藤波貴久が黒山健一をつき離し、3年連続全日本チャンピオン!

クリーンで進む藤波、右にはオブザーバーの“クリーン”を意味する拳
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タイトル獲得速報
前回中部大会で黒山健一(ベータ)がマシントラブルを発生させ3位に転落。ここまでのランキングトップは4勝している黒山で変わらないが、藤波貴久(ホンダ)も3勝をあげて黒山を急追。今シーズンのチャンピオン争いは、最終戦、この東北大会で勝利した者が勝ちとるという図式となった。
会場となったスポーツランド菅生のセクションは、今シーズン全体から見るとやや難しめ。秋の日の晴天の1日ではあったが、ふかふかの斜面はライダーを苦しめることが予想された。
ふかふかの泥の斜面で藤波、黒山ともに3点の減点を喫して始まった最後の勝負は、宙に浮いた丸太を越える第3セクションで、藤波は丸太越えの直後にセクションを飛びだして5点。しかし直前にトライした黒山は、丸太を前にしてゲートマーカーを跳ね飛ばして5点。ここまでは、両者の減点は互角だった。
しかし、走りに堅さの見える黒山は、続く第4で1点、第5で2点と、らしからぬ減点を重ねていく。ここで黒山が長い下見に入った。それまで藤波に先がけてトライしていたのだが、藤波を先行させる作戦に出たようだ。藤波が先にトライした第6は両者ともにクリーン、しかし続く第7では、2点減点でセクションアウトした藤波に対し、黒山は減点5! 1ラップ中盤にして、藤波は黒山に対して6点のリードを奪う好調な滑り出しとなった。さらに難攻不落の最終第10セクションで、藤波3点に対して黒山が5点。1ラップ目にしての8点差は、両者の肉薄した実力を考えると、ほとんど決定的にも思えた。しかも、1ラップを終えた時点では、藤波に次いで2位につけるのは黒山ではなく成田匠(ヤマハ)だった。

秋の色濃い最終第10セクション
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しかし試合は最後までゆだんができない。現に、前戦第7戦で、黒山はマシントラブルを起こしている。同じようなアクシデントが、藤波に起こらないとも限らない。緊張はそのまま、チャンピオン争いのふたりは2ラップ目に突入する。
先に3点で通過している第1セクションを、藤波・黒山ともに5点となって始まった2ラップ目、藤波は第2セクション以降をすべてクリーンでつき進む。黒山にすれば、リードを奪われているうえに次々クリーンを叩きだされては、なすすべがない。さらに第6で3点、第7で2点と減点も出る。最終セクションで藤波3点に対して黒山1点と最後に気を吐いたものの、このラップもまた藤波が3点のリード。トータルでは11点差となって最終ラップを迎えた。
藤波の実力を知る黒山は、すでにこのあたりでは藤波の勝利を半ば予想し始めていたという。しかし藤波は、いまだ勝利の確信はない。緊張がゆるんで5点の失敗をふたつみっつ犯せば、簡単にその差を逆転することができるのだ。
3ラップ目、しかし黒山の調子は上向かないまま。藤波のリードは、着実に安全圏へと広がっていった。それまでクリーンしていた第2セクションで3点、空中丸太で5点を喫した黒山に対し、この両方をクリーンした藤波は、19点の貯金を得たことになる。
しかしここで、藤波の気持ちにわずかな油断がでたのか、第4第5第6と続けて減点を喫して、19点のリードが13点に縮まった。残り4セクション、藤波にふたたびいい意味の緊張が戻った。
そして第7の出口で黒山が5点。これが事実上勝負を決定づけた。残り3セクション、しかも第8第9はトップライダーにとってはクリーンセクションだ。藤波も、ここで初めて勝利を確信したという。
最後の10セクション、藤波は会心の1点でこれを抜け、黒山のトライを待たず優勝を決定、同時に3年連続4回目の全日本チャンピオンを決定した。
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今シーズン最後の表彰台、中央に優勝の藤波
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大会終了後、ファンにサインをして応援への感謝
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藤波 貴久(優勝)
今日勝てて、全日本チャンピオンを決めることができて、ほっとしています。第6戦近畿大会が、今シーズンの転機になりました。あのときが、今シーズンで一番つらかった。あの大会で負けたことで、もうあとがない崖っぷちに立たされましたし、勝つために練習方法などもずいぶん研究しました。その成果が第7戦の中部大会と今日の最終戦で発揮できて、こうして勝利をおさめることができました。健ちゃんとの点差はずっと把握しながら走っていたので、点差が広がっていることは知っていましたが、勝てると思ったのは、3ラップ目の7セクションで健ちゃんが5点となったときからです。それまでは、緊張の中でトライをしていました。今日優勝できて、チャンピオンを決めることができました。応援、ありがとうございました。
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