釣り糸は一般的に細いほうが有利です。魚に見破られにくいのはもちろん、仕掛けが自然に漂う、仕掛けを遠くまで飛ばせる(摩擦抵抗が少ないため)など、多くの理由があります。ただ、細い釣り糸を使えば当然切れやすくもなります。釣り糸は何もしない真っ直ぐな状態が最も丈夫です。この状態で発揮される強さのことは「直線強力」と言います。

しかし、どんな釣り糸であっても、釣りをする時には何かしらの「結び(ノット/フィッシングノット)」が必要になります。

どんな大ものも糸が切られてしまったら手にすることはできない。上手な釣り人ほど、魚を掛ける技術と同じくらい、釣り糸の結び方にもこだわっている

ビギナーが釣りをしていると、いつの間にか釣り糸に結び目が出来てしまうことがあります。風にあおられた糸が途中で結ばれてしまうことなどが主な原因ですが、いずれにしてもその結び目を放っておくと、肝心な時にそこから切れてしまいます。理由は結び目があることで、強い力が掛かった時に負荷が集中し、最後は「締め切れ」が起きるためです。この時、急に糸が締まることによる熱(摩擦熱)も発生しており、それが釣り糸を弱くするという要素もあります。釣り糸の結びも同じで、結ぶこと自体には、どうしても釣り糸の強度を低下させる要素が含まれます。だからこそ、釣りが上手な人というのは、その中で「最大限に切れないように気を遣う」という作業をしています。

近年はPEラインとリーダーを結ぶ摩擦系ノットなど、より多彩な糸の結びが登場していますが、まずはどんな結びにも共通する基本を押さえましょう。これから釣りを上達したいという人は、たとえば以下のことを心掛けて「釣り糸の結び方」を練習してみてください。きっと役立つはずです。

「釣り糸の結び方」ポイント

  • ●正しい形で結ぶ。結び目の形を崩さない。
  • ●締め込む前にツバや水で結び目を湿らせる。
  • ●締め込みは「最初はやさしく」「仕上げにじわっと強く」を守る。
  • ●本線と端糸がある場合は両方を均等に締める。

正しい形で結ぶというのは、たとえばハリの軸に釣り糸(ハリス)を巻き付ける際に、前の結び目を追い越したり、見本と違った崩れた形にならないようにするということです。「ちょっとおかしいけれど、まぁいいか」というのは、釣り糸の結びでは絶対にやらないようにします。最初はそれが難しいのですが、きちんと真似をしようという意識をもって釣り糸の結び方の解説を見ていると、そのためのコツ(ある部分を押さえておく、適度な余り糸の長さにしておく、手だけでなく口も上手く使う……など)も言及されている場合があるので、そうしたポイントを見落とさないようにします。

基本の結び12種を動画で解説!
釣り糸を結ぶ時は、両手はもちろん口も使うことで各部を均一に締められることが多い

残りはどれも「締め込み」に関するコツです。一番肝心なのは「急な締め込みをしない」ということになりますが、締め込みは摩擦熱が発生する最大のポイントです。釣りの上手な人は、締め込みの前に結び目を軽く口に含むことがよくあります。これはあらかじめ結束部を湿らせておくことで、滑りをよくするとともに摩擦熱の発生を抑えるのがねらいです。そして結び目を締め込む際は「じわりと力を入れる」ようにします。イメージとしては、「全体の9割まではじっくり締め込み、最後の1割でしっかり締め込む」ようにします。最初から「キュッ」と強く締めてしまうと、瞬間的な力が掛かることで摩擦熱が発生するとともに、目に見えない締め残りも出来やすくなります。そして締め残りがあると、あとで大きな力が掛かった時(大きな魚がヒットした時など)、その残り部分が急激に締め込まれることによってラインブレイクが起きやすくなります。

磯のメジナ釣りは、細い糸で力の強い魚をねらう釣りの1つ。結び目を締め込む時は、釣り糸同士の時も、ハリに糸(ハリス)を結ぶ時も、まずは口でしっかり接続部を湿らせてから、ジワッと締め込むようにする
例外的に渓流釣りの極細糸(0.1~0.4号といった糸)を使う釣りでは、最後に締め込み過ぎずに、若干の余裕を持たせておくほうがいいという人もいますが、釣り糸同士を結ぶ時も、釣り糸とハリを結ぶ時も、最後はしっかりと締めるのが基本です。釣り糸同士の接続で本線と端糸がある場合、本線同士だけでなく、端糸も同じように締め込むようにするほうがよいというのも、そうすることによって目に見えない締め残りをなくすためです。

0.1号といった極細糸を扱うこともある渓流のエサ釣り。実際の釣りでは、一定の強度が保てれば「素早く簡単に結べる」といった要素を重視する場合もあるが、まずはできるだけ強い結びを作る基本を押さえたい

釣り糸の性能がどんなに上がっても、その機能を100%引き出すのは釣り人です。釣り糸を上手に結ぶ点に、大いにこだわってみてください。

※このコンテンツは、2021年8月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。