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最速の軽自動車エンジン搭載車!「S-Dream」乗るとどうなの?どうやって走るの?
ドライバーに聞いてみた

クルマ好きなら誰しも心を奪われる「世界最速」の甘美な響き。「世界最速のクルマ」って何なんでしょうか。それを決めるのが、ボンネビルソルトフラッツで行われる「ボンネビルスピードウィーク」。
2016年、Hondaは20代〜30代の若手エンジニアで編成されたプロジェクトチームにより、軽自動車 S660のエンジンを搭載したレーシングカー「S-Dream」でクラス最高速記録を達成しました(たぶん間違いなく「最速の軽自動車エンジン搭載車」ですね)。さて、このマシン、乗るとどんな感じなの?どうやって走るの?ドライバーを担当した宮城光さんに話を聞いてみることにしました。

これがエンジン。S660のチューンアップの参考になるかも……?
とも思いましたが、シリンダーヘッドとヘッドカバー以外はすべて専用設計だそうです。あしからず……。

答える人

宮城 光(みやぎ ひかる)
元Hondaワークスライダーで、二輪・四輪に精通する「ドライダー」。現在はMotoGP解説者、ホンダコレクションホールの動態確認テスト、バイク雑誌のスーパーバイザーなど、幅広い分野で活躍中。

時速450kmにチャレンジ…って直線番長なの?

──8キロの直線を走って最高速にチャレンジする。まさに「究極の直線番長」を決めるみたいなレースですよね。

行くまではそう思っていたけれど、「ただ踏んでいればいい」というレースでは、まったくなかったですね。気温、湿度、路面の状況、風向きに合わせて、全部ドライバーがコントロールする。何故かというと、「加速すること」を競うレースではないから。

このレースは、広大な塩湖の上に設定された5マイル(約8km)程度の直線が舞台になっています。多くの参加者に開かれた「ボンネビルスピードウィーク」と、招待チームのみで争われる「FIAランド・スピード・レコード」でルールは違いますが、共通するのは、長い直線の中ほどに「計測区間」が設けられているということ。

極端な言い方をすれば、「ここだけ頑張る」ということでもいいんです。でも、その前に最高速に達してしまったらエンジンブローするかもしれないし、計測区間に入っているのにまだダラダラとエンジンが回っているだけの状態だったら記録に繋がりません。

──ドラッグレースみたいなものを想像していましたが、そういうわけではないんですね。

直線で競う、途方もないスピードまで達するという点では共通しているかもしれません。でもあちらは5秒か6秒の勝負。こちらは2分とか3分とか、もっとスパンが長い。だから似て非なるものだと言っていいですね。
進路も選ばないといけないから、ハンドリングも非常に重要になるんです。

コースは直線だけど曲がる?

──曲がるんですか。

回転半径100mだけど、曲がります。まず、路面の話をしましょうか。

──お願いします。

レースが行われる「ボンネビルソルトフラッツ」は、昔は湖の底だった場所が今は干上がって、一面塩の大地になっているんです。いまの姿になって1万年ほどだと言われていますね。

ソルト「フラッツ」なんて名前だし、なんとなくスケートリンクみたいになめらかな路面を想像するでしょう。ところがそうではないんです。路面を構成する塩は湿気の影響を受けやすく、乾いた部分はサラサラになって飛ばされる一方、湿気を吸った部分は重くなって固まってしまいます。これを繰り返すことで、むしろスキー場の駐車場のようにうねったり、凹凸があったりするんですね。

──なるほど。

その上、全長12メートル、車重3.8トン、最高出力2500馬力のエンジンを前後2機掛けして5000馬力……というようなヘビー級のマシンが、鉄の車輪で塩を巻き上げながら走っていたりします。
そんなマシンが走ったあとは路面も轍だらけになるし、巻き上げられた塩はフワフワと宙を舞って、別の場所に降り積もったりするから、水たまりならぬ「塩だまり」みたいなものがそこかしこにあるんです。
我々のマシンは「660ccのエンジンでどこまで行けるか」というのがコンセプト。限られたパワーを最大限に引き出すためには、そういった場所を避けて、できるだけ平らで、硬く締まった路面を選んで走る必要があるわけです。

S-Dreamがエントリーしたのは「自動車」「レシプロのターボエンジン」「排気量500cc〜750cc」というカテゴリー。他にも車両の形態やエンジンなどによってクラスが細分化されていますが、車両規則はそれほど厳しくはなく、安全性さえ担保すれば、車重量も大きさも、作り手の創造性を存分に発揮する余地が残されています。

まったく前例のないところに挑んだから、他のマシンがどうなっているのかは全くわかりませんが、コクピットはHondaらしい独創性にあふれてますよ。まあ、乗り込んでみましょうか。

おもむろにS-Dreamのキャノピーを開け、コクピットへ乗り込む宮城さん。ドライビングポジションは完全に「寝そべっている」と言っていいものになります。「これに乗ったあとだと、F1マシンの乗車姿勢でさえ過激に思えない」とは宮城さん談。

左右にスキーのストックみたいなのが生えてるでしょう。これがハンドル。Hondaではこれを「ダブルコラム式ステアリング」と呼んでいますね。右を前に倒すと左に曲がり、左を前に倒すと右に曲がります。

メーターには「415kph 8900rpm Rev Limit9400」と書かれた紙テープ。とにかく走ることに集中しなくてはならないので、「なにをしなくてはいけないか」はこうして書いておくのが一番なのだとか。

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