SL230 - 1997.04

SL230
SL230
 
開発の狙い

 SL230は、たとえば「急にポッカリと空いてしまった時間に近所の河原へふらりと出掛ける。 土手に寝転んで青空を見上げる。草の香りを胸いっぱいに吸い込んでの昼寝が気持ちいい。 そんな気にさせるバイクが欲しい」開発スタッフのこんな気持ちからプロジェクトはスタートしました。 そして開発の第一歩として、今、原点バイクにユーザーが何を求めているのか、 ライダー心理の探求から始めました。

そして、

  • オフローダーの休日は、良き友と自然の中へ、時としてハードに、時としてゆったりと・・・
  • ユーザーはバイクを持つことで日常から離脱する脱日常性を求める
  • 多くのユーザーにとってバイクは休日だけの道具ではない。脱日常性だけの非日常性は負担となる
  • 林道を攻めるポジションも、必要以上のサスペンションストロークも、迅速な体重移動を優先する 細身のシートも、その時だけの楽しさは、日常の中では辛さを強いる
  • などの心理が現れました。

さらに、SL230は“脱日常のために日常を犠牲にしない”モーターサイクルとするとともに、 安心して軽快に走れるサイズと排気量を設定し、乾燥重量105kgという超軽量へのこだわりを 持つライトウェイトオフローダーを目指すこととしました。

そして、開発のキーワードを「FREE STYLE LANDSPORTS」(もっと自由に、気軽に)と決定し、

  • 手頃感ナンバーワン、 JUST SIZE、
  • 使い易さナンバーワン、JUST POWER
  • 新鮮な外観、      JUST APPEARANCE

の3つの開発目標を設定し、各部の設計をスタートしました。

SL230

マスの集中
 “重い物は重心に近く、よりコンパクトに”全体の部品レイアウトとディメンションを 徹底的に検討した結果、フレームボディはモノバックボーンタイプの ダイヤモンドフレームを採用。リアクッションはメインパイプの真後ろに配置する とともに、バッテリーなどの電装部品はメインパイプの左側に配置することによって、 ピッチ慣性やロール慣性を極力抑えた特性としています。また、マフラーも シリンダー右側からほぼ斜めストレートに配置し、ロール慣性を抑えています。

軽量化
 乾燥重量目標を105kgに設定し、徹底的な軽量化を図るため各部の構成と小型化を 部品レベルで1点ずつ見直し、完成車の重量が最初の図面段階で目標値に達するまで 徹底した検討を行いました。
 フレーム廻りでは、フレームボディのシンプル化、アルミ製ピボットプレートの採用、 アルミスイングアーム等、軽量設計を施すとともに、操舵慣性を最小に抑えるため ハンドル廻りの大幅な軽量化を実施。アルミパイプハンドルの採用をはじめ、 ポリカーボネイト樹脂製ヘッドライトレンズ、小型軽量タイプの コンビネーションスイッチの採用など、車体全体に及ぶ軽量化によって105kgの 乾燥重量を達成し、軽快な操縦性を実現しています。
 さらに、軽量コンパクトな車体と組み合わせた足廻りは、フロントサスペンションに 230mmのストロークを持つφ35mmフロントフォークを採用。リアは180mmの クッションストロークを持つプロリンクサスペンションとし、アルミスイングアームの 採用など徹底した軽量設計としています。

車体サイズ
 これらのレイアウトとサスペンションの組み合わせによって、 1,345mmのホイールベースと左右それぞれ51°のハンドル切れ角を設定し、 最小回転半径を1.9mとしています。これによって、小回りの効くハンドリングと、 最重要項目とした軽量105kgの車体重量とともに高いレベルの軽快性、 扱い易さを実現しました。これらは、オフロード走行時には高い安心感につながって います。
 また、シート高は810mmに設定。スリムさと居住性に優れたシート幅を確保しながらも、 タンクにつながるラインを徹底した曲面形状処理にすることによって抜群の 足着き性を実現するとともに、最低地上高を260mmに設定し、扱いやすい、 安心感のあるライディングポジションとしています。
 これらによって市街地からウッズライディングまで、高い走破性と良好な足着き性を 両立しています。

SL230

  エンジンキャラクター
 パワーユニットは、250ccクラスなみのフライホイールマスを持ち、 極低回転からスムーズに吹き上がる新設計の空冷・4サイクル・OHC・単気筒230cc エンジンとCV型キャブレターを組み合わせることによって、 粘り強くコントロール性に優れた扱い易い出力特性としています。

高品位なスタイリング、カラーリング
 全体のフォルムはマスの集中を感じさせる軽快感あふれるスタイリングとし、 ガードパイプ付きの丸型大径(φ170mm)ヘッドライト、 スリムでフラッシュサーフェス化したタンク、シート廻り、高い空力特性を発揮する フロントフェンダーなど、機能に裏付けられたスタイルを追求しました。
 外装品の仕上げは、オールステンレスのストレートマフラーや、ハンドルバー、 ピボットプレートなど多くのアルミパーツやステンレス素材を採用するとともに、 メタリックカラーを中心とした塗装を施すなど、これまでのオフロードバイクの枠を 越えた価値観を付加しました。
 また、日常生活にも溶けこめるよう、カラーリングやロゴタイプはカジュアルで ファッショナブルイメージのシンプルなものとしています。

新たな付加価値
 リアタイヤにチューブレスタイヤを採用することで、パンクトラブル時の安心感を 高めています。
 フューエルタンクは、「オフを遊ぶ」楽しさを充分に味わえるよう、スリムさと マスの集中を図りながらも10Lの大容量を確保し航続距離を稼いでいます。
 シートはキーロック方式でワンタッチ脱着を可能とし、シート下スペースもマスの 集中に寄与すべく、車載工具を前方に、書類バッグを後方に収納します。
 エアクリーナーのメンテナンスもシート下から行える方式とし、かがみ込むことの ないワンタッチメンテナンスを実現しています。
 チョークレバーは、左クラッチレバー上に配置し操作性を向上させています。
フューエルタンク



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