日本に全部で8つある「海なし県」出身で、子供の頃から川釣りに親しんで来た加藤るみさんが、そのすべての県に出かけ、その場所ならではの魚たちを追い求める旅に出発! 時にはその道のエキスパートに助言も仰ぎながら、ジャンルもフィールドも全く違う数々の釣りに、体当たりでチャレンジしていきます。一人のアングラーとしての成長もめざすこの旅。全8県の水辺を釣り尽くした時、彼女が見つける〝新しい景色〟とは?
第5回は、栃木県でカジカをねらいます。カジカは日本の清流に生息する底生性の魚で、岩陰や流れの緩やかな場所を好む小魚。ゴツゴツした姿は、初めて見ると少し怖そうにも思えるのですが、実は可愛らしい顔をしており、さらに非常に美味しいのだとか。ただ、体は周囲に溶け込む保護色で警戒心が強く、忍者のようで釣りも一筋縄では行きません。そんなカジカに出会うべく、ユニークな釣りにチャレンジします!
こんにちは、加藤るみです。「海なし県」全8県をめぐって川釣りを制覇する旅も、いよいよ秋に突入! 今回はカジカ釣りにチャレンジです。
カジカは日本の清流に生息する小魚。しかし各地の川でダム建設や河川工事が進むときれいな水が流れる石と石の隙間が埋まっていき、多くの場所で姿が見られなくなっていきました。カジカはホタルと並んで、清流の指標的な生き物とされることもあります。
そんなカジカですが、栃木県では今も釣りが季節の風物詩として楽しまれています。一筋縄では行かないようですが、その魅力を体感すべく、私も挑戦してみることにしました!
カジカはきれいな水が流れる石と石の隙間に生息しています。栃木県を流れる鬼怒川や那珂川といった川は、もともとそうした場所が多かったのですが、さらに平野部を流れる区間が長いため、昔からカジカを釣りやすい環境にありました。
県内の釣具店では、釣りシーズンの秋になるとカジカ釣りコーナーが設置されます。釣りには日釣券(渓流釣り用と同じもの)が必要ですが、代表的な釣り場である鬼怒川水系なら11月いっぱい釣りができます。
そもそも身近な川でたくさん獲れて、焼いて干せば長期保存もできるカジカは、食糧事情が乏しかった昔の山里において貴重な蛋白源でした。
「ヤマメ、イワナ、アユといった川魚も価値はもちろん高いのですが、春の渓流魚、夏のアユと並んで、冬を前に秋にねらえるカジカは季節的にもありがたい存在。そうした海なし県における食用魚としての価値と、季節ごとの釣りとしての純粋な遊びの要素が重なって、栃木県には今もカジカを釣る文化が残っているんですよ」と先生。
そんな背景を知ると周囲の景色も違って見えます! ただ、肝心の釣りは「カジカのいそうな石の隙間を見つける」という基本が思った以上に難しいのです!