MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年1月号
岸井成格 毎日新聞社編集委員(役員待遇)
福井威夫 本田技研工業株式会社社長
人間社会が20世紀に実現した豊かさは、科学技術の巨大な発展とともに、それを人間生活に有用なものとして活かした企業の活動によってもたらされたともいえます。その一方で、豊かさの代償のように地球規模の環境問題が深刻化し、人間の安全をも脅かしています。こうした環境と安全の課題を企業の社会的責任として正面から取り組み、さらに人間社会に新たな可能性と希望を与えるために、企業はどのように進んでいくべきか。毎日新聞社編集委員の岸井成格さんと福井威夫社長に語り合っていただきました。


人類が持ち続けてきたモビリティへのロマンと
21世紀型科学技術への期待

 岸井成格 毎日新聞編集委員
20世紀は、経済的に豊かになることと科学技術が発達することが、無条件で良いことであり、人類を幸福にするという絶対の神話、信念があって発展してきたと思います。しかし、そうした科学技術の発達が人間の感性と釣り合っているのか、発達がかえって人類の幸福を疎外するのではないかということに、人類も気づき始めたわけです。ですから、21世紀の科学技術は20世紀のそれとコンセプトが変わると考えています。これから科学技術は人間の精神性の高みと一緒に進んでいかないと共存できないと思うのです。21世紀に入り、大きな転機を迎え、宇宙から地球を考えるという地球規模のコンセプトがないと、これからは科学技術も製品も受け入れられない時代になっていくのではないかと考えています。
人類がある限り、陸海空を自由に飛んだり、走ったり、潜ったりする乗り物を追及し続けると思います。これは人類が持ち続けてきたロマンだと思うのです。ただ、そこに20世紀型の中にすでにあった単なる道具ではない部分が、付加価値としてどんどん大きくなっていくところが、21世紀型の科学技術の可能性とか、面白さではないかなと期待しているわけです。



 福井威夫 本田技研工業株式会社社長
創業以来お客様中心を掲げていますが、お客様中心の経営は、結果的に業績に反映されて、株主にフィードバックされ、結局は社会の役に立つことになると考えています。ただし、地球環境が問題になってから、お客様だけでなく社会にも相当配慮しなくてはいけない状況になってきました。地球環境への負荷を減らし、持続的に発展するためには、乗り物でいえば化石燃料をコントロールしなくてはいけない。これは直接的にお客様というより、社会に関わることです。それを企業の責任としてやるべきこととして、非常に重要視しているのがHondaです。ですから、燃料電池に力を入れているのも、社会への責任の面が強いわけです。
私たちがめざしているのは、二次元から四次元までの個人ユースのモビリティは全部カバーしたいということです。二次元の二輪車、自動車、船。その次は三次元の飛行機で、今はその先駆けになるジェット機にとりかかっています。そして、四次元がロボットという位置づけです。将来は個人ユースで宇宙空間に飛んでいくような乗り物に挑戦したいと考えています。


 
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