番手 決勝:7位
第6戦イタリアGP(ムジェロ・サーキット) - 予選:17番手 決勝:13位
第7戦カタルニアGP(バルセロナ・カタルニア・サーキット) - 予選:25番手 決勝:20位
第8戦オランダGP(TTサーキット・アッセン) - 予選:10番手 決勝:13位
第2戦のアメリカズGPでは2列目6番グリッドを獲得し、決勝レースは10位で終えましたが、その後は思ったような走りを実現できず、ポイントを逃してしまう展開のレースもありました。
シーズン初頭のカタール、アメリカ、アルゼンチンを経て本格的にヨーロッパラウンドが始まった第5戦のフランスGPでは、5番グリッドから7位でフィニッシュ。しかし、その後のレースでは第6戦イタリアGPで13位、カタルニアGPはポイント圏外の20位、オランダGPは13位と厳しい戦いが続き、シーズンの折り返しとなる第9戦ドイツGPを迎えました。
第9戦ドイツGP(ザクセンリンク) - 予選:11番手 決勝:7位
ドイツGPの舞台ザクセンリンクサーキットは全長が3,671mと全18戦中で最も短く、しかも、13個あるコーナーのうち10個が左コーナーという特徴的なレイアウトです。全体的に回り込んだ細かいコース構成で、中上選手にとっては125cc時代から不得意なサーキットでした。しかし、今年は金曜日のフリープラクティスでトップから0.040秒差の総合2番手と好調な滑り出しを見せました。本人も「今のところ、安定して気分良く走れています。明日以降は暑くなるという予報なので、高い路面温度でどれだけフィーリングが変わるのかも確認しておきたいですね」と語っていました。
土曜の予選を経て日曜の決勝は3列目11番手スタート。レース序盤は集団に呑み込まれて順位を大きく落としてしまいますが、落ち着いてひとりまたひとりとと抜きながら着実に順位を上げました。そして、最終ラップの29周目には自己のベストタイムを更新し、今季自己ベストタイの7位でチェッカーを受けました。
レース後中上選手は「スタート直後の1コーナーから2コーナーにかけて、ライン取りがうまくいかなくて呑み込まれてしまったので、序盤にもっとペースを上げることが今後の課題です。その後のレース展開はペースも良く、タイヤが滑りはじめた終盤も自分の乗り方をどんどん変えて、ラップタイムを更新してゆくことができました。改善すべき点はまだたくさんありますが、後方からぐいぐい追い上げる展開で良い手応えをつかめたレースでした。苦手意識のあったザクセンリンクで力強い走りをできて、前半9戦では一番いい内容になったと思います。後半戦はもっと走りを安定させて、トップテン、トップシックス、そして表彰台、と段階を踏んで上位を目指せるようにがんばります」と語った。岡田監督も「今シーズンでは一番の内容だった」と振り返りました。
夏季休暇期間後のシーズン後半戦からは、インディアナポリスGP(8月9日決勝)−チェコGP−イギリスGP−サンマリノGP、と中上選手が過去に連続ポールポジションや4連続表彰台を獲得した得意コースでの戦いが続きます。頂点を目指す中上選手とチームが今の好調な流れを維持し、さらに上昇気流に乗ることは大いに期待できそうです。
MotoGPは3週間の夏季休暇を経て、8月7日からシーズン後半戦がスタートします。Moto2クラスとMoto3クラスに挑戦する中上選手と尾野選手という2人の日本人ライダーの報告は、第11戦チェコGP終了後に報告(予定)します。
第10戦インディアナポリスGP(インディアナポリス・モータースピードウェイ) - 予選:6番手 決勝:9位
中上貴晶選手は、後半戦初戦のインディアナポリスGPを9位で終えました。順位の数字それ自体はともかくとしても、この第10戦は現状での克服すべき課題と前向きな収穫内容の双方が明らかになったレースウィークでした。
金曜の初日は3番手タイムで、土曜の予選では2列目6番グリッドを獲得。日曜の決勝レースに向け、仕上がりが順調に進んでいると感じさせるセッションの積み重ねでした。
しかし、日曜は雨交じりの微妙な天候となり、Moto2クラスのレースが始まる時刻も気象状況は非常にあやふやな状態でした。中上選手はウェット用タイヤを装着して決勝用のサイティングラップに出ましたが、Moto3クラスの決勝レースで路面の乾きが非常に早かったことから、選手紹介の行われているグリッド上でチームと相談のうえスリックタイヤに交換。マシンもスリックタイヤ用のセットアップへ変更しました。
「スタート前のウォームアップラップで、前後とも新品のスリックタイヤの〈皮むき〉をしたのですが、まだ路面が少し湿っていたこともあって中途半端になってしまいました。エッジ部分まで充分な〈皮むき〉をできずにレースがスタートしたので、1周目はペースを上げられず、21番手まで順位を落としてしまいました。それがすべてでしたね」
その後は、トップグループと遜色ないタイムで走行して順位を回復してゆきましたが、スタートで大きく遅れてしまったことが、最後まで影響する結果になりました。
「順位を落としてしまったことで、これはもう追い上げるしかないと思いました。いいペースで走行でき、このレースウィークでの積み上げに自信を持って攻めの走りを実行できました。ブレーキングのスタビリティも良く、ラスト2周では3台を一気に抜くこともできました。これだけの追い上げをできたのはポジティブな要素ですが、変化しやすいコンディションとはいえ、自分で難しいレースにしてしまったのも事実です。その面では、良いバイクを仕上げてくれたチームに対して、とても申し訳なく思っています。色々な意味で、とても勉強になったレースでした。レース序盤と終盤でラップタイムの落ち幅が非常に小さく、良い走りをできたと思いますし、ブレーキングの高い安定性で、相手の後ろについたら抜くことができる、という自信も持てました」
2週連続となる第11戦チェコGPに対しては「痛恨のミスをしてしまった借りを返し、チームに恩返しをしたいです」と語りました。
「一戦ごとに日本GPも近づいてきているので、ツインリンクもてぎで良いパフォーマンスを発揮するためにも、しっかりと準備をしたいと思います。ブルノサーキットは一昨年にポールポジションを獲って優勝争いもしているので、好きなコースです。インディではスタートでつまずいてしまいましたが、走りそのものはザクセンリンクから良いパフォーマンスなので、その流れを維持して好リザルトを残したいと思います。ドライ、ハーフウェット、ウエットのどんなコンディションでもしっかり対応できるように、チームと話し合ってウィークに取り組みたいですね」
第11戦チェコGP(オートモトドラム・ブルノ・サーキット) - 予選:16番手 決勝:12位
第11戦チェコGPのレースウィークは、猛暑の週末になりました。チェコGPは、同国第2の都市ブルノ郊外で毎年8月中旬に開催されます。今年のブルノサーキットは、中欧全域を熱波が襲ったために金曜から厳しいコンディション下での走行となり、各チームと選手は高い温度条件のなかで上手に走るセットアップの対応にも追われました。
午前のフリープラクティスでは11番手。午後3時からのフリープラクティス2回目は、厳しい暑さの中でのセッションになり、中上選手はひとつポジションをあげて、トップから0.961秒差の10番手につけました。「明日も午前と午後でコンディションが大きく変わると思うので、それを頭に入れて、リアのグリップを出せるようなセッティングを煮詰めていきたいと思います。予選のタイムアタックも大事ですが、重要なのは決勝レースで高いアベレージのラップタイムを維持することなので、それを念頭に置きながら、予選では自分の頑張りでポジションをあげ、残りのセッション時間は焦らずしっかりと良いアベレージタイムを刻めるように臨みます」
土曜午前のフリープラクティス3回目はトップと1.442秒差の20番手、午後の予選は1.303秒差で16番手。この結果、6列目左の16番グリッドから日曜の決勝レースを迎えることとなりました。一日の走行を終えて中上選手は、金曜日に課題として挙げていたリアのグリップ力改善は充分に果たせなかった、と述べました。「そこがいま一番の問題です。ブレーキング初期のスタビリティは良いのですが、そこからのターンインでどうしても他の選手よりも減速しないとフロントの舵角が入っていかず、曲がりにくい状態です。FP3よりも良くなってはいるけれども微々たるモノで、昨日から今日にかけて、車高を変えてリア寄りにしたことが、結果的に少し行きすぎてしまったようです。データにもそれが出ているので、明日の決勝に向けてこの部分を改善できるようにチームとじっくり話し合います」
一週間を通して熱波に包まれたブルノサーキット周辺は、気象情報では日曜日に雷雨の可能性も予測されていました。土曜日の夜中に激しい降雨があったものの、決勝日朝にはその雨も収まり、午前のウォームアップセッションから決勝レースの時刻まで、ドライコンディションを維持しました。
午後12時15分にスタートしたMoto2クラスの決勝レースで、中上選手はスタート直後の1コーナーで大きく順位を落とし、23番手になってしまいました。1周目を終えたときは22番手。「1コーナーに飛び込んでいった際に、止まりきれないスピードで飛び出してきた選手がいて、軽く接触したこともあって外に大きくはじき出されてしまいました。路面がかなり汚れたところまで行ってしまい、なんとか走行ラインに戻ってきたときには23番手まで落ちていました。この数戦、1周目が悪かったので今回はそこを改善することも目標にしていたのですが、前回と同じになってしまいました……。ここは、いちはやく改善しなければいけない部分だと思っています」
22番手まで大きく順位を下げてしまった中上選手は、そこから周回ごとに前をゆく選手を抜き続け、着実に順位を上げていきました。最後は12位でチェッカーフラッグ。「ブレーキングのスタビリティはここ数戦良くて、今回もウィークを通してずっと大丈夫だったので、レースではそれが強みになりました」と、全20周のレースを振り返りました。「ブレーキングだけではなく、複合コーナーやS字の2個目という難しいところでも抜くができ、ほとんど転倒車がいないレースで11台を抜いてポジションを上げていけたのは良かったと思います。12位という順位は物足りない結果だし、1周目に順位を落としていなければもっと上位で終われたとも思いますが、この週末は苦労して15〜16番手でセッションを終えていたので、厳しいレースを覚悟していたなかでは上手く走ることができたと思います。ウィークを通してリアのグリップを使った旋回ができずに苦しみ、どうしてもフロントタイヤを酷使してしまう傾向だったのですが、レースのセットアップがいちばん良くなりました。チームの皆と最後まで諦めずに、追い上げるレースをできたことも良かったと思います」
第13戦のイギリスGPはシルバーストーンサーキットで開催されます。晴れから雨、雨から晴れへと天候が大きく変化し、温度条件が低くなることも珍しくない土地柄なので、この不安定なコンディションに対応できるチーム力が重要な要素となります。また、この数戦の中上選手は高い水準で安定したラップタイムを刻み、ライバル選手を次々に抜いていますが、スタートで後方に埋もれてしまうために、そこからの順位回復を図っているうちにレースが終わってしまっています。これを避けるためには、予選でしっかりと上位タイムを記録し、良いグリッド位置を獲得しておくことが重要だといえるでしょう。「次のシルバーストーンは初日から上手く取り組んで、今回のような後方スタートにならないように、上位からトップグループでレースをできるようにしたいと思います。この数戦で難しい部分を経験できたので、次回はそれを活かして同じ失敗と苦戦を繰り返さないようにレースウィークのセッションひとつひとつをしっかりと走行し、上位を目指して戦います」
レース序盤で苦労を強いられることなく、中上選手本来の速さを存分に発揮するためにも、予選での好パフォーマンス発揮と上位グリッドの獲得は次戦以降に向けた必須課題といえるでしょう。
Moto2クラスとMoto3クラスでそれぞれ挑戦を続ける中上貴晶選手と尾野弘樹選手の次回レポートは、第13戦サンマリノGP終了後に報告する予定です。
第12戦イギリスGP(シルバーストーン・サーキット) - 予選:6番手 決勝:14位
イギリスGPの舞台となったシルバーストーン・サーキットの全長は5.900km。中上選手は2013年、このコースでポールポジション(PP)を、決勝レースでは2位表彰台を獲得しました。中上選手の記録したPPのレコードは翌2014年にも破られることなく、当サーキットのMoto2クラス最速タイムとして記録されていました。相性のいいこのコースを、シーズン後半での浮上の契機にするべく乗り込んだ今年の大会は、金曜日の走行初日から好調な滑り出しになりました。
午前のFP1は順位こそ9番手でしたが、タイム差ではトップと0.6秒差。午後のFP2は3番手に浮上。土曜日も順調にセットアップを積み上げて、午後の予選は2列目6番グリッドを獲得しました。
「マシンからのフィードバックがよく、アベレージタイムも悪くないので、明日もドライコンディションならいいレースができると思います。今週はここまでいい感触なので、決勝はみんなに喜んでもらえるリザルトを残したいです」
予選終了後には、レースに向けて良好な手応えを得ていた中上選手。日曜日は天候が一変し、朝から雨が降る中、午前のウォームアップ走行で4番手タイムを記録し、ウエットコンディションでのレースの準備も、着々と整っている様子でした。
現地時間11時20分(日本時間午後7時20分)に始まった決勝レースは、ウエットコンディションでスタート。序盤はトップ10圏内を走行していた中上選手ですが、周回を重ねるごとに路面が少しずつ乾き始め、その難しいコンディションで少しずつポジションを落としてしまいます。最後はポイントこそ獲得したものの、14位でチェッカーを受ける結果に終わりました。
「ああした状況ではセッティングに差が出ることはないので、自分が速く走れなかったことが今回の敗因です」
レースを終え、中上選手は悔しそうな表情を見せました。
「序盤のウエット状態のときはそこまで悪くなかったのですが、路面がどんどん乾いてタイヤのグリップが落ちてくると、速く走れなくなってしまいました。ブレーキングで突っ込めず、旋回からコーナーの立ち上がりでも思い通りに走れない、という悪循環で、みんながタイムを上げていく中、自分は上がり幅があまりなかったために、この結果に終わってしまいました」
この第12戦を終え、IDEMITSU Honda Team Asiaは次のレースを前に、スペインのモーターランド・アラゴンで2日間のテストを実施します。今回のレースで得た教訓や課題をクリアにし、次戦の好結果につなげるためにも、充実した内容のテストにしたいところです。
第13戦サンマリノGP(ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ) - 予選:8番手 決勝:3位
第13戦サンマリノGPで、中上選手は3位表彰台を獲得。2年ぶりのポディウム登壇となりました。
サンマリノGPの舞台、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリは中上選手にとって特別なサーキットです。この会場は、幼い頃からともに競い合い成長してきた富沢祥也選手が、2010年にレース中のアクシデントにより逝去した場所だけに「なんとしてもいいリザルトを獲得する」という固い決意でレースウイークに臨みました。13年には、最終ラップまで優勝争いを繰り広げて2位フィニッシュを果たしており、相性がいいコースと言えるでしょう。
金曜日のフリープラクティスから着実に決勝を見据えたセットアップを積み上げ、土曜日午後の予選は8番手。日曜日の決勝レースでは、ここ数戦の課題だった序盤でのポジションアップにも成功し、全26周のレースの最後まで安定したラップタイムを刻み続けて、3位でゴールを果たしました。
表彰式を終えた中上選手は、大きく息をひとつ吐いてから
「いやあ、うれしいですね」
と笑顔を見せました。
「このサーキットは祥也がいるという意味でもすごく特別な場所で、レース前からなんとなく、今回はいけそうな気持ちがありました。予選では2列目以内に入りたかったのですが、3列目8番手になってしまい、少し不安もあったけれども、今朝のウォームアップではペースもマシンのフィーリングも良好でした。レーススタート直後の混乱をうまく切り抜けて前に出ることができ、それが3位表彰台獲得の大きな要素になりました。上位陣の選手はハード側のコンパウンドを選択していたのですが、僕はソフト側なので、特にレース終盤に厳しくなるだろうという覚悟はしていました。『ハード側のタイヤをうまく使えなかった分、そこは自分でなんとかします』とチームとも話をしていたので、高いモチベーションで臨みました。グリップがよく、ペースを順調に維持してうまくタイヤマネージメントができたことも、キーポイントだったと思います」
土曜日の予選を終えたときには「ブレーキングのスタビリティーもいいので、自信を持って走れています。長いレースをしっかり楽しみたいです」と話していましたが、実際のところ、この26周の戦いは楽しさ半分、興奮半分だったと振り返りました。
「8番手スタートだったので最初は表彰台圏外でしたが、そこからどんどん追い抜いて、途中で2番手に上がったときは、2年前にトップ争いをしていた当時のいい緊張感を久々に味わうことができました。今回、こうやっていいリザルトを残すことができて、次戦は、先週のテストでいい手応えを得たアラゴンへ戻ることができのは、流れとして非常にいいと思います。スペインのレースでは地元の選手が強いと思いますが、今回の勢いに乗っていいレースができる自信があります。そこで再びいい結果を残し、第15戦日本GPに向けてさらに弾みをつけたいですね」
第14戦のアラゴンGPが終わり10月になれば、いよいよ次はツインリンクもてぎで開催される日本GPです。当ページの次回更新では、ホームグランプリの日本GPで、中上選手たち日本勢が活躍する模様をお伝えします。
第14戦アラゴンGP(モーターランド・アラゴン) - 予選:5番手 決勝:8位
スペインのモーターランド・アラゴンは、IDEMITSU Honda Team Asiaが第13戦サンマリノGPの前に2日間のテストを実施した場所です。ここでいい感触を得たことがサンマリノGPの3位表彰台につながったと、中上貴晶選手はレース後に話していました。その意味でも第14戦アラゴンGPは、第13戦で表彰台を獲得した勢いそのままに好結果を出し、その次の日本GPへ備えたいところでした。
中上選手は金曜日の走り出しから順調で、初日は総合2番手タイムを記録しました。トップとのタイム差は0.135秒。テストの際に精力的に走り込んだ成果が早速表れた格好です。
土曜日の走行では、午前のフリープラクティスでのタイムが、最速選手から0.660秒差の8番手でした。モーターランド・アラゴンはスペイン内陸部に位置し、サーキット周辺が岩石砂漠のような地形であることが影響し、夜から早朝の温度が非常に低くなります。そのために、サーキットのコンディションも、温度条件が午前と午後では大きく異なります。決勝レースは午後0時20分にスタートを予定していたため、その時間帯の状況を想定したセットアップの積み上げが重要です。
土曜日午後の予選は2列目5番グリッド。フロントローこそ逃しましたが、2列目中央からのスタートは、決勝に向けてまずまずの位置と言えるでしょう。
「目標にしていた1分52秒台に入れることはできましたが、トップ2台のタイムと少し離れているのが少し気になるところです。順調にペースとタイムアップはできているので、いい形で決勝レースに臨めると思います」
そう話していた中上選手ですが、決勝レースは当初の予想とは異なる展開になってしまいました。21周のレースは、開始直後に転倒者が出たため赤旗中断。改めて14周のレースとして仕切り直しになりました。そのレースの序盤、中上選手は集団に埋もれてしまい、そこから少しずつ追い上げていきましたが、結果は8位。
「ウイークを通してうまく進めてきただけに、決勝レースは反省点の多い内容になりました」
と悔しそうな様子でレースを振り返りました。
「フリー走行ではタイヤライフも確認し、速さも発揮できていたので、それを決勝レースの結果に結びつけられなかったのが残念です。ただ、決して調子を落としているわけではなく、狙っていたレースができなかったということなので、この結果をしっかりと受け止めて反省し、次の日本GPに備えたいです」
第15戦日本GP(ツインリンクもてぎ) - 予選:7番手 決勝:22位
中上貴晶選手とチームスタッフ、そしてIDEMITSU Honda Team Asiaにとって、ツインリンクもてぎで開催される日本GPはシーズンで最も重要なレースと言っても過言ではないでしょう。ホームグランプリであるだけに注目度が高く、ここでいい走りを披露することは、大きなアピールになります。週末に向けた準備が慌ただしい木曜日、中上選手は翌日からの走行がすでに待ちきれない様子でした。
「日本GPは年に一度しかないですし、ヨーロッパライダーたちよりもコースを知り尽くしており、しかもホームグランプリ。そのため、いつもより応援もあります。ですので、早く走りたくてうずうずしています。特に今年は調子が上向きの状態でもてぎに入っているので、今までと違って不安がなく、本当に楽しみです。表彰台というよりも、今回はとにかく優勝を狙っていきたいです。強い気持ちを持って臨みます」
金曜日のフリープラクティスは、午前から午後にかけてしっかりとタイムを更新して総合6番手。走行初日はまずまずのスタートになったと言えるでしょう。土曜日午前のフリープラクティス3回目は7番手。午後の予選も7番手で、日曜日の決勝レースを迎えることになりました。ただ、この予選順位は、2列目以内に入ることを目標にしていた中上選手としては、やや不満の残る位置だったようです。
「ポジティブに考えれば、なんとか7番手に残れたとも言えるのですが、タイムアタックでは目標にしていたラップタイムに届かなかったのが情けないです」
走行後のミーティングでリアサスペンションのセッティングをさらに見直して、サスペンション性能とタイヤのパフォーマンスを引き出せるようにしたいと、中上選手は語りました。
「タイヤのマネージメントをしっかりとできれば、決勝レースでもチャンスは十分にあると思います。あとは気合ですね。モチベーションをしっかり高めて明日に向けて備え、自信を持ってレースに臨みます」
日曜日の決勝レースは、本来であれば23周で争われるところですが、悪天候によるスケジュール遅延のため、15周へと短縮されました。当初の予定よりも45分遅れの午後1時に始まったレースで、中上選手はうまくスタートを決め、5番手で1コーナーへ飛び込んでいきました。即座に1つポジションを上げ、2周目には3番手に浮上しました。次の周回も3番手でコントロールラインを通過。4周目も中上選手は後続の選手たちにすきを見せず、3番手をキープしながら、下りの長いバックストレートから90度コーナー、そして第2アンダーパスを通過して最終のビクトリーコーナーへ差しかかったところで、雨で濡れた白線に乗ってスリップダウン。転倒を喫してしまいました。
マシンを起こしてレースに復帰した中上選手ですが、これで大きく順位を落としてしまい、結果は22位。非常に残念な結果に終わってしまいました。
「いいスタートを切って序盤から自信を持って走れて、表彰台圏内にいたのに、ほんの少しのミスで転倒をしてしまいました。日本のファンの方々とチームに申し訳ない。ただそれだけです」
中上選手は、悔しそうな口調でレースを振り返りました。
「ウエットのセットアップに関しては、シルバーストーンで調子がよく、自信を持って走れていました。普通ならいきなりドライからウエットになると、心理的に嫌な部分があるものですが、僕の場合はそれもなく、最初から自信を持って走れました。今回はなんとしても表彰台に上がりたかったので、自分のミスが悔しくて、本当に残念です」
この悔しさをバネとして、連続開催の第16戦オーストラリアGPと第17戦マレーシアGPにぶつけ、今シーズンのベストリザルトに結実することを期待しましょう。次回の更新は、第17戦マレーシアGP後を予定しています。
第16戦オーストラリアGP(フィリップアイランド・サーキット) - 予選:6番手 決勝:4位
日本GPの決勝レース、中上貴晶選手は、表彰台圏内を走行していたところから思わぬ転倒を喫し、再スタート後に22位という不本意な結果に終わってしまいました。そのうっぷんを一気に晴らすべく臨んだ翌週のオーストラリアGPでは予選6番手、2列目スタートを確保しました。
「週末を通して着々とセッションをこなし、レースを想定したロングランでも良い手応えを感じています。リアのエッジグリップをもう少し向上させたい、というのが今の課題です。それでも何とか予選で2列目を確保できたし、レースディスタンスのアベレージは安定しているので、決勝レースではその強みを活かせる走りをしたいと思います」
オーストラリアGPの開催地フィリップアイランド・サーキットは、メルボルンよりもさらに南方に位置しています。海に面した土地柄もあって風が強く吹き、変わりやすい天候と低い温度条件いう要素とも戦わなければなりません。
決勝レースは現地時間午後2時20分にスタートしました。このときの気温は15℃。日本でいえば初冬のような寒さです。中上選手はスタートでやや出遅れ、1周目を終えた段階では7番手。その後も、周回を重ねるごとに少しずつ順位が落ちていき、レース中盤過ぎの14周目まで10番手を走行していました。しかし、レースが後半に向かうにつれ、中上選手はポジションを着実に回復し、23周目には4番手まで浮上しました。そして、この順位を維持したまま25周の戦いを終え、4位のチェッカーフラッグを受けました。
「開始直後でタイヤが新品状態のときは皆のペースアップについていけなかったのですが、ここで無理をするとかえってタイヤの消耗が大きくなると考え、ぐっと我慢をして、レース中盤から後半にきっとチャンスがあると思いながら走り続けました」
レース序盤に順位を落としてしまった展開を、中上選手はそんなふうに振り返りました。
「中盤過ぎから自分のペースが上がったわけではないのですが、コンスタントにずっと走って一定ペースをキープしながら、楽に順位を上げてゆくことができました。
終盤に強みを出せましたが、表彰台に一歩届かなかったというよりも、前方とのタイム差を見ても表彰台を狙える4位ではありませんでした。我慢を続けてなんとか得た4位、という印象で、今回はその上は狙えませんでした。それでも、中盤から終盤に追い上げることができたのはすごくポジティブだったと感じています。悔しさもあるけれども、今の状況の中でやることをやりきって4位に上がれたという意味で、次につながるレースでした」
第17戦マレーシアGP(フィリップアイランド・サーキット) - 予選:7番手 決勝:4位
オーストラリアGPを終え、戦いの舞台は南半球の高緯度地域から赤道直下のマレーシアへ舞台を移しました。1周5,543mのセパンサーキットは、熱帯地方特有の暑い温度条件への対応も必要になるため、選手たちにとっては体力的にも過酷な戦いになります。
金曜のフリープラクティスからじっとりと蒸し暑い空気に包まれながら、選手たちは決勝レースへ向けたセットアップの積み上げやタイヤの見極め、レース周回を想定したロングランなど、それぞれのメニューを消化しました。中上選手は午後のフリープラクティス2回目を終えて5番手。マレーシアは路面温度の穏やかな午前のほうが良好なタイムを記録する傾向があります。午前と午後の総合タイムでは、この日の中上選手は6番手。まずまずの出足、といえそうです。
「今の状態は、レースディスタンスに対して60〜70パーセントの仕上がり具合ですが、明日はそれを80〜90パーセントくらいまで持っていき、レース後半でも速く走れるように仕上げたいと思います」
翌日の予選に向けては、最低でも2列目に入ることが目標、と話しました。
「まずは決勝を第一に考えて、予選のグリッドは最低でも2列目、できればフロントローを狙いたいですね。予選順位を重視しすぎるのではなく、決勝を見据えて最低でも2列目に並べればいいや、くらいの考えで気持ちを楽にして、明日の予選に臨みます」
土曜日の走行は、午前のフリープラクティス3回目でトップと0.9秒差の7番手。午後の予選はセッション終盤に雨が降って、ややトリッキーなコンディションと展開になりました。45分間の予選も約半分が過ぎ、残り20分となった頃、コースサイドのマーシャルポストでレインフラッグが提示され、選手たちは続々とピットへ戻ってゆきました。その後、セッション終了間際に何名かの選手がふたたびコースインしましたが、ラップタイムの改善はなく、結果的にセッション中盤までの各自己ベストタイムでグリッドが決定しました。
中上選手はポールポジションから1.039秒差の7番手タイム。日曜の決勝レースは3列目からのスタートになります。思いどおりの走りをできなかったこともあるためか、この日の走行を終えた中上選手は、明らかにフラストレーションの残る表情でした。
「トップとのタイム差も含めて、まったく望んでいない予選結果になってしまいました。まあ、予選は予選なので、あまりこの結果にこだわりすぎないようにします。決勝レースで高いアベレージタイムを維持してどれだけ粘り強く走れるかが勝負なので、マシンの状態に頼りすぎずに、自分のライディングでもカバーできるように明日はがんばりたいと思います」
今回のマレーシアGPでは、マレー半島全体にインドネシアの焼き畑による煙が到来して煙害の影響も心配されていましたが、日曜の天候はいつものマレーシアらしい灼熱の一日になりました。
現地時間午後1時20分に始まった全19周の決勝レースで、中上選手はスタートをうまく決め、1周目終了時には4番手につけていました。その後、トップグループが2分07秒台後半のタイムに入れて引き離し始めたのに対し、中上選手のラップタイムは2分08秒台前半を継続する状態だったために、少しずつ距離が離れていきました。
セパン・サーキットは温度条件の高さに加えてバンプ(路面の凹凸)も多く、滑りやすい傾向になります。これらの要素はタイヤの消耗にとっても厳しく、周回を重ねるにつれ多くの選手がラップタイムを落としていく中、中上選手は2分08秒台を安定して刻み続け、6番手から5番手、そして4番手へと確実にポジションアップを成し遂げていきました。
最後は、後続の集団をも引き離して4位でチェッカー。2戦連続の4位フィニッシュになりました。
「昨日の予選でもフィーリングをあまり詰めることができなかったので、19周の決勝は天候も含めてかなり未知数の要素がありました。だから、かなり厳しいレースでしたね」
汗をぬぐいながらレースを振り返る中上選手の表情には、それでもある程度の達成感が浮かんでいました。
「オーストラリアでは序盤で順位を落として追い上げのレースになりましたが、今回はスタートをうまく決めて、序盤もある程度はうまく走れたと思います。トップ2台が速くて、少しずつ離れてしまいましたが、現状での自分のベストを尽くして、速さはともかく安定したタイムで走ることができたので、同じ4位でもオーストラリアよりは手応えのあるレースになりました。タイヤが厳しい状態でうまくマネージメントできたことも、今回の収穫のひとつです。
まだ自分たちのパフォーマンスに余力はあると思います。最終戦のバレンシアは一年の締めくくりなので、ぜひとも表彰台で終わりたいですね」
最終戦の舞台バレンシアサーキットは、プレシーズンテストを行った場所でもあるだけに、この一年間の進歩を計るには絶好の場所です。一年間18戦をかけて積み上げてきた成果が今季ベストリザルトに結びつくよう、最終戦での中上選手の走りに期待しましょう。
第18戦バレンシアGP(バレンシア・サーキット) - 予選:8番手 決勝:11位
第16戦と第17戦をともに4位で終えた中上貴晶選手にとって、第18戦の舞台であるバレンシア・サーキットは思い出深い場所です。ここまで23年間の人生で、いくつかのターニングポイントになった場所が、ここバレンシア・サーキットなのです。
「9年前にMotoGPアカデミーのオーディションに合格したのがこのサーキットで、スペイン選手権で初表彰台を獲得したのもここでした。世界選手権に初めてワイルドカードで参戦したのもここ。だから、いろんな思い出が詰まったサーキットなので、今回の第18戦は楽しくポジティブな気持ちでウイークを走りたいと思います」
第16戦オーストラリアGPと第17戦マレーシアGPでは、ともに4位でフィニッシュを果たしているだけに、今回はそれよりも上位のリザルトでチェッカーフラッグを受け、最高の形でシーズンを締めくくりたい、とも話しました。
「過去には予選でフロントローに並んだこともあるので、相性は悪くないサーキットだという印象があります。この2戦を終えて自分たちの課題もクリアになって、あと一歩というところまで来ています。その課題を改善できれば、シーズン最後のレースも戦いやすくなると思うので、自分たちにできることをしっかりとやり尽くして、明日からの走行に臨みたいと思います」
最終戦の気象予報は、おだやかな晴天が予測されています。各選手各陣営は安定したコンディションでセッションに取り組むことができる分、厳しい戦いになりそうです。
金曜のフリー走行から土曜午後の予選まで、中上選手は着実にタイムアップを果たし、レースに向けたタイヤの見極めとマシンの微調整もおおむね順調に積み上げていくことができました。課題はフロントのフィーリング、特にブレーキングからコーナー進入にわずかな不安感がある、と話しました。それでも金曜初日の走行はトップから0.713秒差の総合8番手、土曜の予選では、自分自身のラップタイムを詰めてタイムギャップもさらに短縮して0.552秒差まで詰めました。8番手タイムを記録した中上選手は、日曜の決勝レースを3列目中央の8番グリッドから迎えます。
「昨日よりは確実によくなっています。あとは27周の決勝レースで、トップグループを含めて自分自身がどれくらいのペースで走行できるか、ですね。まだそのあたりが未知数で、ポールポジションの選手たちよりも現状ではやや劣っているのも事実ですが、僕たちにもまだチャンスはたくさんあると思います。セットアップで微調整を行い、あとはライダーのがんばりでベストを尽くします。可能な限り高い順位で終えられるよう、明日は自分の力を出し切りたいと思います」
日曜のバレンシアサーキットには、11万人を超す大観衆が詰めかけました。Moto2クラスの決勝レースは正午過ぎに始まります。大勢のファンが固唾をのんで見守るなか、一瞬の静寂を突き破る激しいエンジン音とともに2015年最後のレースが始まりました。
9番手で1コーナーに飛び込んでいった中上選手は、その位置を維持したまま2コーナーを通過。しかし、その背後で多重クラッシュが発生し、レースは赤旗中断になりました。
27周で争われるはずだった決勝は18周に減算されて仕切り直しとなり、選手たちはふたたびグリッドにつきます。再開後のレースは、周回数が少なくなった分、トップグループの選手たちはさらにペースアップして走行し、一気に後続グループを引き離しました。中上選手は11番手につけて周回を続けていましたが、混戦の中でレース中盤には13番手にポジションを落としてしまいました。しかし、そこから冷静に状況を伺いながら前の選手を追い詰めて、1つ、また1つとポジションアップ。最後は自分たちがバトルをしていたグループでは一番前の11位でチェッカーフラッグを受けました。
そう語る中上選手の表情には悔しさも残っていましたが、そこにはしっかりと戦い抜いた達成感も見え隠れしていました。
「レース中盤にシフトミスでオーバーランしてしまってポジションを落とすことになったのですが、その後、オーバーテイクできて、あの集団の中では前に出てフィニッシュしました。あのまま14位で終わっていれば、気分的にもかなり落胆していたと思います。決していい成績ではないし、当然もっと上位で争いたかったのですが、グループの先頭でゴールできたことにより、収穫のあるレースにはなりました」
この第18戦を終え、中上選手とチームは11日(水)から三日間のテストを行うため、アンダルシア地方のヘレスサーキットへ移動しました。2016年シーズンの戦いは、すでに始まっています。
「2015年は、シーズン序盤に流れを自分に引き寄せられず、厳しいスタートになりました。それでも、後半戦からどんどんポイントも重ね、いい走りをできたレースもあったし、予選がよくても決勝で納得のいくレースをできなかったこともありました。表彰台を1回しか獲得できなかったのは残念ですが、Moto2の3年間で、毎年毎シーズンいろんな経験をしていろんな発見をできたと思います。来年こそチャンピオンを狙い、チーム全員で飛躍の年にするつもりです。
ヘレステストからマシンも2016年型になるし、少ないテスト期間で確実にベースセットアップを作り出すことが来年に向けた重要なカギになると思うので、一日一日を実りの多いテストにしたいと思っています」
来シーズンの中上貴晶選手は、IDEMITSU Honda Team Asiaで3年目の年を迎えます。大いなる飛躍の一年にするための、助走が始まりました。開幕戦まであと4カ月。2016年のIDEMITSU Honda Team Asiaと中上貴晶選手のさらなる活躍を、今から楽しみに待ちましょう。