Honda Magazine

Hondaオーナーのみなさまに、
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「もしも!のために、一日でも早く」後付けできる「踏み間違い加速抑制システム」開発〜販売までの裏側 「もしも!のために、一日でも早く」後付けできる「踏み間違い加速抑制システム」開発〜販売までの裏側
2022.3.18
アクセルとブレーキの踏み間違い。
みなさんは、思い当たること、ないですか?

ペダルの踏み間違いが、よく報道になります。みなさんも高齢の親御さんや祖父母の運転が不安になること、ありませんか? でも、ペダルの踏み間違いは、実は高齢者だけの話でもないのです。2019年の警視庁の調べでは、アクセルとブレーキの踏み間違いによる交通事故の年齢を割合で見ると、65歳以上が41%ですが、29歳以下の22%を筆頭に、実に6割近くが65歳以下なのです。“うっかり!”は、決して高齢者の方だけでなく、すべてのドライバーに起こりうることなのです。

円グラフ円グラフ

踏み間違い事故の多発を受け、2019年、政府から自動車メーカーに「後付け加速抑制装置の開発・実用化」の取り組みを進める要請*が出ました。Hondaは、幅広く新型車にHonda SENSINGの装着を推進していましたが、後付け装置の販売は、当時なかったのです。一人でも多くのドライバーの“うっかり”による、踏み間違いを防げるなら……交通事故死者ゼロ、『安心して自由に移動できる社会』を目指しているHondaの、一日でも早い発売に向けた取り組みが始まりました。新型車でのHonda SENSINGの装備を拡充と同時に、既に販売したクルマへの安全装備の拡充も重要な課題と認識したHondaは、このプロジェクトを、わずか数ヶ月という異例の早さで実現したのです。その短期間のなかでは、多くの課題との向き合いがあったそうです。今回、Honda Magazineでは、そのレポートをお届けします。

∗「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」でとりまとめられた「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」において、高齢者の安全運転を支える更なる対策の推進のための取組みとして、「既販車への後付けの安全運転支援装置の開発を促進すること」等された。

一日でも早く

2019年、政府からの要請を受け、「できるだけ早く、後付け加速抑制装置の販売を行う」とHondaが発信したのが、6月中旬のことでした。そして、そのわずか数日後には、プロジェクトチームを発足し、開発をスタートしました。

まず、最初の課題は、Honda独自の技術開発をするか否か、ということでした。もともとHondaという企業は独自性を大切にする性格なので、イチから開発を推進するのが当たり前の選択肢でした。
ですが今回は、“一日でも早く”お客様に後付け加速抑制装置を届けることが大切。まずはその議論と、既存のシステムを調査することから始めました。その結果、「今回は一日でも早く販売を実現し、お客さまに届けることが最も大切なこと。そのためには、既存の技術を積極的に活用していこう」という結論になりました。こうした検討を経て、わずか二カ月で、発売へ向けたロードマップが描かれました。

この決断は異例

この決断、実はHondaではかなり異例のことです。HondaはHonda SENSINGとして運転支援システムの開発技術は有していましたから、独自のシステムの開発も十分、可能だったと思います。が、あえて独自開発よりも、業界全体で提供できることが大切。競合他社と同じ技術を活用できるのであれば、その方が世のためになると判断した。短期間で技術的な研究や課題をクリアしながら最善策を模索する、大きな決断だったと思います。三ヶ月後には、Honda車の純正アクセサリーを企画、開発、販売やカスタマイズ提案をするHondaのグループ会社、ホンダアクセスとの、販売に向けた推進が始まりました。

こうした異例の判断でスピーディに装置の実現に目処はついたのですが、次は、販売を引き受けたホンダアクセスを中心に、販売への実現化のなかで、課題が山積みになったのです。その理由は、今までさまざまな純正アクセサリーの販売実績が当然多くありましたが、「安全技術に関わる後付け装置の販売」というものは、初めての試みだったからです。

今回の装置は、あくまで、ドライバーの踏み間違いを警告し、加速を抑制するもの。決して自動でブレーキがかかる装置ではありません。超音波センサーで障害物との距離を測定し、警告音でお知らせを行うとともに、クルマがアクセルを踏まれていない状態=クリープ現象の状態にします。ドライバーがいくらアクセルを踏んでもクリープ現象でしか進まないわけです。ですからブレーキは、あくまでもドライバー自身がかけないと停止しません。

「装置が働くと、アクセルを踏み込んでもスカスカした状態になるんです。今まで体験したことのない、急にクルマがニュートラルになる様な感覚は、すごく認識しやすかった」

こう述べているように、その警告や加速抑制の効果は高いのですが、システムの機能はあくまでも加速の抑制であり、ブレーキ操作は自分で行う、ということを、しっかりオーナーのみなさんに伝えなければなりません。また超音波センサーの検知認識には、限界もあります。特性上、超音波を反射しない対象物は認識しないことも。

こうしたことからホンダアクセスも、販売店であるHonda Carsのスタッフも、一丸となって勉強と体験を重ねました。さらに、オーナーのみなさんに正確に伝え、同意いただくには、どうしたら良いだろう……その伝え方を試行錯誤する日々となりました。Hondaもホンダアクセスも初となった後付けタイプの運転支援システムの販売は、担当者たちがクリアすべき課題が山積みの、新たな挑戦への道だったのです。

松田恭一
松田恭一

数々の課題を乗り越え、後付けが可能な「踏み間違い加速抑制システム」の販売が実現しました。取り付け可能な対象車は限定されますが、後付けで運転支援装置が付けられる安心感が、多くのHondaオーナーのみなさんに支持されています。

ぜひ、興味がわいたオーナーの方、詳しくはこちらのサイトをご覧ください。もしくは、Honda Carsのスタッフにご相談ください。


「踏み間違い加速抑制システム」。販売現場の声をレポートした記事はこちらから!

踏み間違い加速抑制システム「きっかけはお店にあったパンフレットでした」
踏み間違い加速抑制システム踏み間違い加速抑制システム

2050年には「交通事故死者ゼロの社会を目指す」Hondaの取り組みのひとつ、その裏側をレポートしました。


踏み間違い加速抑制システムは、ドライバーの運転支援機能のため、各機能の能力(認識能力・制御能力)には限界があります。道路状況、車両状態および天候状態等によっては作動しない場合があります。各機能の能力を過信せず、つねに周囲の状況に気をつけ、安全運転をお願いします。

踏み間違い加速抑制システムは、状況などでは正常に作動しない場合があります。踏み間違い加速抑制システムを装着した際には、必ず取扱説明書でご確認ください。

踏み間違い加速抑制システムは、自動でブレーキが作動するものではありません。必ずドライバーご自身がブレーキを操作して停車してください。

■安全にお使いいただくために次のことを必ずお守りください。お守りいただかないと、思わぬ事故につながるおそれがあり危険です。

・安全運転を行う責任は運転者にあります。運転者がシフトポジションやペダルの位置および常に周囲の状況を把握し、安全運転に努めてください。
・本製品の機能に頼っていると思わぬ事故につながるおそれがあります。
・車両信号を制御または遮断する後付け装置を装着しないでください。誤作動や思わぬ事故につながるおそれがあります。(例:TVキット、スロットルコントローラーなど)


■加速抑制機能について正しくご理解いただくために

・踏み間違い加速抑制システムは、あらゆる状況でアクセルペダルの踏み間違いや踏みすぎによる衝突を軽減したり防止できるものではありません。
・自動でブレーキはかかりません。必ず運転者ご自身でブレーキペダルを踏んで停車してください。
・登坂路などで車が進行方向とは逆方向に下がり続けると、エンジン※が停止することがあります。必ずご自身でブレーキペダルを踏んで停車してください。
・踏切内に閉じ込められたときは、遮断機を障害物と検知することがあります。そのときは慌てずに一旦停車し、アクセルペダルを踏み続けるか機能オフスイッチを押し、踏切から出てください。
・アクセルペダルを約4秒以上強く踏み続けていると加速抑制機能が解除され、ゆるやかに加速します。
※ハイブリッドシステムおよびエンジンを、エンジンと表現しています。