八木 健介 氏
月刊『つり人』編集長
八木 健介 氏
2001年つり人社入社。10年以上編集に携わった『月刊フライフィッシャー』の編集長を経て、2015年から『月刊つり人』編集長に就任。渓流・本流・湖・海と各フィールドで楽しめるフライフィッシングはもちろん、近年はアユ釣り、メジナ釣り、タナゴ釣り、船釣りなどの楽しさも再発見している。

シーズンを問わず始められる

週末、家族に喜ばれる魚を持ち帰ることができて、なおかつ気軽にトライできる船釣りはないか?とお捜しのお父さんは少なくないのではないでしょうか。今回紹介する、相模湾・湘南エリアのライトウイリー五目は、そんな釣りものの1つです。
湘南エリアにはレンタルタックルも用意し、ライトウイリー五目を取り扱う船宿がいくつかあります。そして、季節に応じてメインの対象魚は少しずつ変わるものの、この釣りは基本的にオフシーズンがないので、思い立ったらすぐに挑戦できます。長く船釣りの経験がなかった私が、とりあえず何かやってみようと思った時、始めやすそうだと思った釣りの1つがこれでした。そして、実際にやってみると、お手軽なだけではなく、釣り自体の面白さも充分にあることに気づきました。
ウイリーとは色の付いた糸をハリに巻いた簡素な疑似バリのことです。

この擬似バリの入った仕掛けを使い、港からも近い水深50mほどの比較的浅い海で、アジカマスイサキ、イナダ、イシダイといった魚をねらいます。シーズンを通じて基本になるのはアジねらいですが、この釣り方でねらえて食卓に持ち帰れる魚はすべて対象魚というわけです。
主役はアジ。まずはアジをねらって釣れることを目指しましょう
主役はアジ。まずはアジをねらって釣れることを目指しましょう
ウイリー五目で釣れたマダイ。高級魚が釣れるチャンスも充分あります
ウイリー五目で釣れたマダイ。高級魚が釣れるチャンスも充分あります

東京・横浜方面から離れているメリット

湘南にあるライトウイリー五目を実施している船宿は、新湘南バイパス・茅ヶ崎海岸ICを降りてすぐ目と鼻の先といった距離にあります。たとえば東京の西部や埼玉方面に住んでいる人から見た場合、東京湾や三浦半島に釣りに行こうと思うと時間も掛かりやすいですが、湘南エリアなら圏央道が新湘南バイパスにダイレクトに繋がっているためかなりスムーズです。実際、圏央道が開通してからこのエリアには埼玉方面からのお客さんがとても増えました。また、神奈川県に住んでいる私は、三浦半島も湘南エリアも距離的には同じくらいなのですが、湘南エリアに向かうほうが行きも帰りも渋滞に巻き込まれにくくラクなことが多いと最近は感じています。もちろん、これらは住んでいる場所で差が出ることなので一概には言えませんが、人によってはかなり便利なことは確かです。

ライトウイリー五目の道具

両軸受けリールはカウンター付きが便利。このほかに必要なサオ掛けは、簡易タイプでも大丈夫ですが、しっかり固定できるものがあるとなお安心です
両軸受けリールはカウンター付きが便利。このほかに必要なサオ掛けは、簡易タイプでも大丈夫ですが、しっかり固定できるものがあるとなお安心です
ライトウイリー五目のタックルをまず説明すると、ロッドは2m前後で7:3調子もしくは6:4調子のもの。広く船のライトゲーム用とされているもの、もしくはそのものずばりでライトウイリー用とされているものを使います。リールはPE2号のミチイトを150mほど巻いた小型の両軸受けタイプ。釣り場が少し深くなると電動リールのほうがラクですが、ライトウイリー五目の釣りに関する限り、ちょっと頑張れば手巻きでも充分対応できます。リールは出たイトの量が確認できるカウンター付きのものが便利。カウンター表示には若干の誤差が出るため、イトの量を正確に把握するには、本来はPEラインの色と目印(10mごとに色が変わり、1mごとに印が付いている)を使うのが基本とされていますが、数値がひと目で分かるカウンターは何かと使いやすいものです。
仕掛けは上から、ミチイトの先にまずスナップを介して片テンビンを接続します。片テンビンはアームの長さが30cmほどのものを使い、アームの先には市販のウイリー仕掛けをセットしますが、そのほか所定の場所にコマセビシを付けます。
コマセビシとはコマセカゴオモリが一体になったもので、相模湾のライトウイリー五目なら30~40号が標準。コマセカゴに詰める寄せエサはアミコマセです。
ウイリー仕掛けはウイリー1本と空バリ1本、もしくはウイリー2本と空バリ1本がセットになった全長2~2.5m。先端の空バリにはオキアミを付けます。魚の活性が非常に高い時には、ウイリーのみの仕掛けを使うこともありますが、ウイリーとオキアミを組み合わせるのが一般的です。
左がライトウイリー仕掛け。右は空バリに付けるオキアミ
左がライトウイリー仕掛け。右は空バリに付けるオキアミ
オキアミは尾を切ってからこのような形でハリに刺します
オキアミは尾を切ってからこのような形でハリに刺します
コマセビシとクッションゴムを付けた状態の片テンビン。黒いゴム(持ち手)のある側にミチイト先端のスナップ、クッションゴムの先にウイリー仕掛けを接続します
コマセビシとクッションゴムを付けた状態の片テンビン。黒いゴム(持ち手)のある側にミチイト先端のスナップ、クッションゴムの先にウイリー仕掛けを接続します

基本はシャクリ釣り

釣り方の基本はビシアジ釣りと同じシャクリ釣りです。シャクリによって寄せエサのアミコマセを海中に撒き、そこに集まって来た魚にハリ(ウイリーもしくはオキアミの付いたハリ)を食わせます。
実際の釣りの流れは、ねらうポイントに船が着くと、最初に船長から「水深40m。反応は底から5mまでです」といった水深と指示ダナのアナウンスがあります。指示ダナとは、これくらいの間に釣れそうな魚がいるからその範囲をねらってほしいという層のことです。
仕掛けを投入する際は、まずリールのクラッチを切ってスプールをフリーの状態にし、次にテンビンを持ってコマセビシから先に海に落とします。この時に順序を逆にしてハリ(ハリス)を先に海に入れてしまうと、その上にテンビンとコマセビシが乗っかって仕掛けが絡む原因になります。
仕掛けが落下している最中は船長が教えてくれた水深を頭に入れ、ミチイトの色やカウンターの数値から送り出されたイトの量を確認してコマセビシの着底に備えます。あと数mで着底となったらスプールに指を当てて落下速度を緩め、「トン」という着底の感覚が伝わったら、イトフケを出さずに素早くウイリー仕掛けの長さ分(約2m)だけリールを巻きます。最初にウイリー仕掛け分だけイトを巻くのは、仕掛けが這うことで根掛かりしないようにするためです。
アミコマセは金属のリングやカゴと一緒に船上で配られるものを船べりにセット
アミコマセは金属のリングやカゴと一緒に船上で配られるものを船べりにセット
こちらはアマダイ
こちらはアマダイ
そこからは船長の指示ダナの上限に仕掛けが到達するまで、何度かに分けてシャクリを行ないます。シャクリはサオを上にあおってカゴビシを持ち上げ、次にリールのハンドルを巻きながらサオ先を下げ、常にイトがたるまないようにしながら徐々にカゴビシを持ち上げてくるという、この釣りの基本となるロッド操作です。シャクリによってカゴビシの中に海水を流し込むことで、中に詰めたアミコマセが放出され寄せエサになります。同時にシャクリにはウイリー仕掛けを寄せエサの煙幕の中に入れる役割や、疑似エサであるウイリーに動きを与えるといった役割もあります。
どれくらいの動きの幅、どれくらいの頻度のシャクリが効果的かは状況や対象魚によっても変わりますが、いずれにしてもこの釣りでは、寄せエサの煙幕と仕掛けのハリがうまく同調しないと釣れません。まずはこの2つが海中で重なるさまをしっかりイメージしながら釣るようにしましょう。
ライトウイリー五目の釣りでは、寄せエサのアミコマセはなるべくパラパラと少量ずつ出ていくほうが効果的とされます。そこでコマセビシの下側の窓は完全に閉め、上側の窓のみを空けた状態にする方法がよく用いられます。この状態でシャクリを行なうと、アミコマセはコマセビシが持ち上げられた時ではなく、その後にわずかにコマセビシが下がるタイミングで、下からの水に押されて上の窓から少量ずつ放出されます。シャクリ方のほかにも、このようなタックル側の調整も大きく釣果に影響します。
アタリはシャクリのあとに一定のポーズ(休止)を入れたタイミングで、穂先に出て目で分かるか直接手に感触が伝わって来ます。アタリが得られたら、その時のタナを覚えておくのが大切。船長の指示ダナの範囲の中でも、実際には特にここでよく当たるというアタリダナがあるもので、このアタリダナにいち早く気づき、その前後で集中してシャクリを入れて寄せエサを利かせ、なおかつそこに仕掛けのハリを持って来られるとアタリが連発します。この正解を自分で見付けられた時の面白さは格別です。

奥も深いテクニカルな釣り。おすすめはビギナー講習会

五目釣りというと入門者向けのイメージがありますが、ウイリー五目の釣りはそんな奥深さゆえに、ベテランにも楽しむ人が少なくありません。
とはいえ、最初からあれもこれも覚える必要はなく、まずは基本的な釣り方を一通り経験してみるのが一番です。湘南エリアの船宿の1つである平塚の「庄三郎丸」では、男性の入門者はもちろん、女性や小中学生も対象にした、船釣りセミナーを毎月実施しています。3~5月のテーマは今回紹介したライトウイリー五目です。シーズンが長く、いつでもトライできる釣りですが、まずはそんな機会を積極的に活用してチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
こちらのお父さんはライトウイリー五目で釣れたアジを生きエサにして立派なワラサ(ブリの幼魚)をゲット!
こちらのお父さんはライトウイリー五目で釣れたアジを生きエサにして立派なワラサ(ブリの幼魚)をゲット!
週末はお父さんと息子さん(小学生以上)のペアもよく見かけます
週末はお父さんと息子さん(小学生以上)のペアもよく見かけます
今回ご紹介したエリア
神奈川県/相模湾のライトウイリー五目MAP
アクセス
東京方面からは圏央道を経由して新湘南バイパスに入り、現在の終点である茅ヶ崎海岸ICを降りて突き当りのR134を右折。相模川に掛かる橋を渡り終えてすぐにある路地を左に入り、そのまま川に戻るように進むと庄三郎丸まで行ける。路地を通り行き過ぎて高浜台の交差点まで行った場合は、高浜台交差点を右折し、さらに次の信号も右折してから、相模川を目指して橋の上流側から堤防に沿って走る道を海方向に進めば同じく庄三郎丸。
お問い合わせ
平塚港/庄三郎丸
https://www.shouzaburo.com/

ライトウイリー五目料金:9500円、アミコマセ・氷1個付き
出船時間:午前7時(沖上がり14時頃)
定休日:基本的に火曜日だがホームページの年間定休日を参照
※このコンテンツは2016年3月の情報をもとに作成しております。