パワープロダクツ Behind The Scenes

意外なところで活躍している
Hondaパワープロダクツの世界をご紹介します。

バルーンフェスタをサポートするHondaパワープロダクツ

「大空を飛ぶ」という夢に挑戦する人々を応援し続けるHonda。

3年ぶりに観客を迎えて開催された「2022佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」。
期間中は連日早朝から会場となる佐賀市の嘉瀬川河川敷に観客が訪れ、
延べ85万人もの人々が約100機のバルーンに魅了されました。
おおらかな雰囲気の中にも、自然と向き合う厳しさのあるバルーン競技。
そんなバルーン競技を、Hondaは30年以上にわたって応援し続けています。

風と向き合う選手たち

夜明け前の午前6時。会場となる佐賀市嘉瀬川河川敷。
競技に参加するパイロットたちは、気象情報を収集・解析してフライトが可能か、タスクと呼ばれる競技内容は何になるのかのブリーフィングを実施しています。
観客たちはすでに観戦ポイントを確保して、朝の競技開始を心待ちにしています。

6時30分頃、ローンチエリア(※離陸場所)に各チームのバルーンが運び込まれ、競技の準備を開始。
インフレーターと呼ばれるファンで球皮をある程度膨らませてから、バーナーで暖かい空気を送って気球を立ち上げていきます。
風を読み、時間内に目標地点へ向かうため、この最初のインフレーションと呼ばれる段階でつまずくわけには行かないのです。
気球を立ち上げながら、風の状況を真剣に読むチームスタッフ

いってらっしゃい!いってきます!

競技へと次々に飛び立つバルーン。
パイロットたちは風に乗って、目指す方向にバルーンを飛ばしていきます。
上空の風は高度によって向きが変わります。どの高さの風がどの向きに吹いているのか、それを判断してバルーンの高度を調整して目的地へ向かいます。
風の読みがバルーン競技の勝負の分かれ目です。
目前で立ち上がった気球たちが、頭上を超えて大空へと飛び立って行く。
時折響くバーナーの音以外は無音で静かに飛んでいくバルーンに、
観客からは「いってらっしゃい!」の声が飛びます。
その声は気球に乗るパイロットたちにも届き、手を振ってこたえてくれます。
大人も子どもも自然と笑顔になる瞬間が、そこにありました。

写真で見るバルーンフェスタ

早朝のローンチエリア、離陸準備を進めるバルーン
朝陽を浴びて1機、また1機と静かに飛びたっていく
パイロットの表情が見えるほど近くを飛んでいくことも
大勢の観客の頭上をバルーンが次々と飛行していく
【気球教室】では、皆で力を合わせてバルーンの立ち上げを手伝う。
バルーンの立ち上げを間近で体験できるのは【気球教室】ならでは。
【気球教室】バーナーの音とともに、徐々に立ち上がっていくバルーン
【バルーンファンタジア】というイベントではバルーンを間近で見て、パイロットたちと写真撮影することもできる
【バルーンファンタジア】間近でバルーンを見るために大勢の観客で賑わうローンチエリア
【キッズデー】というイベントでは、子どもたちが地面に広げたバルーン上ではしゃぐ

編集後記

観客の熱量はどこから? -
朝5時、暗闇の河川敷に次々と観客が集まり、競技会場を見渡せる土手が大勢の人々で埋まっていく。
大会期間中だけ開設される「バルーンさが駅」への始発電車もまだ到着していない時刻だが、ライトを手に徒歩で会場に向かう観客の中には、小さな子ども連れの家族などもいる。
午前6時になると河川敷がほぼ観客で埋め尽くされ、その熱量に驚かされる。
暗闇の土手を埋め尽くす人の波
日の出から少し経った午前7時過ぎ、競技のためにローンチエリアに集まったバルーンがバーナーの音とともに立ち上がる。
離陸準備を進める機影が朝陽に照らされる様子は、なんとも言えず幻想的。
仕事で訪れていることも忘れて、その光景にただただ魅了されてしまった。
大勢の観客が見守る中、100機近くのバルーンは静かに佇み、やがて飛び立っていく。
ローンチエリア内は、チームが戦略を練っている慌ただしい時間帯だが、観客席は数万人がここに集まっているとは思えないほどの静かさ。レース前の緊張の一瞬を見守るのとは違う、何とも言えない不思議な時間が流れていた。

5日間の大会期間中の総来場者数は約85万人。この日は18万人の人々が河川敷に集まった。2022年に開催された「FIFAワールドカップ カタール大会」は、会場に1日平均70,000人が訪れたそうだが、それを遥かに上回る観客が、佐賀県の河川敷に集まったことになる。
観客が多すぎて携帯電話の電波が繋がりにくくなっているとアナウンスされる程の状況で、筆者も、予定していたビデオ会議を電波が繋がる場所まで数km移動して行った。
あの河川敷にそれほどの収容力があったのかと驚くとともに、いや、むしろもっと集まってもおかしくないなと思う。バルーン競技はそれほど不思議な魅力にあふれていた。
積極的に競技に参加する観客たち -
競技が始まると、ローンチエリアからゆったりと飛び立っていくバルーン。その瞬間、バルーンに向かって手を振り「いってらっしゃい!」と声をかける。バルーンの上からは、観客に応えるようにパイロットやチームメンバーが大きく手を振り返してくれる。競技中でも、チームと観客がこうやって直接コミュニケーションを取れるのはバルーンならではだろう。
目的地まで飛行してタスクと呼ばれる競技種目を達成したバルーンは、近くの田んぼなどに着陸。そこにも、追いかけてきた観客や偶然その場にいた人などがバルーンの回収作業を手伝ったり写真を撮ったりしている。これほどチームと観客の距離が近い競技が他にあるだろうか?
回収後に記念撮影
競技と競技の合間にはローンチエリアに入ってバルーンを間近に見ることができるイベントも開催される。河川敷に集まった数万人の観客たちがローンチエリアに入場するが、特に混乱することもなく、整然とお目当てのバルーンの前で写真を撮ったり、大人も子どもも思い思いに楽しんでいる。
その様子を見ていると、この地で40年間も続いているバルーン競技の歴史が文化として根付いており、観客たちもプロフェッショナルなのだと気付く。

バルーン競技は風次第と言われ、条件が揃わなければ好天でもキャンセルされることも多い。実際、3日間の取材中に予定されていた6回のうち、競技が実施されたのは2回のみ。
キャンセルされても観客はとても落ち着いており「自然相手だもの、仕方ないよね」という空気が流れる。
そんな観客に少しでも楽しんでもらおうと、いくつかのチームが目の前でバルーンを立ち上げてくれる。風でなかなか立ち上がらないバルーンに向かって思わず「がんばれ!」と声をかけてしまった。
風が強く、なかなか安定しないバルーンを懸命に立ち上げるスタッフ
他のスポーツにはない一体感 -
チームにとってバルーンはシビアな競技。少しでも上位を目指そうとチーム一丸となって取り組んでいる。一方で観客に「楽しんでもらおう」というチームの想いと、そんなチームと積極的に関わろうとする観客たちの気持ちが共鳴して、その距離感は驚くほど近い。
この一体感はバルーン競技でしか体感できないだろう。他のスポーツでは、競技中に選手と観客が触れ合うことはなく、どこかでそれが常識だと思っていた。
しかし今回、筆者の身勝手な常識は簡単に覆された。バルーンは、チームと観客が非常にカジュアルにコミュニケーションを取っていた。
今回、Hondaの「GXエンジン」がバルーンチームで使用されているという情報で現場を訪れ、
ほとんどのチームが「GXエンジン」を使用しているという実態を取材できたが、
それ以上に、現地を訪れるまで分からなかったバルーン競技の魅力を感じとることができた。

今回の取材ですべてが理解できたとは思わないが、会場からの帰路、SNSに投稿されるバルーンフェスタの写真や動画を観ながら、また来年も来なくちゃな、という気持ちになっていた。