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N-ONE RS 6MT 開発の思い[ハンドリング編]
2021.3.30
N-ONE RS 6MTモデルへのこだわりについて、開発責任者の宮本とダイナミクス担当の綱川が語るこのコーナー。今回は、ハンドリングへのこだわりに加え、MTモデルを設定した思いについて伺いたいと思います。また、開発者のコメントにあわせて、Hondaレーシングドライバーの山本 尚貴選手、伊沢 拓也選手にツインリンクもてぎの北ショートコースでインプレッションを行ってもらいました。そちらの映像「ハンドリング編」も各リンクからご覧ください。
答える人
本田技研工業株式会社
N-ONE 開発責任者 宮本 渉
本田技研工業株式会社
N-ONEダイナミクス担当 綱川 聡
ハンドリングへのこだわり
──ハンドリングへのこだわりについてお教えください。
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Nシリーズの共通プラットフォームとして、先代から進化した項目は4点あります。まずは、ダンパーに対してスプリングをオフセットして装着することで、ダンパーにかかる横力を低減させています。N-ONEは車重が軽いため、サスペンションに大きな荷重が掛かりにくくダンパーが動きにくいのですが、スプリングのオフセットによってスムーズに動くようになります。ダンパーが動きやすくなるので乗り心地がよくなりますし、とても素直なハンドリングに寄与してくれます。
また、スタビライザーを前後に採用してロール量を抑え、リアのコンプライアンスブッシュを大径化することで振動の吸収性を向上させ、安定したコーナリング姿勢と乗り心地を高いレベルで両立させています。このスタビライザーは、NシリーズのなかでN-ONEが特にこだわったところです。 北ショートコースのタイトなコーナーを、レーシングドライバーの山本選手が攻め込んでもご覧の通りわずかなロール量。
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また、コーナーを曲がるときに前輪の内側だけちょんとつまむように軽くブレーキをかけるアジャイルハンドリングアシストを採用しています。これは日常で交差点を曲がるときにも効きますので、スッと曲がる感覚をみなさんに体感いただけると思います。滑りやすい路面でより体感しやすいのですが、アンダーステアを抑えてくれるので、自然なフィーリングで曲がることができます。
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あと、電動パワーステアリングの制御にはこだわりました。これまでのモデルでは、ステアリングの舵角を推定しながらアシストしていましたが、今回はステアリングの舵角を直接センシングして、実態に基づいて制御する方式に進化させたのです。これによって、遅れやズレが生じにくい高精度のアシストを行います。実際に乗って操作するとあきらかに先代との違いがはっきりとわかります。ステアリングのフィールがすごくしっとりするんです。とても自然なアシストで、自分の意思を感じとってくれるような印象です。この進化は、スポーティーな走行というよりも、日常の使い勝手の良さの進化で、N-ONEのコンセプトでもある長く愛されるクルマになるための進化といえます。
心地よいフィールでスッと操作でき、ハンドリングを楽しめる。
ドライビングを楽しめる身近なHondaスポーツ
──今回、N-ONEにMTモデルを設定されたのはなぜですか?
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実はもともとN-ONEというクルマがこの世に誕生した時からMTへの要望がありました。多くのお客様から「このクルマにMTがあったら楽しいよね」という声が多く寄せられていました。オートマチック限定の免許を取る方が多いなかで、マニュアルトランスミッションを要望されるのはかなり特殊なケースであり、N-ONEという存在が楽しさの幅を広く求められるような個性ある存在であることを物語っています。
そうしたなかで、Nシリーズが2代目へと進化し、N-VANという商用モデルでMTが搭載されました。また、S 660という6MTを搭載したミッドシップスポーツカーも誕生しました。MTを搭載しやすい環境が整ったわけです。世の中から待望されていて、期待されているのですから、N-ONEにもMTを搭載すべき、いや搭載したいという思いがチームに芽生えたのは自然な流れでした。ギアレシオやシンクロナイザーなどの機構はスポーツカーであるS660を用い、トランスミッションケースはN-VANを用いて、N-ONEのパッケージングに収め、インパネシフトを独自開発してMTモデルをつくり上げました。 ヘルメットを付け、N-ONE RS 6MTで北ショートコースのスポーツドライビングを楽しむ山本選手。
──どのような走りをイメージして開発されたのですか?
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Hondaにスポーツカーがあるといっても、NSXとシビックTYPE Rだけだとなかなか手が届かないですよね。そう考えた時に、NSX、シビック TYPE R、またS660だとどうしても方向性としてはガチなものになってしまいます。ですので、Hondaスポーツを多くの人に気軽に楽しんでもらえるクルマとしてN-ONEにMTを搭載することにしました。
シビック TYPE Rで登場した伊沢選手も、N-ONEの走りを楽しんだ。
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N-ONEにMTを搭載するなかで、どういう形で載せるのがいいのかという議論はありました。たとえば全グレードにMTを搭載するという考え方もできます。しかし、MTという1つのカテゴリーをN-ONEに結びつけるとき、やはり走りをもっとも表現しやすいトップグレードに載せるのが一番いいという結論に達し、RSに搭載することにしたんです。RSの意味は「ロードセーリング」で、その言葉からも、スポーツのなかでも滑らかに走ることに喜びを見出せるような方向で開発をしました。
TYPE Rのように、他のグレードに対してサスペンションやブレーキなどすべて専用開発で、エンジンも特別なチューニングを施すような方向ではなく、RSというスポーティーなグレードとしてMTを載せ、気持ちよく操る喜びを味わえるようなクルマに仕上げていきました。 ──小さなサーキットなどでも楽しい?
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目を三角にして走るのではなく、気持ちよく走ると楽しいと思います。ロードセーリングですから、日常の街なかの道を走っても楽しく、ワインディングを走るともっとも気持ちよく走ることができるセッティングです。身近なフィールドでHondaスポーツを感じていただければと考えています。
文中・映像内にある「ツインリンクもてぎ」は当時の名称。現在は「モビリティリゾートもてぎ」です。