「FF使い」に聞く
「CIVIC TCR」&「シビック TYPE R」Vol.2
HondaのFFが目指すもの
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「こうしてシビックの話をしてきたわけですけど、HondaのFF車は近年こういう方向になってきていますよね。実は最初に『四輪ビタビタ思い通り』感を覚えたのは、撮影で『グレイス』に乗ったときのことで」
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「おっ、わかっていただけましたか!そのあたりの車種の車両運動性能開発にも関わらせてもらっていたんですよ」
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「グレイスの撮影のために行った鷹栖のテストコースで走らせてみて、これはめちゃくちゃいいな!と思って。ドライバーを務めた清水和夫さんも実際に絶賛していましたし」

塩谷さんが「四輪ビタビタ思い通り」感を覚えたグレイス(写真は2014年モデル)。隠れたハンドリングマシンとして、走り好きの方からの評判も上々。
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「そのグレイスやシャトル、もう少し前だとN-ONEなんかも含めて、シビックと同じ考え方なんです。きちんとリアを接地させて荷重を受け止めるから、対角のフロントも力を出せる。そのためにどんなハードを使うか、どんなセットアップにするかというところにとても時間をかけましたね」
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「本当にFF車を『ドライバーがコントロール下に置いている』というのは、そういうことなのだと思うんですよ。もちろん、ハードブレーキングでリアを流してラインに乗せるというのもコントロールのひとつの形ではあります。でも、ドライバーのステアリングの操作と完全に同期していない時点で『タイヤまかせ』『クルマまかせ』の状況が生まれてしまっていますよね」
ダートラの「シティ」から「シビック TYPE R」まで
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「柿沼さんがこの方向性を見いだすまでの経緯はどんなものなんですか?」
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「僕のFF車の原点は、Hondaに入社後まもなく買ったダートラ仕様のシティなんですよ」

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「GA2というやつですね。あれで運転を覚えた人が、僕らの世代にはたくさんいましたね!フォーミュラカーみたいに反応がよくて」
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「あれのリアサスペンションはトーションビームとパナールロッドの配置によって、ロールしても横力を受けてもトーが外側を向くような超アグレッシブな設定だったんですよ。ダートラの高速コーナーで気持ちが負けて、ちょっと右足裏の力がゆるむと途端にフワーッとリアが流れ出しちゃう、みたいな(笑)」

ダートトライアル競技でGA2シティを駆る若き日の柿沼。コースは丸和オートランド那須。
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「車重が軽かったからできたのでしょうが、確かに全てがコントロール下にあるという考え方とは違いますね」
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「だからその後は、FF車はいかにリアをきちんと使うか、ということが僕のテーマのひとつになっていきました。『ロゴ』の開発を起点として、2001年のシビックTYPE Rやその後のFF TYPE Rシリーズ、そして先ほど話にでたシャトルやグレイスなどもそうです。その到達点がこのシビック TYPE Rですし、クルマのことを100%信頼しながら思い通りのラインを描けるFF車をずっと目指していきたいんですよね」

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「僕らも、そんな柿沼さんたちのこれまでのチャレンジと思想を受け継いだセットで勝ちを狙っていきたいと思っています。これまでの『S耐』などより調整できる部分が多くて勉強中ですが、あともうちょっとだけ、フロントが決まっていくと、良い感じの結果が出ると思うんですよね。僕も『ビタビタ思い通り』なレースカーを目指していきます!」

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「全力で応援しています! 僕も、FF使いの塩谷さんから、我々が作ったものについてお墨付きをもらえてよかったです(笑)」
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「FFに限らずクルマは何でも大好きなので、Hondaからいい感じのFR車が出たとしても、こうして呼んでいただいていいですよ(笑)。走ることが大好きな僕らを楽しませてくれるクルマをこれからもよろしくお願いします!」
