STEP :
PM 1:07
マゴチが釣れたホントの理由

ミッションの1/2を達成!?

チャンスタイム到来、そしてバイバイ

快晴の予報どおり、雲ひとつない空が広がった。春らしくない強い日差しが照りつける。早朝の冷え込みはどこへやら、フリース1枚でも汗ばむくらいの陽気だ。
だが、あいかわらず魚の反応はない。「今日はドライフライで行きます」と宣言していた八木さんも、ライズがまったく見られないので仕方なくウエットフライに作戦変更。
川原を舞う虫たちの姿も少しは確認できたが、ヤマメを水面に引き寄せるほどの数ではないようだ。
一方、佐藤さんも苦戦していた。この流域で多く見られるクロカワムシをエサに、流芯ではなく、この時期のヤマメが潜むであろう緩い流れの筋を丹念に探る。
比較的有名なエリアだったこともあり、周囲には数名の釣り人が入っていたが、魚がかかってサオを曲げたのは2名だけ。どちらも対岸側のポイントであった。
「正午を挟む2時間がチャンス」と2人は言っていたが、もう13時だ。ひょっとして……やっちゃったか?

満開のサクラとボクらの挽回

その時、着信音が鳴った。佐藤さんがベストのポケットから携帯を取り出す。編集長だ。
編集長「釣れたら電話しろって言ったのに、こんな時間まで何やってんだよ?」
佐藤「いやぁ、だから、釣れてないッス」
編集長「なにィ~!!(怒)」
八木「でも、ミッションの半分はクリアしましたよ」
編集長「でかした! そうかぁ、八木は釣ったのかぁ、今日はフライのほうがよかったんだな」
八木「そうじゃなくて、満開のサクラを発見しました」
編集長「……ばかやろーッ!」
気温は10℃近く上昇したが、5℃だった水温は午後になってもわずか7℃。
ダム放水による増水を確認した朝の時点で、別のエリアに移動すべきだったのかもしれない。
編集長「しょうがないなあ。絶対に釣れる場所を知ってるんだけど、もう時間もないからなぁ……」
八木さんはハッチを求めて歩き回るも、まったくヤマメの気配がない。佐藤さんのエサ釣りも不発。情報を求めて地元の釣り人に話を聞くと「今日はダメだね」との返答
八木さんはハッチを求めて歩き回るも、まったくヤマメの気配がない。佐藤さんのエサ釣りも不発。情報を求めて地元の釣り人に話を聞くと「今日はダメだね」との返答
春のヤマメ釣りはランチタイム=チャンスタイムなので、普段ならゆっくり休憩するヒマはない。愛妻弁当をのんびり食べていられるのは、魚が釣れてない証拠
春のヤマメ釣りはランチタイム=チャンスタイムなので、普段ならゆっくり休憩するヒマはない。愛妻弁当をのんびり食べていられるのは、魚が釣れてない証拠
春のヤマメ釣りはランチタイム=チャンスタイムなので、普段ならゆっくり休憩するヒマはない。愛妻弁当をのんびり食べていられるのは、魚が釣れてない証拠

とっておきのヤマメポイントとは?

一路、神流川へ

“絶対に釣れる”なんて言われて、心がグラつかない釣り人はいない。編集長から情報を聞き出した2人は、大急ぎで片付けをはじめた。
八木「急げ! 春の日は短いぞ!」
佐藤「っていうか、最初からそのポイントを教えてくれりゃいいのに……」
タックルを車に積み込んで再び高速へ。関越道から上信越自動車道を経由して、コンニャクで有名な下仁田で降りる。さらに山間の道をひた走ること約40分、群馬県上野村を流れる神流川に到着した。
そう、ここが編集長とっておきの一押しポイントである。神流川のこのエリアはヤマメの放流量が多く、「キャッチ&リリース(C&R)区間」が設定されているため、魚の数が保たれているのだ。
利根川に比べれば明らかにハードルは低いのだけれど、まぁ、2人のレベルに即した軌道修正ってことで、ご容赦ください。
トンネルの向こうはヤマメの桃源郷……でありますように。釣り人はいつもデイドリームビリーバーなのだ
トンネルの向こうはヤマメの桃源郷……でありますように。釣り人はいつもデイドリームビリーバーなのだ
C&R区間では釣った魚の再放流が義務づけられていて、エサ釣りは禁止。佐藤さんにはやや不利な条件か

キャッチ&リリース区間で連続リリース!?

神流川の水温は10℃前後と温かく、川虫のハッチも多数見られた
神流川の水温は10℃前後と温かく、川虫のハッチも多数見られた
河川の釣り場には駐車場がないことも多い。通行の邪魔にならないように停めよう。また、釣りは朝が早いので騒音にも配慮したい
河川の釣り場には駐車場がないことも多い。通行の邪魔にならないように停めよう。また、釣りは朝が早いので騒音にも配慮したい
「役場前」と呼ばれるポイントに車を停めると、佐藤さんはすぐに下流へと歩き去った。次の橋までの区間はC&R専用エリアで、エサ釣りは禁止されているのだ。
八木さんは利根川で使っていたものより短い7.6フィート・3番のロッドを選び、駐車場のすぐ前で釣りをはじめた。結んでいるのはCDCダン、もちろんドライフライだ。
ヤマメの反応は早かった。中洲のヘチにある緩やかな流れで、水面を滑る白いフライが消えた! と思ったら、あえなく空振り。八木さんはもう一度、同じ筋を流す。
2度、3度と水面が割れるのだが、なぜかフッキングが決まらない。「フライが合ってないのかも。サイズを落としてみます」。しばらく間を空けてからアプローチすると、今度こそ乗った! ところが、すぐにラインがテンションを失う。バレた……。
しばらくここで粘ったが、やはりランディングには至らず、見切りをつけて下流へ向かうことにした。
カモの尻にある浮力の高い羽毛(CDC)をマテリアルに使ったCDCダン
カモの尻にある浮力の高い羽毛(CDC)をマテリアルに使ったCDCダン
午後も遅くに到着したため、すでに数人の先行者がいた。ほかの人がねらいにくいスポットを想定してロッドを振る
午後も遅くに到着したため、すでに数人の先行者がいた。ほかの人がねらいにくいスポットを想定してロッドを振る
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。