海のルアーフィッシングの中でも、誰もが始めやすく、近年、ますます人気が高まっているアジング。しかし、この釣りの面白さは手軽さだけではありません。

アジングの面白さであり、なおかつ釣果を伸ばすためのコツに、「いかにアタリを取るか」という要素があります。アタリの取り方は、釣りの種類によっても異なり、なかにはウキやサオ先の動きが一番のものもありますが、アジングでは何より「手もとに伝わる振動」です。この振動を明確に手もとに伝えるために、アジングの道具は進化してきました。

シンプルな道具を繊細に使いこなすのがアジング。なかでも「手もとに伝わる振動」はすべての基本になる

アジングではジグヘッドリグ(小さなオモリが一体になったハリにPVC製のワームを刺して使う仕掛け)で釣ることを「ジグ単」と呼びます。その際、ジグヘッドは1g台の軽量なものを使うのが基本になっています。そのジグヘッドをなるべく遠くに投げて操作するため、ロッドはウルトラライト(UL)クラスの張りのあるものを使います。それらは50g前後とかなり軽量になるので、リールも1000~2000番クラスの軽量なモデルを選びますが、同時に機能を見極めて選択するアイテムが「ライン(釣り糸)」になります。

アジング用のラインは、これまでPEやフロロ(フロロカーボン)が主流でした。しかし、ジグ単の釣りで現在よく使われるのは、エステルと呼ばれるポリエステル製ラインの0.3号です。もちろん、PEやフロロカーボンは今も使われていますが、アタリを取る楽しさを知るためには「エステルラインを使うことが断然おすすめ」という状況になっています。

基本のジグ単を駆使して釣りあげたマアジ

一般的な釣りでメインの釣り糸として使われるのは、ナイロン、フロロカーボン、PEが挙げられます。しかし、これらよりもはるかに伸びが少ないのがエステルラインです。アジングでは小さなアタリや潮の流れなど、さまざまな情報を得るための「感度」が求められます。その際は、上述のような高感度ロッドを使うことも前提にはなりますが、ラインにこだわることでより多くの情報量が得られます。釣り糸の先から伝わってくる情報をロスなく手もとまで伝えてくれる、伸びの少ないラインを選ぶことが大切なのです。

また、釣り糸では比重も感度を高めるためには重要な要素で、PEは海水よりも比重が小さいので浮きやすく、フロロカーボンは海水よりも比重が大きいため、(特にアジングにおいては)沈み過ぎやすいという性質があります。アタリは距離が遠い、つまりラインが出ている時ほど感じ取りにくいものですが、エステルは比重が海水に近く水中で直線状態になりやすいこともあり、伸びの少なさと相まって最短距離でアタリを伝えやすいのです。なお、その場合はPEを使用する場合と同じように、先端にフロロのリーダーを付け足すことで(0.8号を30cm程度。結束方法はトリプルサージャンズノットたわら結びがおすすめ)、ジグヘッドとの結束部分のイト切れの心配が減り強度が確保されます。

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アジング専用のエステルラインが各社から出ている。150m巻きを購入し、75mずつ2回分に分けて使うのがおすすめ。糸が傷んでガイドに擦れる音などが気になり始めたらその部分をカットするが、残りが少なくなったら全体を取り換える

さて、伸びが少なくアタリの伝達に優れているのなら、エステルラインは他の釣りでも活躍しそうです。しかし、アジング以外でエステルをメインラインとして使っているのは、他にはエリアトラウト(管理釣り場のニジマス釣り)くらいです。エリアトラウトとアジングは、対象とする魚のパワーが近いということもありますが、感度を求めつつ軽量なルアーを飛ばすために細いメインラインが必要という点が共通しています。そう、エステルラインには「細いから使いやすい」という要素があるのです。

エステルラインは伸びが少ない分、張りが強くて「硬い」性質があります。釣り糸は硬いと巻きグセが付きやすく、リールを使う釣りならバックラッシュが起きやすくなるといったデメリットがあります。その点、アジングでよく使われる0.3号くらいまでの細さであれば、そもそも直径が小さい分、張りが弱くなって扱いやすくなります。逆にもっと太い糸が必要な他の釣りでは、メリットよりもデメリットのほうが上回りやすいのです。

このようにユニークな性質を持っているエステルですが、おかげでアジングでは、「吸い込みアタリ」と言われるような、繊細でわずかな感触も感じ取らせてくれます。また、ジグ単の操作もよりダイレクトなものにしてくれます。すると潮の変化も分かりやすくなり、たとえば「20m先ではアクションを掛けると軽く感じたのが、手前のある場所を境に重くなった」という場合、キャストした範囲に潮目などの変化があることが把握できます。アタリを感じた時のアワセも、エステルならパワーロスが少ないので、あらかじめ「小さく鋭く」を心掛けておけば、細い糸を切ることなく、なおかつしっかりフッキングできます。つまり、アジングのテクニカルな奥行がぐっと広がるのです。

日中もチャンスはあるが、アジングのメインタイムは日没後。その中でエステルの高い感度が生きてくる
ジグ単の釣りではエステルがおすすめだが、アジングでも他の釣り方なら、高強度なPEや高比重なフロロカーボンが活きるシーンもある

エステルラインには透明なものから着色されたものまでたくさんの種類があります。まずは見た目の好みで選んでも問題ないですが、ひとつ参考にしてほしいのは、ラインの硬さや強度と着色の関係です。一般的に透明なものは同じ太さでも強度が高く、硬いことが多い一方、着色されたものはしなやかになりやすい傾向があります。アジング人気の高まりにともない、各社から多彩なエステルラインが発売されていますが、その中でも製品によってラインの硬さが少しずつ異なるので、自分のスタイルにより合ったものを見つけられると快適になります。釣り糸にもこだわることで、アジングをさらにディープに楽しんでみてください。

一尾の魚との出会いを存分に楽しみたい
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※このコンテンツは、2022年3月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。