MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年2月号
opinion
太田勝敏
東洋大学国際地域学部教授・日本交通政策研究会代表理事

1965年東京大学工学部土木工学科卒業、67年同大学工学系大学院修士過程修了後、ハーバード大学大学院(都市地域計画)。同大工学部助手、同助教授、同教授を経て、95年に東京大学院工学系研究科教授に。2003年4月より現職。「持続可能な交通、まちづくり」が主要テーマ。著書に『新しい交通まちづくりの思想』『交通投資の社会経済評価』(共著)など。交通政策の研究調査を行う学者集団「日本交通政策研究会」の代表理事も努める
ビジョンを実行可能なプログラムに落とすために国民全員参加の仕組みづくりが必要

国民の参加意欲に応える仕組みづくりを

昨年11月、内閣府と(財)国際交通安全学会が主催して開かれた「世界一安全な道路交通の実現を目指すキックオフ・ミーティング」。国内外の専門家が一同に会したこのシンポジウムにて、太田さんは第一分科会『交通安全のビジョンとターゲット』の司会を務めました。政府は「今後10年間で交通事故による死者を半減」という目標を掲げましたが、「そのビジョンを実行可能なプログラムに落とすためのコンセプト、仕組みづくりが必要。10年で半減という目標達成は、従来の手法では限界がある」と太田さんは訴えます。
シンポジウムでは、ヨーロッパで進めている具体的な安全対策がいくつも紹介された。その中で太田さんが注目するのは「速度マネジメント」の手法。ヨーロッパではすでに高速道路において「インテリジェント・スピード・アダプテーション」という一種のスピードリミッターの実験が重ねられていますが、日本ではむしろ「住宅地など低速領域での技術開発を」と太田さんは主張します。
さらに、大田さんは周辺地域を「面」でとらえ、コミュニティ・ゾーンとして整備することも提案しています。「交通静穏化事業※として進められていますが、全国で160地区ほどと実施例はまだ少ない。全国レベルで、市街地全体でしかも早く展開することが求められています」。

※交通静穏化事業=生活空間における車と人との共存、安全性の確保を目的とした取り組み。平成8年に各地で導入された「コミュニティ・ゾーン」に続き、平成14年「みち再生事業」、15年には「くらしのみちゾーン」「安心歩行エリア」などの施策が展開されている。

 
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