オーバル4連戦を終えたIZODインディカー・シリーズは、国境を北へと越えてカナダを訪れています。オンタリオ湖畔に作られているストリートコースは、1.755マイルの全長に11個のコーナーが配されるテクニカルなもので、ミスなく1周を走りきることが非常に難しいと言われています。その上、路面がバンピーなためにドライバーたちにとってフィジカル面も大変厳しいコースとなっています。
今週末のトロントは暑過ぎない快適な天候に恵まれ、予選もさわやかな快晴の空の下で開催されました。2グループに分かれての予選第1セグメント、12名による第2セグメントを経て6人の最速ドライバーたちが選ばれ、10分間にわたるポールポジション争いが行われました。
第2セグメントをトップ通過したのはスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)でしたが、予選のファイナルステージでコースレコードとなる59秒5771をマークしたのはウィル・パワー(Team Penske)でした。今年の開幕戦からストリート、そしてロードコースでの4連戦で4回ともポールポジションを獲得してきているパワーは、トロントで今シーズン5回目のポールポジションをその手に掴んだのです。彼にとって今回のポールポジションはトロントにおける初めてのものですが、キャリア通算では21個目のポールポジション獲得となりました。
59秒6646をマークし、惜しくもパワーに0.0875秒届かず予選2番手となったのはディクソンでした。そして、ポイントリーダーのダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)が予選3番手となる59秒9000をマークしました。予選4番手は今年の第3戦ロングビーチでキャリア初優勝を飾ったマイク・コンウェイ(Andretti Autosport)、予選5番手はグラハム・レイホール(Chip Ganassi Racing)、予選6番手はランキング4位のオリオール・セルビア(Newman Haas Racing)でした。
佐藤琢磨(KV Racing Technology-Lotus)は、プラクティスからマシンを思うように仕上げていくことができなかったため、予選には新たなセッティングを導入しました。それは期待された効果を発揮し、佐藤はラップタイムを縮めることに成功したのですが、第2セグメントへと駒を進めることは叶いませんでした。荒れた路面でマシンが安定感を欠き、ブレーキングでもコーナーからの脱出でも操作が非常にシビアなものとなっていたためでした。明日の決勝に向け、佐藤はさらなるマシンセッティングの変更、改良が必要だと考えています。決勝の前に行われるファイナルプラクティスで、ドライバーたちはレースに向けた最後の調整を行います。
ウィル・パワー(ポールポジション)「トロントでのポールポジション獲得をとてもうれしく思っています。このコースは本当にチャレンジングで、走っていて楽しいです。マシンを完ぺきなバランスに仕上げるというのは、多分不可能だとさえ考えられますが、マシンの持つ力をできる限り引き出さなければなりません。バンプを越えながらブレーキングをし、変化する路面のグリップに最大限対応し、縁石の乗り越え方などもすべて完ぺきに行わなければいいラップタイムを出すことはできません。しかも、ミスを犯しやすいコースでもあります。だからこそ、こうしてポールポジションを獲得できた喜びは大きいのです」
スコット・ディクソン(2番手)「予選の第2セグメントまではとてもスムーズにクリアできました。今回はソフトコンパウンドのレッドタイヤでどれぐらいのタイム短縮ができるのかがハッキリしていなかったため、各チームがどこまでのタイムを出してくるかにも注目していました。自分たちのマシンの仕上がりはよく、昨年までのベストラップよりも1秒近く速い59秒台で走ることさえできていました。しかし、ポールポジションを獲得すべく予選のファイナルステージでもがんばったものの、あと少しのところでポールは逃すことになってしまいました」
ダリオ・フランキッティ(3番手)「自分たちのマシンは非常にいいセッティングにできていると考えていました。予選を戦っていく中で、そうした確信を得ることができていたんです。ところが、ファイナルステージでのアタックでは同じコーナーで重ねてミスを犯してしまい、思うようにラップタイムを縮めることができませんでした。インディカー・シリーズの競争は本当に激しく、ミスを犯す余裕が一切与えられていません。今回は1つのコーナーでの自分のドライビングが完ぺきでなかったため、リズムに乗るまでに時間がかかってしまい、ポールポジションを獲得することができなかったのだと思います。予選3番手は悪くない結果ですから、明日の決勝レースを楽しみにしたいと思います」
佐藤琢磨(19番手)「プラクティスからマシンの感触がよくなく、予選に向けてはセッティングを大きく変えました。レッドタイヤを装着しての走りで自己ベストは更新できたのですが、全体的にスピードが足りていませんでした。チームメート3人そろって第1セグメントでの敗退となってしまったのはとても残念です。路面がよくないコースでのパフォーマンスが私たちのチームは昨年からの課題で、たくさんの対策を施してきました。しかし、うまくラップタイム短縮につなげることができませんでした。明日のレースに向けては、もう一度エンジニアとデータを見直し、ウオームアップセッションで別の角度からマシンをよくできるよう全力を尽くしたいと思います」
エリック・バークマン|HPD社長「トロントでの予選も非常にエキサイティングなものになりました。12台しか走らない時点から、クリアラップを確保することの重要性も高くなっていました。インディカー・シリーズの実力伯仲ぶりはすさまじく、ほんの小さな差でグリッドがいくつも変わってきます。その事実を改めて感じさせられた予選でした。トップ6で争われるファイナルステージへと進出してくるドライバーが誰なのかを予想することさえ難しく、そのドライバーたちの順位がどうなるのかを当てるのも本当に難しい、見ていてワクワクする予選でした。カナダのファンはとても熱心で、金曜日からサーキットに足を運んでくれています。今日も本当に多くの人々が予選を楽しんでいました。明日のレースもとても見応えのあるものになってくれることでしょう」
順位 | No. | ドライバー | チーム | C/E/T | タイム |
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1 | 12 | ウィル・パワー | Team Penske | D/H/F | 59.5771 |
2 | 9 | スコット・ディクソン | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 59.6646 |
3 | 10 | ダリオ・フランキッティ | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 59.9000 |
4 | 27 | マイク・コンウェイ | Andretti Autosport | D/H/F | 59.9326 |
5 | 38 | グラハム・レイホール | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 1:00.0463 |
6 | 2 | オリオール・セルビア | Newman Haas Racing | D/H/F | 1:00.3341 |
7 | 19 | セバスチャン・ブルデー | Dale Coyne Racing | D/H/F | 59.8239 |
8 | 28 | ライアン・ハンターレイ | Andretti Autosport | D/H/F | 59.8715 |
9 | 77 | アレックス・タグリアーニ | Sam Schmidt Motorsports | D/H/F | 59.8901 |
10 | 6 | ライアン・ブリスコー | Team Penske | D/H/F | 59.9020 |
11 | 22 | ジャスティン・ウィルソン | Dreyer & Reinbold Racing | D/H/F | 59.9636 |
12 | 3 | エリオ・カストロネベス | Team Penske | D/H/F | 1:00.0115 |
13 | 06 | ジェームズ・ヒンチクリフ | Newman Haas Racing | D/H/F | 59.8346 |
14 | 14 | ヴィットール・メイラ | A.J. Foyt Enterprises | D/H/F | 59.9869 |
15 | 34 | セバスチャン・サーベドラ | Conquest Racing | D/H/F | 59.9389 |
16 | 82 | トニー・カナーン | KV Racing Technology-Lotus | D/H/F | 1:00.0149 |
17 | 78 | シモーナ・デ・シルベストロ | HVM Racing | D/H/F | 1:00.0806 |
18 | 59 | E.J.ヴィソ | KV Racing Technology-Lotus | D/H/F | 1:00.1191 |
19 | 5 | 佐藤琢磨 | KV Racing Technology-Lotus | D/H/F | 1:00.1003 |
20 | 26 | マルコ・アンドレッティ | Andretti Autosport | D/H/F | 1:00.1542 |
21 | 7 | ダニカ・パトリック | Andretti Autosport | D/H/F | 1:00.3438 |
22 | 4 | J.R.ヒルデブランド | Panther Racing | D/H/F | 1:00.4472 |
23 | 18 | ジェームズ・ジェイクス | Dale Coyne Racing | D/H/F | 1:00.6226 |
24 | 8 | ポール・トレイシー | Dragon Racing | D/H/F | 1:00.4524 |
25 | 83 | チャーリー・キンボール | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 1:00.6463 |
26 | 24 | アナ・ベアトリス | Dreyer & Reinbold Racing | D/H/F | 1:00.7917 |