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パワープロダクツ The Topics

鈴鹿8耐を支えるHondaパワープロダクツ

日本最大のオートバイレースといっていいFIM世界耐久選手権シリーズの1戦である"コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース(以降、鈴鹿8耐)。猛暑、酷暑と呼ばれるなかで実施される真夏のオートバイレースの祭典は、レースを戦うライダーだけでなく、レースを支える様々な関係者にとっても過酷な戦いです。
鈴鹿8耐は、1978年に第1回が開催され、毎年7月か8月に開催されるオートバイの耐久レースです。「真夏の祭典」という愛称でも親しまれている日本最大のレースで、例年気温は40℃に迫り、路面温度は60℃を上回る中で、2人または3人のライダーが交代で8時間を戦うのです。現在、日本で開催されるオートバイのロードレース世界選手権は、MotoGP™と、この鈴鹿8耐だけなのです。

鈴鹿8耐を戦うコースオフィシャルを支えるHondaパワープロダクツ

鈴鹿8耐での主役は、もちろんレースを戦うライダーやチーム関係者ですが、そのレースを支えているのは、運営と安全管理を担っているオフィシャルと呼ばれるスタッフたちです。
コース全体を管理するコントロールタワーのオフィシャルから、ピットの安全を維持するオフィシャルなどが、常にレースの安全を確保しています。

そしてスタッフの中でも最も過酷な現場を担当するのがコースオフィシャルのみなさん。彼らはコースサイドで待機し、オートバイの走行中には、走行するオートバイの挙動を常に監視。コース上で転倒やトラブルが発生すると、フラッグを掲示しながら後続の選手に危険を知らせ、転倒やトラブルが発生した場合は、ライダーやマシンを安全な場所へ移動させ、コース上に落ちた破片などを撤去します。

コースの状況をライダーに伝えるためにフラッグを掲示する他に、走行時間の合間にコース路面清掃をするのもコースオフィシャルの重要な役割

鈴鹿8耐でコースオフィシャルは、決勝レース開始時刻(11時30分)の4時間前、午前7時30分にはコースサイドで待機をはじめ、レースが終了する19時30分過ぎまで、実に12時間以上もコースサイドに常駐し、まさに一日中炎天下でライダーたちの安全を確保しています。

コースオフィシャルが常駐している場所は大きく分けてポストと呼ばれる常設の簡易建物とテントの2種類に分かれます。
ポストで待機するコースオフィシャルは、後続の選手に異常や危険があることを知らせるフラッグを掲示するのが主な役割で、テントで待機するコースオフィシャルは、マシントラブルや転倒に対応します。

ポストから常にコース状況を監視するポストのコースオフィシャル
転倒やトラブルに対応するためテントに待機するコースオフィシャル

コースオフィシャルは、危険防止のために難燃性生地の上下つなぎに身を包み、ヘルメットを着用することが義務付けられているため、立っているだけでも汗が吹き出します。
そのコースオフィシャルの待機するポストやテントは、炎天下に設置されています。そのため、テントには、主催者が発電機と扇風機を設置。鈴鹿8耐の時期には、なくてはならない装備となります。

テント脇に設置された扇風機を発電機で稼働

コースオフィシャルのみなさんも、最初は『ありがたいな』という程度だったようですが、酷暑と呼ばれるほどの暑さとなったこの1~2年では、鈴鹿8耐のレース中、しっかり立っていられないほどになることもあるので、「発電機と扇風機がないと生命にかかわる」と、その必要性を強く語っていました。
また、走行するライダーにフラッグを掲示して危険を知らせることを主な役割とするポストには電源が設置されていますが、電源は主にコース上を映しているモニター用として使用しているため、モニター電源が落ちないように、扇風機やスポットクーラー用として、別に発電機を用意していました。

ポストにはスポットクーラー(屋外用クーラー)をコースオフィシャルの熱中症対策として導入

「本当にこれがないと、大げさではなく、命の危険があると思います」と、ポストで待機するコースオフィシャルは切実に語ってくれました。
ポストに詰めるコースオフィシャルは、マシントラブルや転倒があったときに、現場に急行するコースオフィシャルより楽だと思われがちですが、常に走ってくるマシンや通過するマシンに気を配り、フラッグを振る準備をしてコースサイドに待機しています。
鈴鹿8耐では、常に速いライダーが周回遅れのライダーを追い抜くシーンが多く見られます。その際、後方から速いライダーが接近していることを知らせ、安全に追い越しができるよう急な進路変更を控えることを意味するブルーフラッグを掲示するのですが、ブルーフラッグはほぼレース中に振り続けることになります。また、前方に危険があることを意味するイエローフラッグも、レース中に数えきれないほど掲示しています。

ライダーにブルーフラッグを掲示するポストのコースオフィシャル

このように、鈴鹿8耐はコースオフィシャルが万全の体制で安全を確保しているからこそ成立しています。コースオフィシャルにとって扇風機やスポットクーラーは必要不可欠な装備となっているのです。その扇風機やスポットクーラーに電源を供給しているのがHondaの発電機であり、Hondaはオートバイだけでなく、パワープロダクツでも鈴鹿8耐を支えているのです。

参戦するチームを支えるHondaパワープロダクツ

鈴鹿8耐が開催される鈴鹿サーキットは、様々な設備が整っており、ピットごとに電源も確保されていますが、容量には限りがあります。世界選手権に参戦するチームやメーカーが運営するワークスチームでは、主催者に費用を支払い、200ボルトや400ボルトの電源を使用する申請をすることが多いのですが、費用を節約して参戦したいプライベートチームでは、通常供給される100ボルトの電源を使用しながら、追加の電源として発電機を使用することが多いのです。

鈴鹿8耐では、約60チーム、総勢1000人近いスタッフが出入りするピットで、電気製品は数知れず存在しています。
そのような電気製品の中でも、レースを戦う上で、最も重要といえるのがタイヤウォーマーです。レース用のタイヤは、常に一定の温度を維持しておかないと安全に走れない構造となっているため、鈴鹿8耐に限らず、レース用のオートバイの走行前のタイヤは、常にタイヤウォーマーというベルト状の機材で覆われて準備されています。
プライベーターチームとして鈴鹿8耐に参戦するHonda Kumamoto Racing & Hamamatsu ESCARGOTでは、ピット内で使う電子・電気機器の影響を受けないように、発電機をタイヤウォーマー専用で使用。万が一にでもタイヤウォーマー電源が切れていないか、スタッフのピット出入りで発電機の稼働状況を確認しやすいのだと言います。

タイヤウォーマー。ピット裏に置かれた発電機から、このタイヤウォーマーに電気が供給されている。

ほかの機材とは、マシンの走行状態を確認・管理するパソコンや、マシン細部の整備用に使用する手元用のライト、ピットとピットレーンの連絡用に使う無線機の充電や、もちろんスタッフが連絡用に常備する携帯電話の充電、ピット裏に陣取るスタッフたちがレース状況を見守るモニターなど多種多様。もちろん、猛暑の中を走るライダーがピットインしてくるごとに、わずかな時間でも冷風を送るために用意されているサーキュレーターにも電源は必要です。ライダーやスタッフの休憩所であるピット裏テントにある、ライダーケア用のドリンクを用意する冷蔵庫、食事用の炊飯器はホットプレートにも、発電機は欠かせない装備です。

ピットにはモニターや冷蔵庫、送風機など、電化製品を多数設置
グリッド上のマシンに装着されたタイヤウォーマー用にも発電機を使用

さらに鈴鹿8耐ならではの装備といえるのがレーシングスーツを乾燥させるための乾燥機です。
3人ライダー制のチームの場合、レース中は約1時間を走行して約2時間休憩する体制となります。走行によって多くの汗を含んだレーシングスーツを強制乾燥させるために必要不可欠な装備が乾燥機なのです。

ピット裏のテントに、レーシングスーツを乾燥させるための乾燥機が設置されている光景は鈴鹿8耐ならでは。

替えのレーシングスーツがあるライダーでも、着心地やフィット具合など、ひとつのスーツを連続して着用するライダーもいるため、チームスタッフは常に完璧な状態にしておかなければならないため、レーシングスーツ用の乾燥機を用意しているチームは少なくありません。その乾燥機用の電源も、発電機を使用するケースが多いのです。
このように、鈴鹿8耐に参戦するチームでも、Hondaの発電機が必要不可欠なのです。

鈴鹿8耐では、レースが行なわれている間にも、コース外の施設で、観客を楽しませるイベントが多数行われています。
今回の鈴鹿8耐で人気だったのが、イベント会場で行なわれるトライアルデモンストレーション「NANKAI トライアルパフォーマンス」。ここでは、Team MITANI Hondaの小川友幸選手が出演しました。盟友であり全日本トライアル選手権シリーズでは最大のライバルである黒山健一選手(YAMAHA)に加え、Team MITANI Hondaのチームメイトである武田呼人選手とともにデモンストレーション会場に集まった多くの観客から喝さいを浴びていました。

小川選手(中)、武田選手(右)、黒山選手(左)

鈴鹿8耐は、参戦するライダーやチーム関係者に加え、コースオフィシャルやイベント出店・参加者などのレースを支える人々と6万人以上の観客によって成り立っている日本最大のオートバイの真夏の祭典です。 Hondaパワープロダクツは欠かせないアイテムとして鈴鹿8耐を支えているのです。