MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年5月号
opinion
山野哲也
ジムカーナ&レーシングドライバー


1965年、東京生まれ。88年全日本学生ジムカーナチャンピオン。92年全日本ジムカーナ選手権チャンピオン。94年から2001年までJAF全日本ジムカーナ選手権8年連続チャンピオン。01年全日本GT選手権300クラスドライバーズランキング2位。03年JAF全日本ジムカーナN-3クラスS2000で10回目のチャンピオン獲得。04年JAF全日本ジムカーナ選手権NSXで参戦中、全日本GT選手権M-TECよりNSXで参戦中。2001年からHondaドライビング・スクール「山野哲也スポーツ&セーフティ」の特別講師を務める。
クルマのもつ性能をフルに活用する運転が楽しさと安全に通じる

速さは、つきつめると安全運転

Hondaでは一般のドライバーを対象にHondaドライビング・スクールを全国の交通教育センターで展開。山野さんはこのスクールの中にあるコースの1つ、「山野哲也スポーツ&セーフティ」の講師を務めています。このコースは、山野さんがレースで培ったドライビングテクニックとセーフティマインドを、実体験を通じて受講者に身につけてもらうことを目的に、交通教育センターレインボー埼玉と鈴鹿サーキット交通教育センターで行なわれてきました。今年からは交通教育センターレインボー熊本でも開催されます。
山野さんの基本的な考え方は、レースも一般の運転もスタートからゴールまでどんな状況になろうとも「安全に走る」という点では同じだということ。「レーシングドライバーは速いだけではだめです。速さは、つきつめると安全運転なのです。途中でコースアウトやクラッシュをしてしまったら、レースはおしまい。雨が降ろうが雪が降ろうが、クルマの調子が悪くなろうが、とにかくゴールまでクルマを無事に運転していくことがレーシングドライバーの使命です。この点は一般のドライバーも変わりません。クルマを楽しみながらゴールまでたどり着く、そのために何をしたらいいのかという観点でスクールに臨んでいます」。
山野さんはスクールの受講者に、「アクセルをなぜ踏めるのか」と聞くことがあると言います。聞かれた人は返答につまるそうです。答えは「止まれる自信があるから」。「ブレーキがきかない自転車を坂の上からこいでください」といわれたら、誰もこがないでしょう。クルマも同じ、走行するためには、安全に停止するためにブレーキが十分にきく状態にしておくことと、ブレーキを十分に働かせる運転技能が必要です。しかし、急ブレーキをきちんと踏めなかったために、事故になってしまうこともあるのではないかと、山野さんは考えています。「ABS(アンチロックブレーキシステム)が装備されていても活用できないなど、クルマがもっている安全機能をフルに活用している人は意外に少ないと思います。物理的に決まっているクルマという機械の性能を引き出すのは人間。その人間は感情的に動きますから、自分の中でここまでしかできない、もしくはできないだろうという線を引きがちです。その線を引き上げて、クルマの性能をフル活用できる能力を身につけることが、安全な運転に通じるのです」。

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