MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年2月号
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人・クルマ・道路をつなぐシミュレーター

出席者: 太田博雄 東北工業大学教授
川村 彰 北見工業大学助教授
白石修士 株式会社本田技術研究所栃木研究所主任研究員
長江啓泰 日本大学名誉教授
(五十音順)

Hondaのドライビングシミュレーターは危険予測を効果的に学習できる教育機器として、広く活用されていますが、さらに、道路工学、交通工学などを研究している大学や企業からも研究機器として注目を集めています。いま、Hondaのシミュレーターによる研究面、教育面への新たな可能性を安全教育や道路工学などに関わる研究者、シミュレーターの開発にあたる技術者などの方々による議論を通じて探りました。


シミュレーターの能力を十分に生かすためには、
教育マニュアルの開発が必要です
太田博雄
東北工業大学
教授
シミュレーターがトレーニング用に使われていることは、研究者にとってきわめて重要なことです。あるやり方でトレーニングをして、その効果をきちんと測定することで、人間の本質、あるいは運転行動とは何かという理論的モデルができあがってくるからです。
シミュレーターは現場で能力の1割も活かされていないような気がします。現場と一体化して、どういう使い方をしたら、どういう効果が上がるのかを教育し、実験し、検証していくという過程から教育マニュアルやトレーニング方法をつくっていく必要があります。

川村 彰
北見工業大学
助教授
路面性状(道路の路面の状態)がクルマや人に与える影響を調べて、それをいかに道路の設計、補修に役立てたらよいかという研究をしております。シミュレーターは路面とクルマと人を結ぶ接点を研究することに役立つと考えました。いままでの道路を建設すればいいという考えから、人とクルマが快適に、安全に移動するためには、道路はどうあったらいいのかというマネジメントの世界に移ってきています。これからの道路のあり方を考えていく際に、ドライビングシミュレーターを活用したいと思っています。

白石修士
株式会社
本田技術研究所
栃木研究所
主任研究員
最初、世の中に役立つために使うシミュレーターを開発してほしいと言われて、参考に見たのがアメリカにある研究用の大きなシミュレーターでした。研究用のものを世の中でも使えるシミュレーターに開発していったのがHondaの小型シミュレーターです。人が運転をしてクルマが動く部分では、クルマの基本的な運動方程式といった数学的な要素も取り込んであり、全体を動かす仕組みなども飛行機のシミュレーターを開発しているところと協力して行ないました。後から考えれば研究用として使える仕組みを最初から採り入れていたわけです。Hondaはこのようなクルマのシミュレーターを世界に先駆けて開発してきました。

長江啓泰
日本大学
名誉教授
人間のなかのいろいろな変化に対して、皆さんが仮説を立てて検証をやろうとしている。その検証の道具がシミュレーターです。シミュレーターが教育用とは別に研究用としても使われ、それはその機能が向上するにつれてどんどん広がっていくと思います。問題は使い方です。例えば、残った記録をデータ化し、分析して、教育の場合なら「あなた、ここがだめだったですね」と示してあげればいいでしょう。研究をするなら、「どうして、これでいいと思ったの?」というところまで聞かないといけないでしょう。そうしたデータベース化をしないと研究は進まないかもしれません。


 
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