MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2003年8月号
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より良き交通社会人をめざして

学校における交通安全教育は、幼児から高齢者までの生涯教育の一環として位置づけられるとともに、地域・家庭との連携による取り組みが進められています。総合学習の授業など教科として交通安全教育を行なう学校もあるなかで、小学校・中学校・高校では今、どのような交通安全教育が行なわれているのか、それぞれの取り組みを紹介します。


 地域や家庭と連携し、交通参加者としての責任を教える
交通安全教育プログラム「あやとりぃ」(注)をベースにした小学校教育で注目されている三重県が2003年度の事業として、小学校、PTA、行政などの関係機関と協働して「安全・安心の通学路の整備システムづくり」を進めています。これは、三重県津地方県民局が小学校での交通安全教育と連携して、子どもの視点に立ち、教育現場、地域の発想を生かした安全で安心な通学路を整備するというシステムを作り、児童・生徒の交通事故を減少させるという試みです。
平成13年度に、小学校の通学路で連続して交通事故が起きたのをきっかけに、事故を減らすために地域の人々と連携して通学路整備のシステムづくりの企画に着手されました。しかし、通学路の整備を、子どもが通学路の交通環境を考える交通教育として取り組まなければ、子どもにとって新たな通学路が与えられただけで終わってしまうことになります。
「子どもたち自らが、身近な交通環境のなかの危険に気づく教育を行なって、そこから子どもたちの視点で通学路を見て、考えていくことが必要ではないかということです」(津地方県民局生活環境部・鈴木満主幹)。こうした問題意識から、鈴木さんはこの事業に「あやとりぃ」を取り上げることにしたそうです。

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システム実施モデル校に選ばれた栗葉小学校ではいま、あやとりぃの授業とヒヤリマップづくりが進んでいます。4月からあやとりぃの授業を受け持つ3年生担当の岡田美弥子教諭は、1学期で7回の学習を終えて子どもたちの行動が少しずつですが、明らかに変わっていくのを感じています。
1学期のあやとりぃの授業をふりかえって、「学習する前と後で、かわったこと、かえたことはありますか?」の問いに対する子どもたちの感想文に、「自分がとび出すことによって、自分の命だけでなく、人の命までうばってしまうことになることがわかった」という答えがあったそうです。自分たちの行動がクルマに事故を起こさせ、場合によっては人の命を奪ってしまう原因になるのだということへの気づきは、自分を取り巻く環境を改めて見つめ直していることだといえます。自分もまた交通社会の一員であるという自覚が芽生えているということ。こうした気づきの芽を、地域・家庭との連携なかで育てていく。それが、あやとりぃを柱にした通学路の整備システムづくりがめざすことでもあるのです。

注)「あやとりぃ」とは「あんぜんを、やさしく、ときあかし、りかいしていただく」の略称で小学生3〜4年生を対象に教え込むのではなく、子どもたちに考えさせて気づく能力を育む交通安全教育プログラム

SJ8月号では、このほかにも千葉県市原市立市東中学校の自転車教育、奈良県立山辺高等学校の二輪・四輪の免許取得をテーマにした交通安全教育を紹介しています。

 
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