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アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト支援

明石工業高等専門学校 Honda賞に輝いた、モノづくりの舞台裏

2年連続で全国ベスト4、激戦区で存在感を放つ注目校。

明石工業高等専門学校(以下 明石高専)が属する近畿地区は、ロボコン強豪校がひしめく激戦区。地区大会では、技術賞やアイデア賞などの特別賞には毎年のように選ばれるものの、全国大会へはあと一歩届かない、苦しい期間が続いていました。 そんな明石高専が一躍注目を集めたのが昨年、2015年の高専ロボコン。近畿地区大会優勝を勝ち取り、全国大会でも準決勝まで勝ち進むという快進撃を見せました。今年の地区大会では惜しくも準決勝敗退となりましたが、その高い技術力が期待され全国大会へ。2年連続ベスト4進出を果たすとともに、マシンの独創性や性能が高く評価され、2016年の「Honda賞」に輝きました。

独創的なアイデアが光ったチームに贈られる「Honda賞」。トロフィーはASIMO開発責任者から手渡される。

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うれしさは結果以上、実力を出し切った全国大会。

「絶対全国優勝」という目標を掲げ、2016年の高専ロボコンに挑んだ明石高専。「あさごん」と名付けたロボットとともに全国大会のフィールドに立ったのは、藤本恭子さん、菊池航平君、井上晴渡君の3人。前回ピットクルーとして参加した藤本さんは、1年ぶりの両国国技館の雰囲気が懐かしかったといいます。「緊張もありましたが、楽しみな気持ちのほうが大きかったです。自分たちのロボットをここで動かすんだと思うとワクワクしました」。

練習通りの落ち着いた試合運びで1回戦を通過すると、2回戦では対戦相手の大分高専より1段低かったものの、相手の記録が認定されず明石高専が勝利。続く3回戦は、シードの新居浜高専がマシントラブルで時間をロスするなか、ペースを崩すことなく5段を積み上げて勝ち進みます。香川高専との準決勝は、今大会でも特に印象に残る名勝負となりました(全国大会レポート公開中)。同点で並ぶ接戦ののち、審査員判定で惜しくも敗れましたが、観客席からは健闘を讃える大きな拍手が。明石高専は、ブロックを下から差し込んで砦を高くしていく機構のアイデアと、地区大会からの大幅な改良に成功した点が評価され、「Honda賞」を受賞しました。

井上君は「自分たちがやるべきことに集中できていました。全試合ノーミスで戦えた嬉しさと、あとちょっとのところで決勝にいけなかった悔しさ、両方あります」と複雑な心境。それでも、「悔しさよりも全力を出し切った達成感のほうが大きかった」(菊池君)、「香川高専のロボットも素晴らしかったので納得の結果」(藤本さん)と、爽やかな笑顔で2016年のロボコンを振り返りました。

国技館のフィールドに立った井上君(左)、藤本さん(中央)、菊池君(右)は全員3年生。 井上君が「灯台」用ロボットを操縦、藤本さんの指令を受けて菊池君が「砦」用ロボットを動かす連携プレーは、本番でも練習通り。 全国大会当日、藤本さんの両手には井上君と菊池君からのメッセージが。

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全国優勝をめざし、進化を続けた「あさごん」。

「ブロックを積んで砦を築く」という競技課題に対し、明石高専が採用したのは“下から積み重ねる”というユニークなアイデア。先に積んだブロックをアームで挟んで持ち上げ、そこにできたスペースに新たなブロックを差し込んで一段ずつ高くしていくしくみです。「Honda賞」の決め手にもなったこのアイデアの発案者は、2年生の荒川諒一君。「上から積む方法だとブロックを置く場所がどんどん高くなり、操作も複雑になります。常に一番下から挿入する機構ならロボットを大きく動かす必要がなく、時間を効率的に使えると考えました」。

地区大会が終わるとすぐに作戦会議を開き、全国優勝するための改良に取りかかりました。その時点での明石高専の最高記録は5段。最低でも6段は積まないと並み居る強豪校に勝てないことは、各地区大会の結果からも明らかでした。
そして、新たに定めた目標は8段。それに合わせて積み込めるブロック数を12個から16個へ増やすことが決まり、設計を一から見直したといいます。「マシンのサイズ自体は変えないまま、大胆な設計変更をしました。壁やフレームを増やしたり、パーツの動き方を変えたり・・・重量バランスや強度にも悩みましたが、特に苦労したのがブロックの取り込み部。スムーズで正確な動きがなかなか完成せず、やっと仕上がったのは本番4日前でした」(菊池君)。

また、「上にいくほど幅が狭くなるように」という課題をクリアするために、差し込んだブロックを少しずつ外側にずらすしくみを採用。手動操作によるタイムロスや思わぬミスを回避するため、左右幅を自動調整できるシステムを開発しました。「全国大会に向けてプログラムを見直し、処理速度を2倍にしました」と話すのはプログラミング担当の藤本さん。より高い砦をより早く、正確につくれるよう進化を遂げたロボットは、藤本さんの的確な指令と菊池君の鮮やかな操縦によって、本番では自己最高の6段を見事成功させました。

一方、“減らす”ことで改良を図ったロボットも。灯台用ロボットのアームを大幅に短くした理由を井上君が説明します。「砦づくりも手伝えるよう5段スライド式の長いアーム構造で製作しましたが、3分の制限時間ではそこまで手がまわらないと地区大会でわかりました。砦用ロボットの増量が確実だったこともあり、使わない部分は思い切って削ることに決めました」。
結果、2台のロボットを合わせた総重量は、規定ぴったりの40kgに。およそ3週間という短い期間で仕上げた“新生「あさごん」”は、全国大会の大舞台で見事なパフォーマンスを発揮しました。

スタート直後に、砦用ロボット「カストーレ竹田」(左)と、灯台用ロボット「バンブー田城」(右)に分離。 底のベルトを動かしてブロックを丘の上に送り出すしくみ。 砦を持ち上げ、ブロックを下から挿入。シンボル“天空の城 竹田城”が少しずつ天に登っていく姿も見せどころ。 ブロックを下から挿入するアイデアの発案者 荒川君(左)と、設計・操縦を担当した菊池君(右)。 積む段数に合わせてブロックの左右幅を自動調整。段数が書かれた““ヤマ”は3Dプリンタで製作。

灯台用のブロックを積み上げるアームは、5段階から2段階へ変更。この決断も全国大会での勝因のひとつ。 総重量規定は40kg以内。アルミフレームに並ぶ穴は、軽量化の苦労の跡。

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チームワークでつかんだ、大きな達成感。

明石高専ロボット工学研究部(通称“ロボ研“)のロボットづくりはみんなでアイデアを出し合うところから始まります。専攻や学年が違えば、出てくる案もさまざま。それらをまずは全部、試してみるのだそう。「計算や図面だけで判断せず、必ず試作をつくって確かめます。検証していく途中で新たな発想や工夫が生まれることもあるので、形にしてみることは大事ですね」(菊池君)。

その全員参加の製作体制は、学年差を気にせず活発に意見交換できるチームの雰囲気があってこそ。たとえ突拍子もないアイデアに思えても、そこにヒントの種があるかもしれないという気持ちでお互いの意見を聞くことを心がけていたといいます。実際、ブロックを下から挿入するアイデアを2年生が発案し、軽量化を検証したのは1年生。また、“擬音ばかりで意味がよくわからないけどなぜか気になった”あるメンバーの指摘が、思わぬ打開策につながったこともあったそう。全員が当事者意識を持ち、なにか課題が見つかるたびにみんなで話し合うことで、チームの一体感は高まっていきました。

そのチームワークの輪の中心にいたのが、リーダーの藤本さん。明るくハキハキとした人柄でメンバーからの信頼も厚く、「ぐいぐい引っ張るというよりは、協力して一緒にやっていきたいタイプ」と自ら語るように、なによりもチームの協調性を大切にしてきました。“みんなで力を合わせて最高のロボットをつくりたい”という彼女の強い想いが一人ひとりに伝わり、抜群のチームワークが醸成されていきます。

その団結力は、“試練の夏”を乗り越えるパワーにもなりました。「製作が佳境に入った夏休み中は、課題をひとつクリアするたびにまた別の課題が出てきて・・・の繰り返し。睡眠時間を削ってとにかく打ち込んだので、精神的にも体力的にも、みんなが一番しんどい時期でしたね。僕も一度、過労で倒れました」と話すのは井上君。それでも「大変な時は誰かを頼ったり、サポートし合ったりできる人間関係ができていて、チームワークの良さを実感しました」と言います。
「全国優勝という目標に向かって、全員一丸となってチャレンジできた。このメンバーでロボコンができて、本当に楽しかった」と笑顔で話す藤本さん。大きな達成感を全員で共有できた経験は、明石高専をさらに強いチームへと引き上げていくことでしょう。

チームリーダーの藤本さん。井上君曰く「ふざけてるように見えて実はみんなを和ませてる。気遣いと気配りの人」。 チームのシンボル「天空の城 竹田城」を製作した椿野君(3年)。石垣をひとつずつ手描きし、美しい雲海も再現。城跡がある朝来市出身なだけに、思い入れもひとしお。 スタート前のセッティングタイムは1分間。素早く無駄のない動きを何度も練習した。 練習で気づいたことや全体連絡などはSNSで共有。メンバー同士のコミュニケーションを大切にしていたという。

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モノづくりに大切なのは、個々の成長とチームワーク。

明石工業高等専門学校 ロボコンプロジェクトリーダー 森下智博 先生

「去年のベスト4を奇跡だ、夢のようだと大喜びしていた学生たちが、わずか一年で、全国優勝を目標にするほど力をつけていました。今年はスタートから意気込みが違いましたね。特に成長を感じたのが、チームワークの良さです。個性も能力もバラバラなメンバーをリーダーがうまくまとめ、とても雰囲気の良いチームづくりができていました。
ロボコンは、失敗あり、トラブルあり、報われないことあり、苦労がとても多い活動です。でも、一生懸命に汗を流し苦労するからこそ得られる喜びもあります。そのことを、ぜひ学生たちに知ってほしい。そしてその体験を、エンジニアとして世に出たあとも役立ててくれたら嬉しいですね」

森下智博 先生

細川 篤 先生

明石工業高等専門学校 ロボコンプロジェクト 顧問 細川 篤 先生

「今回はじめてロボコン指導を経験しましたが、学生たちの主体性や探究心に驚かされました。素晴らしいチームワークでどんどん成長していく姿を、私はただただ見守っていた感じです。全国大会での堂々とした戦いぶりも立派で、すごい精神力だなと感心してしまいました。普段の勉強や研究は個人作業が中心ですが、ロボコンはチームでの共同作業が経験できる貴重な機会。
たとえ地味な作業でも、自分の役割をひたむきにやり遂げた時に得るものは多いはずです。大勢の力でひとつのものをつくりあげていく楽しさ、喜びや苦しさを共有できる仲間の大切さを学んでほしいですね」

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夢にチャレンジする楽しさ、それがロボコン。

チーム一丸となって取り組んだ2016年の高専ロボコン。この一年のチャレンジを通して得たものを聞いてみました。
「技術的にレベルアップできたことはもちろんですが、プロジェクトの中で自分がどう動くべきかを客観的に考えられるようになりました。自分の作業が終わらないと他のメンバーも終われない、とか、いくら作業が早くても完成度が高くなければまわりに迷惑をかける、とか。個人ではなくチームとしての意識を持てるようになりました」(井上君)。
「一生懸命やる大切さ。準決勝で負けて泣いてしまったのは、悔しさではなく、あまりの達成感の大きさに感極まってしまったから。本気でやらなければ辿りつけない境地だと思った。そこまで打ち込めたことを誇りに思います」(菊池君)。
「以前から興味があったチーム運営や組織づくりを、チームリーダーとして経験できたことです。個性豊かな人たちと出会い、お互いに高め合いながら一緒にロボットがつくれたことは、私の大きな財産になりました」(藤本さん)。

森下先生と細川先生の存在も、チームにとっては大きな支えとなりました。「技術的な指導や客観的なアドバイス、休み中や放課後の活動への立ち会い、事務手続きに必要な書類作成のサポートまで、いつも温かく見守っていただけて心強かったです」と藤本さんは言います。また、長期間に渡って応援してくれた家族への感謝も、多くのメンバーが口にしていました。

最後に、将来の夢を聞いてみると、「人を楽しませるモノをつくりたい!」と即答した藤本さん。「ゲームでも機械でも、人が楽しんでくれる何かを、そのプロジェクトのトップに立って生み出したいです」。井上君は「ロボット工学を極めたくてこの学校を選んだ選択は間違っていなかった。自分がどこまで成長できるか楽しみ。将来はモノづくりに携わりたいです」と話します。菊池君からは意外な答えが。「子どもの頃から高専ロボコンに出るのが夢だったので、それが叶ってしまって、この後の目標はどうしようかな…(笑)。とりあえず来年のロボコンもがんばります!将来はやっぱり、モノづくりで活躍できる人になりたいですね」。
見事なチームワークを武器に、大きく飛躍した明石高専。「全国優勝」の夢へのチャレンジは、これからも続いていきます。

明石高専ロボット工学研究部メンバー、細川先生、森下先生、そして「あさごん」。明石高専の皆さん、Honda賞おめでとうございます!