軽快な走りに欠かせないパワーユニットを見ると、まずエンジンはフィットにも搭載する110ps/5800rpm、14.6kg・m/4800rpmを発揮する1.5リッターのVTECを採用。エキゾーストマニホールドの形状など、細部のリファインを積み重ね、加速性能だけでなく環境にも配慮がなされている。全タイプが「平成22年度燃費基準+5%」を達成、さらには「平成17年度排ガス基準75%低減レベル」を達成している。組み合わされるトランスミッションは、ホンダマルチマチックS。より軽快でスムースな走りを狙った、変速特性の見直しが計られているという。
実際に試乗して確認してみると、まず走り出しから余計な振動が排除されたかのように、スムースかつ力強く速度が上がっていく。VTECならではの、バルブタイミングが切り替わってからの加速感がとくに気持ちよく、フィットと同じエンジンだとは思えない程だった。
さらに注目したいのが、Lタイプに設定されたマニュアル感覚でシフトチェンジが可能な7スピードモード。ステアリング裏のパドル操作でシフトアップ/ダウンを行なうものだが、その変速レスポンスは非常に良く、ワゴンであることを忘れる程のスポーティ気分にさせられる。
サスペンションは、フロントにストラット式。リアにH型トーションビーム式という、コンパクトカーではオーソドックスなタイプを採用しているものの、一味違った走りを見せつける。通常ワゴンは、荷物を積むことを考えリアが硬くなる傾向なのだが、そうしたフィーリングは一切ない。街中ではフロント/リア共に、サスペンションがギャップを吸収し乗り心地はハイレベルなもの。とくに後席は、重心位置に近いせいか、揺れも少なく快適といえる。そして好印象だったのが、取り回しの良さ。最小回転半径が小さく、狭いところやUターンが苦にならないのだ。
広い道に場所を移し、走行ペースを上げてスポーティに走ってみると、ここでも予想以上の性能を確認できた。使い勝手や快適性を求めて採用した、スカイルーフや大開口のリアハッチ、そしてロングホイールベース、どれもボディ剛性が落ちる要因となるもの。多少は剛性ダウンしていると予想していたのだが、どこからもそのフィーリングは伝わってこないのだ。若干フロントがロールするものの、リアの安定性が高く安心して走れる。ステアリングからも、グリップ感がリニアに伝わってくるため、グリップ限界はつかみ易い。さらにホイールベースを伸ばしたことによって、コーナリング中にギャップを超えても、揺れが少なく安定しているのが好印象だった。
そして、ホンダのエアウェイブに対する意気込みを感じたのが、安全への取り組み方。高級車で安全性が高いのは当然のことだが、ボディサイズの小さいコンパクトカーだからこそ、安全には余計に気を使いたい。そんな声が聞こえてくるような装備の大盛りである。さすがに高価な横滑り防止装置が未設定なことや、サイドエアバックがOP設定になっているあたりは、販売コストとの戦いが垣間見られるが、衝突時の衝撃を分散させるボディ構造を初めとして、歩行者衝突時の傷害軽減など、安全への意識は非常に高い。
また、安全性だけでなく燃費や低排出ガスに代表される環境問題への取り組みにも、力を入れているのが好印象。販売台数の多いコンパクトカーだからこそ、高級車以上に力を入れてもらいたい部分だと思う。参考までにエアウェイブでの例を挙げれば、リサイクル可能率90%以上の達成や、鉛使用量を大幅に低減したことなどが上げられる。
このように、走りの良さや実用性の高さ、高い快適性など、より多くのニーズに応えられるような作り込みがされているエアウェイブ。だが、より多くの方に受け入れられるようにといっても、ひとつだけ個人の趣味趣向が大きく左右する要素がある。それがデザイン。メーカーOPとして「アクティブパッケージ」を、ディーラーOPとして「エアロパッケージ」を設定。より自分らしさの表現として、自分好みのクルマにするための手法のひとつとして活用してもらいたいが、その内容を紹介しておこう。
アクティブパッケージは、撥水表皮(シート)を始め、泥などの汚れがふき取りやすく、滑りにくい素材のプレイングボード付きラゲッジスペースや、専用色アルミホイール、サテン調メッキフロントグリルモールディングなど、実用性を自己主張できる外観が特徴。そしてエアロパッケージは、フロントグリル/フロント/リア/サイド各ロアスカート合計4点のエアロパーツのパッケージ。
値段はアクティブが9万1,350円、エアロは12万4,950円の設定となっている。
個人的な意見をいえば、ノーマル形状からしてエアロが付いたような力強いスタイリングだから、コストパフォーマンスを考えると、実用性を併せもったアクティブがお勧め。2年くらい乗った後、外観に変化を付けたくなったとき、エアロパッケージにチェンジするのがいいと思う。
(レポート・五味康隆) |