ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論デシャンボー選手のスイングから学ぶ!小さな力で楽に飛ばす方法

2021.03.11


回転系のスイングは若者だけのもの?

プロゴルフの世界でボディターンが見直されていることは、以前ご紹介した「ボディターンスイングのコツ|右手の使い方が上達のカギ!」の記事にてお伝えしましたが、ここに来てその傾向にはさらに拍車がかかっているようです。

可能な限り両腕を伸ばして、大きなスイングアークを作ろうという意図が見えるデシャンボーのスイング。体を素早くスピンさせることで、シャフトをしならせクラブヘッドを加速させる。

PGAツアーではブライソン・デシャンボー選手が回転系のスイングで350ヤード超のロングドライブを連発し、コースマネジメントの概念を根本から変えてしまいました。また、ドラコンの世界ではカイル・バークシャー選手が活躍していますが、彼のスイングも体の強烈なスピンが特徴的です。世界を代表するふたりの飛ばし屋に共通するのは精度が高いことで、体を回転しながらクラブを上手に使うことで「飛んで曲がらない」を実現しているといえます。

これに触発されて、世界中のヤングゴルファーたちが回転系のスイングにトライし始めたというと少し大袈裟ですが、「飛ばすには体の回転が必要だ」という共通認識が生まれているのは間違いないでしょう。世界最高峰の舞台で活躍するには350ヤードに迫る飛距離が必要で、右足で地面を蹴って体を強烈にスピンさせながら打つことで、それが可能になるのです。もちろん活躍する方法は他にもありますが、飛距離は魅力的なので自分の限界に挑戦する若者が増えるのは不思議ではありません。

この回転系スイングを若者やマッチョに独占させておくのはもったいないというのが今回のテーマ。むしろ非力な人ほど回転を使って打ったほうが楽に飛ばせるのです。齢70を超えるようなベテランゴルファーが、体をくるんと回して上手に打つのを見たことはありませんか? あれは理にかなっているし、ゴルフを長く楽しむためのコツともいえます。

テニスのバックハンドに
飛ばしの秘密がある!?

回転系のスイングをわかりやすくいうと、テニスのバックハンドストロークのようなイメージです。経験者ならピンとくるはずですが、バックハンドで打つと思いのほか強い球が打てます。利き腕を振るフォアハンドで強い球が打てるのはイメージしやすいと思いますが、バックハンドを正しく打てると、「えっ!?」と自分で驚くぐらい強くてスピードのあるボールが打てます。
これは体の回転と腕の振りが同調するからで、ゴルフスイングにおいてもそれは重要な基本です。「引き手」あるいは「リードアーム」と呼ばれる腕(右打ちの場合は左腕、左打ちの場合は右腕)でクラブを引っ張りながら、地面反力を利用して体をくるんと回転させることで、エネルギーをロスなくボールに伝えることができます。テニスのバックハンドと同じく、うまくできればそれほど力は要りませんし、腕を振っている意識もあまりないはずです。

このシステムを上手に使っているのがラファエル・ナダル選手で、左利きのナダル選手の両手打ちバックハンドはとても参考になります。

ラファエル・ナダルの両手打ちバックハンドは、ラケットを平行に引いてから打つ直前に、左手を掌屈させてラケットの先を下に垂らす動作が特徴的。このように道具(ラケット)を右回りさせることでより大きなエネルギーをボールに与えることができる。

ナダル選手はラケットを腰の高さで平行に引いてから、打つ直前に左手を掌屈させてラケットを少し下に落とします。そしてそのまま右回りさせながらラケットを起こしてボールをヒットするのです。
体を回転しながらこのラケット操作を行うことで、強烈なショットを繰り出しているのであり、ここでも「道具を右回りさせる」ことが重要な役割を果たしているといえるでしょう。ナダル選手はゴルフもプロ級の腕前で、トーナメントに出場するほどですが、テニスとほぼ同じスイングで打つことは注目に値します。

重要なのは、ただ回転すればいいというわけではないことです。デシャンボー選手は腕を長く使って大きなスイングアークを作ると共に、強烈に体を回転させ、その時間差でシャフトをしならせますが、飛距離の秘密はそれだけではありません。切り返してクラブをしっかり右回りさせているのです。このちょっとした操作によってシャフトはよりしなり、飛距離を伸ばすことができるのですね。

パワーゴルフの時代になり、「飛距離アップには筋トレだ!」ということでジムに通うゴルファーが増えていますが、クラブを上手に使うことはそれ以上に大事といえます。それに自分でできる範囲の体の回転が加われば、けっこう球を遠くに飛ばせるものです。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。


「ゴルフ理論」の記事一覧へ