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VTECとHondaエンジンの30年Vol.1「VTECって何?」

いろいろなVTEC

■ DOHC VTEC

──これは王道の元祖VTECですね。

松持

「VTECといえばこれ」という声も多いです。低回転では扱いやすく、中回転からドカンとパワーが出るのが「Hondaらしい」とご好評を頂いてきました。

──巷では『二段ロケット』なんて呼ばれていましたね。

松持

歴代TYPE R、S2000など、リッター100PSを超える究極のスポーツエンジンの挑戦。常にパワーアップを目指してきていましたが、背景にはVTECのロッカーアームの軽量化やフリクション低減といった技術進化があったんです。

左が「スリッパータイプ」のロッカーアーム。右が「ローラーベアリング」タイプのロッカーアーム。

──重たいものを高回転まで回すのは大変だし、フリクションが大きければ回転も重たくなりますもんね。

松持

そういうことです。たとえば、レッドゾーンが9,000rpmからという驚異的な性能を達成したS2000では、カムシャフトとロッカーアームが擦れ合う部分をスリッパ―タイプからローラーベアリングに変更することにより、潤滑系のフリクションを低減させています。進化という点では、2000年にはVTECに加えて吸気バルブの開閉タイミングを連続的に可変させる「VTC」を採用した「i-VTEC」もデビューさせ、より幅広い状況で最適なエンジン性能を発揮できるようにしています。

──ふむふむ。

■ VTEC TURBO

──これは今やおなじみですね!

松持

ターボエンジンにもVTECを使います。シビック TYPE Rに搭載している2.0L VTEC TURBOエンジンは、排気バルブにVTECを採用しています。

──吸気側にはついていないんですよね。

松持

ターボなので吸気バルブのリフト量に頼らなくても大量の空気をシリンダー内に押し込めますが、排気バルブから「しっかり掃気」させてポンピングロスやノッキングを低減させています。深呼吸と同じです。息を全部吐ききらないと、いっぱい吸えないですよね。

──たしかに。

松持

ターボチャージャー、排気VTEC、デュアルVTC、電動ウェストゲート、ドライブバイワイヤなど吸排気の緻密なコントロールにより、燃焼効率が高まるので1サイズ小さくて軽い、高レスポンスのターボチャージャーを使えるようになりました。歴代TYPE Rのように気持ちよく回り、史上最強にパワフル&ハイレスポンスな現行シビック TYPE Rの乗り味は、「VTEC」無くしては実現できなかったと思います。

松持

ちなみに、さきほどご紹介したロッカーアームの素材はより軽量なアルミです。鉄からアルミに素材を変えることでバルブスプリングにかかる荷重を大幅に低減しています。余分なウエイトとフリクションをなくすための挑戦は、ずっと続いているんですよね。その歴史はVol.4で明らかになります……。

──タメますねえ……。

代表モデル 89年
INTEGRA
1.6L DOHC VTEC
99年
S2000
2.0L DOHC VTEC
07年
CIVIC TYPE R
2.0L DOHC i-VTEC
17年
CIVIC TYPE R
2.0L VTEC TURBO
エンジン型式 B16A F20C K20A K20C
最高出力・最大トルク 118kW(160PS)
152N・m(15.5kgm)
*リッター100PS
184kW(250PS)
218N・m(22.2kgm)
*リッター125PS
165kW(225PS)
215N・m(21.9kgm)
*リッター112.5PS
235kW(320PS)
400N・m(40.8kgm)
*リッター160PS
ロッカーアーム材質 鉄製(スリッパータイプ) 鉄製(ローラータイプ) アルミ製(ローラータイプ)
給油方法 シャワーパイプ給油 飛沫給油
89年 INTEGRA
1.6L DOHC VTEC
B16A 118kW(160PS)
152N・m(15.5kgm)
*リッター100PS
鉄製(スリッパータイプ) シャワーパイプ給油
99年 S2000
2.0L DOHC VTEC
F20C 184kW(250PS)
218N・m(22.2kgm)
*リッター125PS
鉄製(ローラータイプ) 飛沫給油
07年 CIVIC TYPE R
2.0L DOHC i-VTEC
K20A 165kW(225PS)
215N・m(21.9kgm)
*リッター112.5PS
鉄製(ローラータイプ) 飛沫給油
17年 CIVIC TYPE R
2.0L VTEC TURBO
K20C 235kW(320PS)
400N・m(40.8kgm)
*リッター160PS
アルミ製(ローラータイプ) 飛沫給油

■ VCM

松持

お次は、V6エンジンに搭載されている気筒休止システム「VCM」です。高速道路を一定速で走るときなど、パワーをあまり必要としないシーンでは、6気筒のうち3気筒を止めて、燃費性能を向上させます。

──これもVTECなんですか?

松持

バルブを動かしたり止めたりするために油圧で動くピンを使う、というところがVTECと共通しています。仕組みは動画をご覧いただいて。

──複雑ですね……。

松持

SOHCの狭いスペースの中でこの機構を実現させるために、Y字型のロッカーアームを使いました。ロッカーアームのシャフトの中にはいくつも油圧経路が設けられていて、VTEC機構の技術の粋を集めたようなものになっています。

2008モデル INSPIRE(J35A型)の油路

■ VTEC+VCM

松持

さらに、このVCMとVTECを合体させたのがこちら。

──これはまた美しい……。

松持

LEGENDに搭載されていますが、VTECによる走りとVCMによる低燃費を高次元に両立させています。いかにもHondaっぽい機構です。

──どんなふうに動くんでしょう?

松持

V6 SOHCエンジンの吸気側のVTEC、バルブを休止させるVCMを搭載し、ハイブリッドシステムも組み合わせています。難易度MAXですね。

松持

ローリフト、ハイリフト、バルブ休止の3ステージ切替えを可能にするために、ロッカーシャフトの中にある油圧経路を2つの電子制御バルブで制御します。開発初期の油圧経路レイアウトに携わりましたが、「VCM」よりもさらに複雑で、数え切れない程書き直しました。めまいがするほど大変でしたねえ……。

■ 日の目を見なかったVTEC

──日の目を見なかったVTECってあるのですか?

松持

話して良いんですかね……?

──この際行っちゃいましょう!

松持

ではこっそり……。

松持

これ、500PS V10エンジン用に開発していたVTEC+VCMのDOHC構造です。
片バンクはVTEC、もう片バンクはさきほどご紹介したVTEC+VCMになっています。
レッドゾーンとして設定したのは8,500rpm。鉄製の5ロッカーアームをブンブン回すのに大変苦労しました。異次元の加速と時代の求める環境を両立させましたが、さまざまな状況を鑑みて開発中止になってしまったんですね……。

──これって、あのクルマの……?

松持

さあ、なんのことでしょう……。

──走る姿を見てみたかったですね……。

松持

その気持ちは私たちも同じですが、このエンジンを通じて軽量化の大切さを身に染みて体験しましたし、その結果がSOHC-VTEC / VCMをはじめ、様々なエンジンに活きているのは確かですね。
まあ、そういうこともありますよ!今回はVTECの30年分の進化をご紹介しましたが、VTECの歴史はHondaエンジンの歴史と言っても過言ではありません。引き続き技術の進化を続けて、皆さんに喜びを提供します!

──楽しみにしてます!

次回は、初代VTEC開発に関わり、現在は将来のエンジン戦略に携わっている開発責任者に突撃取材を敢行します!どうぞお楽しみに。

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