MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年10月号
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桐原峰雄さん・尚美さんご夫妻。峰雄さんの愛車はCB1300。尚美さんは大型二輪免許取得後、SL230からホーネット600に乗り換えた
自らの能力と行動特性を知る

2005年から道路交通法の改正により、二輪の高速道路における二人乗り規正の見直し、またAT免許が創設される等、ライダーの交通環境が変わります。ここでは高速道路二人乗りを中心に、安全で快適な走り方、四輪との関係、高速道路でのマナーなどについて識者やプロドライバーにうかがうとともに、二人乗りに期待を寄せるライダーの声、安全を伝える二輪販売店の声などを紹介します。

 映像カメラマンの桐原峰雄さん(39)と妻の尚美さん(37)は通勤の二人乗りがきっかけで、二人でバイクで出かけるようになり、さらに峰雄さんは自分が大型二輪免許を取る際に、尚美さんにもいっしょに普通二輪免許をすすめて取らせたそうです。
 二人で高速道路を走るときは、尚美さんが峰雄さんの斜め後ろを走ります。SL230の頃はスピードについていけず、2台の間にクルマが入ってくることがありました。また、左車線の左寄りをずっと走っていると、追い越し車線に出ないで、わざとすぐ脇をぎりぎりで抜いていくクルマがいるから、ベテランの峰雄さんも怖い思いをするそうです。
 高速道路における二輪・四輪のマナーにはまだ問題も多いとはいえ、二人乗り規制が見直されたら、「高速道路を利用して、焼津漁港まで娘とタンデム(二人乗り)でマグロを買いに行きたい」と峰雄さんは言います。
 楽しみも大きいが、峰雄さんには不安もあるそうです。「一般道でも長距離だと後ろは眠くなる。天候にも左右されると思う。晴れていれば一般道路より高速は安全だろうが、風が強かったり、雨だったりすると大変。また、装備もいい加減なライダーが目につくし、二人乗りで大きな事故が起きた時、二人乗り禁止になるのが怖い。事故を起こしたときのダメージが高速道路では大きいということを、ライダーはよく認識するべきだと思います」。峰雄さんは、高速道路の二人乗りの定着にはライダーの責任とマナーの向上が欠かせないと考えています。
 高速道路の二人乗り規制の見直しがされることには、二輪の世界が広がる、新たな楽しさが生まれるなど、二人乗りに関心のあるライダーのほとんどが賛同していると思われます。だが、すぐにでも乗りたいという積極派と、高速道路は「怖い」ので様子をみたいという慎重派に分かれるようです。
 二輪免許歴4年の岡田智彰さん(26)と二輪運転経験なしの徳留陽子さん(24)のタンデム歴は2年半になり、CB400からビッグスクーターのフォルツァに乗り換えたばかりです。ただ、二人乗りはもっぱら街中で、遠出したことはないそうです。「遠出のときはクルマですが、高速道路で二人乗りができないことが影響していたのかもしれません。しかし、可能になっても慣れていないので、すぐには高速道路を二人乗りで走らないかもしれない」と、慎重です。

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岡田智彰さん・徳留陽子さんカップル。二人乗りの時はより余裕を持った運転を心がけているという岡田さん

 高速道路のスピードの怖さについて、ホンダドリーム荻窪店店長の尾島薫さんは、「一般道路でタンデムに慣れているライダーのみなさんは、それほど怖いとは思わないのではないでしょうか」と見ています。ただ、「みんながスピードを出して同じ方向に走っているなか、急な車線変更とか、後ろの人が勝手に動くなどすると高速道路ではかなり危険になると思います。また、トンネルを出た時の横風など、一人で乗っていてもかなりふらつくことがあるので、後ろに乗っていると、風でびっくりする、怖いと思うこともあるでしょうね」と指摘します。
 大型トラックのプロドライバーは、高速道路で二人乗り規制の見直しがされることをどのように見ているのでしょうか。ドライバー歴約30年の日本梱包運輸倉庫(株)の与芝建昭さんは、「高速道路の二人乗りはルールを守れば危なくないし、気にならない」といいます。同社のトラックは制限速度80km/hを遵守しているので、高速道路ではゆっくり走るそうです。「ですから前方には、ほとんどクルマはいません。ほとんどが後ろから来るので、注意はどうしてもミラーが主体です。バイクは小さいので、ミラーに映る姿も小さい。距離感が違うし、目に飛び込むのも遅くなり、反応も遅くなってしまうので、スピードをあげジグザグに来られると、見えないから怖い。これは一般道でも同じこと。事故になった時、タンデムしていたらけが人が一人から二人に増えることになる。そこを理解してほしいですね」。与芝さんは、二人乗りにトラックの運転手にも目につくようにと、明るく派手な服装をすすめています。
 交通教育センターレインボー埼玉のHMS(Honda Motorcyclist School)のセーフティコースで、二輪車の二人乗りの安全運転指導を行っているインストラクターの野口富士雄さんは、「高速道路での運転は一般道路での運転の延長線にあります。一般道路で可能な二人乗りを高速道路で行ったからといって、直ちに危険ということにはならない」といいます。「二人乗りが可能になることによって、二輪の利便性がさらに高まりますから、高速道路での二人乗りは増えると思います」と見ています。
 二人乗り規制が見直され、高速道路を走行するバイクの数が増えることによって、二輪と四輪の新たな関係が生まれると、野口さんは考えています。「もし、バイクに乗った経験がないドライバーが二人乗りのバイクによってヒヤッとさせられたら、バイクに対する印象はものすごく悪くなるのではないでしょうか。ライダーの多くは普通自動車免許をお持ちです。ライダーはドライバーの立場になった走行ができるはずです。ライダーがドライバーを含む周囲に対して注意をはらった運転について考え、ライダー自身の意識を変えていく契機になればいい」と期待しています。

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