2013年大会は3人のライダーで挑んだTEAM HRC
2014年は5人のライダーで表彰台を狙う


多聞 そんな過酷な環境を、選手たちはたった一人で走るわけですね。


山崎 そうです。先ほど三上さんがおっしゃられたように、ダカールラリー2014であれば、総走行距離は約8700km。だれもいない荒野を、コマ地図(※6)やGPS(※7)といったナビゲーション機器を見ながら一人で走っていきます。


多聞 毎日すごい距離を走るんですね。途中で休憩はありますか?


山崎 スペシャルステージ(※8)では、基本的に休憩をしません。


多聞 ええっ! では食事は?


山崎 トラブルさえなければ、朝ご飯を食べてから出発し、昼過ぎには戻ってくるので必要ないんです。それでもライダーは、走りながら食べられるようなものをポケットに入れていきます。エナジーバー(※9)のようなものですね。


多聞 走りながら食べるんですか。それはすごいですね。ちなみに、どんなライダーが勝てるライダーなんですか?


山崎 いい質問ですね。答えるのは難しいんですが、どんな道でも走れるテクニックがあるだけでなく、コマ地図や地形から的確なルートを見つけられるナビゲーション能力、ミスコースなどのトラブルが起きたときなどに、的確な対応ができる判断力、マシンが壊れたときに復旧できるスキルも重要です。今年は5人のライダーで挑みますが、どの選手もそうした能力を高いレベルで備えていますよ。


三上 山崎代表から見た、各ライダーの特徴を教えていただけますか?


山崎 今年、TEAM HRCから参戦するライダーは、昨年から2人増えて5人です。FIMクロスカントリーラリー世界選手権(※10)のタイトル獲得経験を持ち、ダカールラリー2013で総合7位に入ったロドリゲス選手(ポルトガル)。今年のFIMクロスカントリーラリー世界選手権で総合優勝を果たしたパウロ・ゴンサルヴェス選手(ポルトガル)は、小柄で明るくタフな選手です。モロッコラリーでゴンサルヴェス選手と連日ステージ優勝を争い、総合3位となったホアン・バレダ選手(スペイン)はクールなルックスと速さを合わせ持っています。ピゾリト選手(アルゼンチン)は、どんなときでもくじけない、明るいムードメーカー的存在。そして、チーム一の若手で、次世代のエースとして期待されるサム・サンダーランド選手(イギリス)です。


三上 バレダ選手とゴンサルヴェス選手は、昨年はハスクバーナ(※11)に所属していた選手ですね。10月に行われたFIMクロスカントリーラリー世界選手権最終戦のモロッコラリー2013では、この2人が全6ステージのうち5勝を挙げ、ゴンサルヴェス選手が総合優勝を果たしました。


山崎 バレダ選手はスピードで言えば、現在世界で一番速いと思います。ゴンサルヴェス選手は転倒がなく、安定度が高い。ロドリゲス選手も勝つための才能を持っている。もちろん、サンダーランド選手もピゾリト選手も優れたライダーです。今年は、5人の優秀なライダーを擁して大会に臨むことができ、好成績を挙げられると考えています。

(左から)多聞恵美、山崎勝実ダカールラリーTEAM HRC代表

「バレダ選手は周囲への気遣いを忘れない好青年」、「ピゾリト選手はラテン気質のムードメーカー」など、ライダーたちのキャラクターを説明する山崎代表

前回のMAP

ダカールラリー2013 MAP

(※6)主催者側から渡されるコースマップ。分岐などのポイントごとに分かれた局地的な地図で、スタート地点からの距離、家や川などのイラストが表記されている。ライダーはこの地図を確認しながらゴールを目指す。

(※7)ダカールラリーでは、主催者が指定したGPSの使用が義務付けられる。一般的なGPSのような地形表示はなく、通過ポイントだけが分かるようになっており、あくまでコマ地図の補助的な役割。

(※8)セレクティブセクションとも呼ばれるスペシャルステージは、速さを競う区間。ここでのタイムが積み重なり、全日程の合計タイムが短いライダーが勝者となる。なお、ダカールラリーは競技区間のスペシャルステージと、移動区間のリエゾンで構成されている。

(※9)運動中に利用されるエネルギー補給食。常に走り続けるダカールラリーでは、走りながら食べることができる携帯食でエネルギーを補給する。

(※10)世界各国で開催されるラリーを統合した世界選手権。2013年は、4月から10月にかけて、チュニジア、モロッコ、トルコ、エジプト、UAE、アルゼンチンを舞台に全6戦で争われた。

(※11)1689年にスウェーデンで創立されたオートバイブランド。ダカールラリーには2012年大会と2013年大会に参戦した。

ダカールラリー2013 総合順位

順位 ライダー マシン
1 C.デプレ KTM
2 R.ファリア KTM
3 F.ロペス KTM
4 I.ジェイクス KTM
5 J.ペドレーロ KTM
7 エルダー・ロドリゲス Honda
8 ハビエル・ピゾリト Honda
40 ジョニー・キャンベル Honda
パウロ・ゴンサルヴェス選手(中央)、ホアン・バレダ選手(右)

モロッコラリー2013に参戦するための手続きをするゴンサルヴェス選手(左)とバレダ選手(右)

第2章 敗北から気づいた勝利に必要なピース