MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年4月号
navi
企業と連携した安全運転普及活動

これまで、企業や学校など、さまざまな場で、冊子、映像などの手法を使いKYT(危険予測トレーニング)は行なわれてきました。Hondaでは、交通事故防止をめざしてお取引先の企業でKYT講習ができるKYTトレーナーの養成を社内的に展開しています。いま、「危険予測」は交通安全教育の現場で、どのように考えられ、活かされているのか。企業の現場を通してKYTの現在を探っていきます。

HondaのKYTについてはこちらに紹介があります


交通事故防止に貢献するKYT講習会
3月9日夜6時。タイムレコーダーをはじめタイム情報システム事業を展開するアマノ(株)名古屋支店の会議室に集まった日々、クルマを運転する機会のある36名の社員を前に、本田技研工業(株)中部法人営業所の松野進治さんがKYT講習会を始めました。松野さんは、この講習会の約1ヵ月前の2月6日に鈴鹿サーキット交通教育センターで専門の講師からKYTトレーナー養成研修を受けました。パワーポイントに映し出された交通場面のイラストを見ながら、「先行右折車がいるときに」のケースの問題を出します。
「あなたは先行車に続いて交差点で右折待ちをしています。先行車が右折を始めたので、続いて右折しようとします。どのようなことに注意しますか?」

 


 Q1:どのような危険がありますか?
  (1) 先行車が右折を開始したのは対向車が切れたからで、右折に危険はない
  (2) 先行車で見えにくいが、対向車がいて直進してきそうだ
  (3) 先行車の死角で見えない部分にも対向車がいる可能性がある
 Q2:どのような運転をしますか?
  (1) 先行車に続き、遅れないようにする。
  (2) 先行車の前方に対向車が見えなければ右折する
  (3) 先行車が右折し、視界が開けてから対向車がいるかいないかを確かめる

「はい、Q1は(1)が不正解で、(2)と(3)が正解、Q2は(1)と(2)が不正解で、(3)が正解です」と松野さん。この後、例題が次々とパワーポイントで映しだされ、全員が手元の解答用紙に答えを書き込んでいきます。松野さんは1つの解答ごとにコメントを入れながら解説していきました。
講習会を企画したアマノ(株)名古屋支店長の村瀬守さんは「このような講習は社員も免許を取得した時以来でしょう。頭でわかっていても実際の業務の中で、忙しさにかまけて安全に対する配慮ができていない。これから年に1度はこのような講習会を実施していきたい。そこで学んだことを自分自身のこととしてとらえていく意識を社員に持ってもらえれば、事故は減っていくと思います」とKYT講習に期待を寄せています。

KYTをきっかけに企業の「交通安全力」を高める
本田技研工業(株)法人営業部ではお取引先の企業の事故防止に向けて、KYT講習会を展開することとし、全従業員がKYTトレーナー養成研修を受け、この3月から松野さんのように講師として、お取引先企業の社員に「交通状況を鋭く読む─危険予測トレーニング」を教材とした講習会の実施に取り組んでいる。この活動を推進しているのが、昨年12月に発足した「法人営業部安全運転推進プロジェクトチーム」である。プロジェクトリーダーの法人営業部・市川雅敏さんによると、プロジェクトの目的は企業との取引の中で現場と接する営業スタッフが企業のメリットにもなる安全運転についての情報やノウハウを提供することで、安全運転普及活動に共感していただける企業を増やしていくことという。「Hondaとして組織的に取り組んで展開したら、企業の事故防止のお役に立つのではないかと考えたわけです。KYT講習にしたのは忙しい企業の方々には短い時間ででき、誰もが分かりやすい参加体験型の実践教育になっているからです」。
KYTトレーナーを指導し、企業に対してKYTおよびHondaの安全運転活動の概要を説明できるチーフKYTトレーナー養成研修を3月4日、5日に鈴鹿サーキット交通教育センターで行ないました。内容は、KYTの話の組み立て方、さらにKYTの問題をチーフKYTトレーナー自身に作ってもらい、各自のKYTへ導入する話から発表してもらうなど。研修のカリキュラムを作った鈴鹿サーキット交通教育センター交通教育課長の新家哲男さんはKYTについて、「交通は1人で運転して状況を判断していかなければいけません。その判断のために先々を読む訓練、危険な運転とは何かを考える判断基準を養うことを目的としています」と言います。また、新家さんはKYTの使い方にも注意を促しています。「KYTのトレーニング試験をして100点を取ったとします。しかし、事故が起きた。それは現実に即した危険予測ができていない可能性があるということです。現実の交通状況では、急ぎ、焦り、イライラなどで自分の冷静な判断能力は100%発揮できないことが多い。そのためにも、危険予測のベースとなる危険感受性を養っておくことが大事です。危険回避能力はそのベースがあって生まれます」。KYTをきっかけに各企業がそれぞれの特性や状況に合わせた自前の「交通安全力」を高めていくことを、新家さんは期待しています。

鈴鹿サーキット交通教育センター・新家哲男さんが講師を務めたチーフKYTトレーナー養成研修

SJ5月号ではこの他にも、シャープ水戸ビル、沖電気工業(株)四国支社、(株)四電工坂出営業所で行なわれた講習会も紹介しています。

この記事へのご意見・ご感想は下記のメールアドレスへ
sj-mail@ast-creative.co.jp

 
  安全運転普及活動コンテンツINDEX