2019年より建造が始まった佐野造船所の
30FB Offshore Fishing Cruiser。
BF250Dが搭載され、いよいよ進水間近となった。
こだわりのフィッシング機能と、
マホガニーを多用した豪華な仕様に注目が集まっている。
■エンジン搭載へ
今年2022年2月22日、佐野造船所で建造中のワンオフ艇、30FB Offshore Fishing CruiserにHondaのフラッグシップ船外機BF250 Dが2基搭載された。
当初29フィート艇として設計されたことは
2019年6月公開の記事で紹介しているが、オーナーさんと佐野龍太郎社長が打ち合わせを繰り返す中で、1フィート延ばされて30フィート艇となった。またそれに合わせてエンジンもBF225Dの2基掛けからBF250Dの2基掛けへと変更された。
オーナーさんはSANO 23 Offshore Fishing Cruiserを長く乗りこまれてきた方で、サノブランドのOffshore Fishing Cruiserの船としての美しさ、乗りやすさ、堅ろう性などに惚れられ、30フィート艇をオーダーされた。
今回特筆すべきことはオーナーさんの希望でFB(フライブリッジ)仕様になったことだ。
ご自身がFBで操船している際の解放感、爽快感を求められているのに加え、ゲストへのサービスという一面も考えられているようだ。
■燃料タンクは760リッター
燃料タンクがデッキ下に収められたのは2021年の2月のことだ。容量は760リッター。
バウからデッキの造り込みが始まり、アフトデッキの製作に入ってまもなく、その作業は行われた。同時に100リッターの清水タンクとジェネレーター用の50リッターの軽油タンクも収められた。このあと燃料タンクの上にはデッキ補強のフレームが渡され、マリングレード合板が張られた上に、12mm厚のチーク材がデッキ全面を覆う豪華な仕様となる。
■操船は3か所で
SANO 30FB Offshore Fishing Cruiserのコントロールステーションは3か所。
キャビン内のメインステーションに加え、フィッシング対応のアフトデッキ右舷側に設けられたアウターステーション、さらにFB(フライ・ブリッジ)のアッパーステーションだ。
主だった装備は以下の通り。
●FB(アッパー)
・Honda純正マルチディスプレイ
・フルノGPS魚探
・フルノ自動操舵装置
●キャビン(メイン)
・Honda純正マルチディスプレイ
・フルノGPS魚探
・フルノ自動操舵装置
●デッキ(右舷側 アウター)
・フルノ自動操舵装置
ほかにマリン無線、バウスラスターのスイッチなども装備される。
オーナーさんは釣りスタイルが確立されたベテランで、様々な要望を設計の前段階から佐野社長に相談されてきた。外洋での釣りに精通する佐野社長はそのすべてを理解し、建造に活かしてきた。カスタム性を追求できるというのはワンオフ艇建造の魅力だろう。
■マホガニーに包まれたキャビン
「豪華なキャビンでゆったり寛ぐ」。これは佐野造船所が主眼を置く建造ポイントだ。
今回の30FB Offshore Fishing Cruiserも23 Offshore Fishing Cruiser同様、アフタークルーズの快適性を追求している。
同艇の建造過程の撮影は2019年から行ってきたが、日を追うごとにマホガニーの使用量が増えていくのには驚かされた。メインサロンもバウバースもギャレーも、目に付くところすべてにマホガニーが惜しみもなく使われているのだ。
「マホガニーに包まれたキャビン」という表現はけして大袈裟ではない。建造終了後のリポートでは、そのすべてをご紹介する。
個人的な意見だが、マホガニー色のキャビンで呑む酒は、ワインもスコッチもバーボンもついでに芋焼酎も、なぜだかうまくなるし酔いもはやくなる。
2月のエンジン搭載の直前、佐野造船所にSANO 23 Offshore Fishing Cruiser と30FB Offshore Fishing Cruiserの2艇が並んだ。剛性度が高く、外洋での走航性能に定評のあるハル形状は一緒ながらも、ハードトップ艇とFB艇という決定的な違いがある。だがひと目で姉妹艇とわかる。これはOffshore Fishing Cruiserシリーズの設計の基本コンセプトが明確だからだ。
そこには、より美しい艇体を求める佐野社長のこだわりもある。
例えばキャビンルーフの高さや、そのルーフからサイドデッキへと続く滑らかな下降曲線も、1mm、1度単位で見直しを行ってきた。FB形状やフロントウインドウの立ち上がり角やサイズなどもそうだ。あらゆる箇所を自身の審美眼を信じて形としてきた。紙の設計図とは別に第二の設計図が佐野社長の眼にはある。
建造者のこだわりが名艇を生む。
佐野造船所のOffshore Fishing Cruiserは、注目を集めるカスタムシリーズだ。
次回、進水、試走の様子を細部の情報とともにお伝えする。
大型の電動リールのためにマホガニーで造ってしまった豪華台座。これは一見の価値がある!
文・写真:大野晴一郎