水面上の攻防 ――フライフィッシングの戦略
ハッチはまだか? 水温上昇時のワンチャンス
釣り人は、日の出の前後を「朝マヅメ」と呼ぶ。魚が捕食行動に入るため、釣りやすい時間帯だとされているのだ。だが、早春のヤマメ釣りにはこれが当てはまらない。むしろ水温の上昇する正午前後にチャンスが訪れることが多い。
フライフィッシングひと筋の八木さんは、
ドライフライを軸にねらう作戦を立てた。川の水が温かくなると、カワゲラなどの水棲昆虫が浮上して水面で
ハッチ(ふ化)しはじめ、ヤマメにとって格好のエサになる。この無防備な虫たちに似せて作った
毛バリの一種が、ドライフライである。
問題は、ハッチがなければ釣りにならないこと。魚が水面で虫を食べていなければ、ドライフライにも反応しづらいからだ。流れや天候の変化に気を配りつつ、ここぞ! というスポットを絞り込む。そしてひたすらハッチを待つ。アクティブに見えるフライフィッシングにも、時には忍耐が必要なのだ。
川を読む ――エサ釣りの戦略
直径0.01ミリ以下の極細イト
八木さんがフライタックルの準備を終えたころ、佐藤さんはすでに川のなかにいた。ただしサオではなく、大きな網を携えて。
ヤマメのエサ釣りは、
川虫(水棲昆虫)を採取するところからはじまる。釣具店に行けばミミズやブドウ虫などが売っているけれど、普段から魚が食べ慣れているエサを使うのがいちばん。使う川虫の種類によって釣果に差が出ることもザラだ。
水が冷たいので、お昼ごろがチャンスなのはフライと同じ。ただし川底近くをねらうため、今日の状況ではドライフライよりもやや有利か。
そして今回、0.3号という細いイトを選んだのが佐藤さんのこだわり。イトが細ければ細いほど水の抵抗が減り、魚に違和感を与えずにエサを流せるからだ。「尺ヤマメが掛かったら切られる可能性も高いですが」と笑う佐藤さん。うーん、その可能性はかなり、低いかも。
川底をさらって採取したいろいろな
川虫。クロカワムシはハリに
チョン掛けして使うと、水中でクネクネと動いてヤマメにアピールする。そのほかの種類は、お尻から刺して足の横からハリ先を出すと生きたまま使える
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
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