ミッションの1/2を達成!?
チャンスタイム到来、そしてバイバイ
快晴の予報どおり、雲ひとつない空が広がった。春らしくない強い日差しが照りつける。早朝の冷え込みはどこへやら、フリース1枚でも汗ばむくらいの陽気だ。
だが、あいかわらず魚の反応はない。「今日はドライフライで行きます」と宣言していた八木さんも、ライズがまったく見られないので仕方なく
ウエットフライに作戦変更。
川原を舞う虫たちの姿も少しは確認できたが、ヤマメを水面に引き寄せるほどの数ではないようだ。
一方、佐藤さんも苦戦していた。この流域で多く見られるクロカワムシをエサに、流芯ではなく、この時期のヤマメが潜むであろう緩い流れの筋を丹念に探る。
比較的有名なエリアだったこともあり、周囲には数名の釣り人が入っていたが、魚がかかってサオを曲げたのは2名だけ。どちらも対岸側のポイントであった。
「正午を挟む2時間がチャンス」と2人は言っていたが、もう13時だ。ひょっとして……やっちゃったか?
満開のサクラとボクらの挽回
その時、着信音が鳴った。佐藤さんがベストのポケットから携帯を取り出す。編集長だ。
編集長「釣れたら電話しろって言ったのに、こんな時間まで何やってんだよ?」
佐藤「いやぁ、だから、釣れてないッス」
編集長「なにィ~!!(怒)」
八木「でも、ミッションの半分はクリアしましたよ」
編集長「でかした! そうかぁ、八木は釣ったのかぁ、今日はフライのほうがよかったんだな」
八木「そうじゃなくて、満開のサクラを発見しました」
編集長「……ばかやろーッ!」
気温は10℃近く上昇したが、5℃だった水温は午後になってもわずか7℃。
ダム放水による増水を確認した朝の時点で、別のエリアに移動すべきだったのかもしれない。
編集長「しょうがないなあ。絶対に釣れる場所を知ってるんだけど、もう時間もないからなぁ……」
とっておきのヤマメポイントとは?
一路、神流川へ
“絶対に釣れる”なんて言われて、心がグラつかない釣り人はいない。編集長から情報を聞き出した2人は、大急ぎで片付けをはじめた。
八木「急げ! 春の日は短いぞ!」
佐藤「っていうか、最初からそのポイントを教えてくれりゃいいのに……」
タックルを車に積み込んで再び高速へ。関越道から上信越自動車道を経由して、コンニャクで有名な下仁田で降りる。さらに山間の道をひた走ること約40分、群馬県上野村を流れる神流川に到着した。
そう、ここが編集長とっておきの一押しポイントである。神流川のこのエリアはヤマメの放流量が多く、「
キャッチ&リリース(C&R)区間」が設定されているため、魚の数が保たれているのだ。
利根川に比べれば明らかにハードルは低いのだけれど、まぁ、2人のレベルに即した軌道修正ってことで、ご容赦ください。
キャッチ&リリース区間で連続リリース!?
「役場前」と呼ばれるポイントに車を停めると、佐藤さんはすぐに下流へと歩き去った。次の橋までの区間はC&R専用エリアで、エサ釣りは禁止されているのだ。
八木さんは利根川で使っていたものより短い7.6フィート・3番のロッドを選び、駐車場のすぐ前で釣りをはじめた。結んでいるのはCDCダン、もちろんドライフライだ。
ヤマメの反応は早かった。中洲のヘチにある緩やかな流れで、水面を滑る白いフライが消えた! と思ったら、あえなく空振り。八木さんはもう一度、同じ筋を流す。
2度、3度と水面が割れるのだが、なぜかフッキングが決まらない。「フライが合ってないのかも。サイズを落としてみます」。しばらく間を空けてからアプローチすると、今度こそ乗った! ところが、すぐにラインがテンションを失う。バレた……。
しばらくここで粘ったが、やはりランディングには至らず、見切りをつけて下流へ向かうことにした。
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。