OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2015.11.27

雪に閉ざされる湖

仙境、銀山湖 2

村杉小屋に逗留していた開高さんは、さまざまな山菜料理で腹を満たした。 メニューはいろいろあったがようだが、そのひとつに山菜をたっぷり入れ込んで作ったヤキメシがあった。それこそが後に「開高めし」と呼ばれるようになる開高さんのお気に入り料理である。 グルマンの開高さんはヤキメシに対してもこだわりがあり、エッセイ集「白いページ」の「食べる」という章に、ヤキメシは「あくまでもかるみをもってフワリと仕上げてほしい……」とある。 村杉は「開高めし」の元祖である。佐藤さんに「開高めし」を作っていただいた。 それは、ほのかに香る醤油の香りと、ひと粒ひと粒のお米が上質の油に軽く包まれたまろやかさの中に、シャキシャキの山菜を楽しむことができるヤキメシだった。天辺には紅ショウガがのっているのだが、これは開高さんのリクエストだったそうだ。 そしてもう一品、茹でたアケビの新芽に卵の黄身を落とし、醤油をさっとかけたものも開高さんの大好物だった。「木の芽の巣籠り」と名付けられたこの料理を、大口を開けてかき込む開高さんの嬉しそうな顔が想像できる。
開高めし。トッピングともいえる紅ショウガは開高さんのリクエストだった。
北ノ又川にかかる石抱橋からの眺め。「河は眠らない」の石碑が見える。
開高さんの「河は眠らない」の石碑。直筆を拡大して彫った。
村杉に飾られた開高さんの直筆の色紙。右側の「釣りの話をするときは両手を縛っておけ」というのは、村杉主人の佐藤洋一さんの父上の進さんが釣り人に穴場を教える時、肩幅ほどに両手を広げて話しているのをよく見かけ、色紙の言葉となった。開高さんの著書によれば、もともとロシアの諺にある言葉だそうだ。
3カ月の滞在の後、開高さんは9月1日に山を下りた。この間、釣り上げたイワナは31匹。そのすべてをリリースした。当時、キャッチ&リリースは一般的には行われていなかったが、銀山湖の将来を考え、自ら範を垂れたのである。
今、銀山湖において全長15センチ以下のイワナやヤマメなどの幼魚を採捕することは、新潟県内水面漁業調整規則ならびに水産資源保護法により禁じられている。幼魚は速やかにリリース。これが基本である。
ところで銀山湖に棲む魚のうち、ワカサギには禁漁期間がない。釣りが通年で可能、と言いたいところだが、おしいかな冬季は湖畔に辿り着く術が無い。銀山湖のワカサギは人が氷を割って垂れる釣り針とは無縁の魚だが、イワナに捕食される。だから、イワナを狙うならワカサギを探せ!そう言い切っても良い。
そのワカサギたちは春に産卵期を迎え、流れ込みに群れが見られるようになる。
Hondaの4ストローク船外機の静粛性に任せて湖面を行き、運よくワカサギの大群を見つけることができたら、即、ルアーを投げ込み、イワナとの駆け引きを楽しめばよい。
この記事が公開されるころ、すでに銀山湖は閉ざされている。
大イワナに思いを馳せ、タックルを磨きながら解禁日を待つのも楽しいものだ。
銀山湖には遊覧船が走る。周遊コースや銀山平とダムをつなぐコース、あるいは尾瀬口とダムをつなぐコースなどがある。
参考文献: フィッシュ・オン(開高健著・新潮社版)/ 白いページI、II(開高健著・角川文庫)

取材協力: 村杉
〒946-0084 新潟県北魚沼郡湯之谷村銀山平温泉 TEL:02579-5-2451(冬季02579-5-2528)
営業期間:4月10日〜11月10日
文・写真:大野晴一郎
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