天野 三三雄 氏
『ルアーパラダイス九州』編集長
天野 三三雄 氏
2009年から2014年まで月刊『Basser』の編集長を務め、現在は隔月刊誌『ルアーパラダイス九州』編集長。『アオリイカ地獄』、『ロックフィッシュ地獄』などソルト系ムックの編集長も兼務。2015年春より九州営業所に勤務。

どこよりも早い大型のチャンスをお手軽に

沖縄諸島で最も西に位置する久米島は沖縄県で5番目に大きな島。海のエメラルドグリーンと全長5km以上のサンゴ礁の白と空の青さが美しいコントラストを描くはての浜が人気の観光スポットであるほか、ダイビング、パヤオ(水深1000mに設置された人工漁礁)周りでのマグロ釣りも人気である。
豊かな海を楽しみに訪れる人が大半のため、それ以外の街中はまったく観光地化されておらず、ただひたすらにサトウキビ畑と小さな商店があるのみという静かな島だ。
エメラルドグリーンに輝く海にアオリイカの墨が散る
エメラルドグリーンに輝く海にアオリイカの墨が散る
クワイカは岸寄りの浅場に多い小型のアオリイカ
クワイカは岸寄りの浅場に多い小型のアオリイカ
プロ野球のキャンプ地に選ばれるほど冬でも温暖ではあるが、海水浴などマリンレジャーで賑わうのは初夏以降。やはり冬から春いっぱいは観光客も少なく、とくにホテルは盛期に比べるとかなり安く、沖縄への航空チケットも同様。
那覇乗り換えで久米島入りするのもいい。しかし前述したように観光地化されていない静かな島ゆえ、沖縄本島を拠点に観光を楽しみつつ、釣りは久米島で楽しむというプランもおすすめだ。その際は泊港からのフェリーが片道おとな3390円、子ども1700円とお手頃価格。運がよければクジラやトビウオウォッチングも楽しめる。観光オフシーズンにホテルがリーズナブル価格になるのは久米島も沖縄本島も同じである。1泊は本島、1泊は久米島と分散させるとよりディープに両島を味わえるだろう。いずれにしても、この時期は最大級に育った大型アオリイカが釣れるチャンスだ。
前日の晩に釣れたという2kg台後半の墨跡。2月上旬でこのサイズがねらえる釣り場はそうそうない
前日の晩に釣れたという2kg台後半の墨跡。2月上旬でこのサイズがねらえる釣り場はそうそうない
そんな久米島を愛してやまないのがエギング名手として知られる笛木 展雄さんで、すでに20年以上、毎年のように訪れ、多い年には1年に3~4回も訪れるという。
「もともとはダイビングで来て、その後はキハダマグロやGTなどのビッグゲームにのめり込んで、そして今はやっぱりアオリイカねらいがメインですね。いや、島の人たちと家族づきあいしているからそっちがメインかな(笑)」
そう語るほど島や島の方々と濃密につながっている笛木さんだが、とりわけ早春の久米島は特別だと言う。
「温暖な九州でもアオリイカが本格的に釣れだすのは4月以降。鹿児島など南のほうでも早くて3月。福岡など北のほうならゴールデンウイークころにようやくピークが来ますけど、ここ久米島は僕が知る限り、もっとも早くから大型がねらえるんです」

3種類のアオリイカ

クワイカは色素細胞に違いがあるようで、シロイカやアカイカには見られない模様と色味を持つ。小型ゆえ市場価値こそ低いものの味は通常のアオリイカと変わらない
クワイカは色素細胞に違いがあるようで、シロイカやアカイカには見られない模様と色味を持つ。小型ゆえ市場価値こそ低いものの味は通常のアオリイカと変わらない
こうしたサンゴ礁とサンゴ礁の切れ目や船の出入りのために深く掘られたミオ筋はアオリイカの通り道でありクワイカの付き場
こうしたサンゴ礁とサンゴ礁の切れ目や船の出入りのために深く掘られたミオ筋はアオリイカの通り道でありクワイカの付き場
沖縄には3種類のアオリイカがいる。本土で普通によく見かけるアオリイカであるシロイカと、シロイカよりも大型に成長する南方系のアオリイカであるアカイカ、そして成長しても400g程度までの小型のアオリイカであるクワイカ(クアイカとも言う)だ。
これら3種類のアオリイカは見た目が非常に似ており、長年イカの分類学者も見分けがつかなかったが、沖縄の漁師さんは昔からこの3種類を分けて水揚げし、それぞれに値段の差を明確につけていた。近年になりDNAや酵素を調べた結果、この3種は遺伝的に別の系統のイカであることが明らかになったわけだが、沖縄の漁師さんはそんな科学的な検査に頼ることなく3種に分けていたのだから目利きの正しさには恐れ入る。
ちなみにもっとも高価とされるのは、本土の人にもおなじみのシロイカであり、次いで大きく成長するアカイカ、そして最後がクワイカだ。ただし、このクワイカは沖縄や小笠原など亜熱帯でしか見られないことから、小さいながらもエギングマニアにとってはぜひ釣っておきたいターゲットと言える。
とりわけ大型に育つとされるアカイカは日中、水深100mあたりの深場にいることからオカッパリでねらうことはなかなか難しい。しかしシロイカはリーフの内と外を、エサを求めて行き来しているので出会えるチャンスがある。クワイカはリーフ内の浅場に多いことからもっとも手軽にねらえる。
なお、久米島のシロイカも産卵のピークは春だが、個体差も大きく、全体的に見れば周年産卵しており、周年成熟した大型がねらえる。というのもアオリイカの産卵に適した水温は17℃以上とされるが、久米島では冬でも水温がそれを下回ることはないからだ。

地元の人たちは島内にいくつもある漁港と、イカの通り道になりそうなリーフの切れ目やミオ筋でオカッパリを楽しんでいる。リーフに立ち込んでの釣りは夕方から夜がメインであり、干満差によって帰ることが難しくなることもあるため、ビジター向きではないから漁港の釣りをすすめる。漁港は台風に備えた大型のものが多く、フェリー港など大型の漁港には総延長1kmもの長大な堤防もある。レンタカーを利用して風向きによってラン&ガンすればよい。
食べごろサイズのクワイカ
食べごろサイズのクワイカ
最大4kgオーバーのアカイカや3kgオーバーのシロイカがねらえ、小型のクワイカとも遊ぶことになるから餌木のサイズは大小必要になる
最大4kgオーバーのアカイカや3kgオーバーのシロイカがねらえ、小型のクワイカとも遊ぶことになるから餌木のサイズは大小必要になる
水温が温暖のためどこよりも早く大型がねらえ、その後も周年チャンスのある久米島だが、海水浴ならいざ知らず、気持ちよくエギングが楽しめるのは晩春まで。まさに今が好機である。
今回利用したイーフビーチに隣接する久米島イーフビーチホテル。こうしたリゾートホテルの宿泊も冬から春はかなり格安
今回利用したイーフビーチに隣接する久米島イーフビーチホテル。こうしたリゾートホテルの宿泊も冬から春はかなり格安
目の前は日本渚百選に選ばれたイーフビーチ。ここが海水浴客で賑わう前が釣り人にとってねらい目である
目の前は日本渚百選に選ばれたイーフビーチ。ここが海水浴客で賑わう前が釣り人にとってねらい目である
ソーキそばや久米そばも美味。そのほか生産量日本一のクルマエビを使ったエビフライやモズクでも有名だ
ソーキそばや久米そばも美味。そのほか生産量日本一のクルマエビを使ったエビフライやモズクでも有名だ
今回ご紹介したエリア
沖縄県/久米島のアオリイカMAP
アクセス
沖縄本島からフェリーまたは飛行機を利用。フェリーは本島の泊港と久米島の兼城港を4時間弱で結ぶ。1日2便。
お問い合わせ
久米商船株式会社(久米島フェリー)
TEL 098-868-2686
※このコンテンツは2015年3月の情報をもとに作成しております。