NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
CHASSIS


直進安定性と旋回性能を限界まで追求した、
絶妙のサスペンション・チューニング。
刻々変化するさまざまな走行状況のなかで、つねに最適な特性を引きだせるよう、ジオメトリーをはじめ、きわめて細やかなチューニングを施しています。
フロント・サスペンションは、まず、キャスター角を8°と大きく設定し、優れた直進安定性を実現しました。と同時に、この大キャスター角により転舵キャンバー変化が増加し、旋回時にタイヤが路面に対してより垂直に立つことで、あざやかな旋回性能も身につけました。
ただし、大キャスター角はキャスタートレールの増加をともなうため、旋回時の路面からの入力により、ステアリング保舵力が大きくなる問題が残っています。そのため、キングピンをタイヤセンターより後方へオフセットし、キャスタートレールを小さく設定。直進安定性とステアリングの軽快感、リニアリティを両立するハイキャスター・ショートトレールを実現しています。
また、ホイールセンターでのキングピンオフセットを34mmと可能なかぎり小さくして、キックバックやジャダーといったステアリングに伝わる不快な現象の低減も図っています。
さらに、フロント・リアともに、路面との接地点におけるキングピンオフセット量を-5mmのネガティブ・オフセットとすることで、ブレーキング時の安定性を大幅に高めています。
一方、リア・サスペンションでは、外力によるアライメントの変化を減少させるため、キャスター角、キャスタートレールともにゼロに設定。そのうえでトーコントロールすることにより、おだやかで安定した挙動をもたらしています。

イラスト

あらゆる条件下で、タイヤがつねに
路面と垂直に接地する、アライメント変化。
タイヤがバンプしてもリバウンドしても、フロントのトー変化が極力ゼロになるように設定。素直でリニアリティのあるハンドリングをもたらすとともに、左右の条件が異なる荒れた路面でも、優れた直進安定性を発揮します。そして、リアのトー変化は、バンプでわずかにイン側に変化させることで、旋回時の姿勢を安定させています。
また、バンプ時のフロント・キャンバー変化を大きくすると荒れた路面での直進安定性が低下するため、バンプ・リバウンド時のフロント・キャンバー変化は比較的少なめに設定。ただし旋回中は、大キャスター角により転舵キャンバーが増えてくれることで、タイヤはより真っすぐに立つことができるわけです。
逆に、リアは転舵しないため、キャンバー変化を大きくし、同様にタイヤが旋回時に路面に垂直に接地するように設計。つねに高性能タイヤの能力を十二分に引きだせる特性をもっています。
一方、外力が加わった場合。旋回中のサイドフォースに対しては、フロントのトー変化を殆んどゼロとし、リアを若干トー・インとして、安定側に設定。旋回時の安定した挙動をもたらしています。また、ブレーキングに対しては、フロントはトー・アウト、リアはトー・インの傾向をもたすことにより、旋回時のブレーキングのスタビリティも含め、充分に安定したブレーキング姿勢を確保しています。
駆動力に対しても、同様に安定側とするため、加速時にはリアのトーはインへ変化し、大パワーによる急加速においても姿勢のくずれをおさえています。

制動時、発進時、旋回時の姿勢変化を、
人間の感性にフィットさせたサスペンション・ジオメトリー。
たとえば、ブレーキング時に、ボディが前に沈みこむ。こうした動きは過度になると不快なものながら、まったく無くした場合には人間の感覚に合わず、却って安心感が失なわれるものでもあります。
そこで、フロントにアンチダイブ・ジオメトリー、リアにアンチリフト・ジオメトリー、及びリアドライブ車特有の発進時におけるリアの沈みこみをおさえるアンチスクウォート・ジオメトリーを採用していますが、いずれも若干量こういった動きを残すことによって、異和感のない、人間の感覚により素直なセッテングとしています。
また、旋回時のロール角に関しても、不安感を与えない適度な量とスムーズな動きで、コーナリングをより自然なものとしています。

サスペンションの基本テーマである、
バネ下重量を大幅に軽減した、
軽量アルミ・サスペンション。
ボディをオールアルミ化しただけにとどまらず、徹底した軽量化のために、アーム類やナックルなどサスペンションを構成する主要部品の約80%をアルミ化。バネ下重量の大幅な軽減を達成しました。このバネ下重量の軽減は、タイヤの接地性を向上させて運動性能を高めると同時に、優れた乗り心地の確保にも大いに寄与してくれるものです。
さらには、サスペンションのアームを取り付けるサブフレームまでもアルミ化するなど、世界に例のない軽量化を図りながら、しかも高剛性を実現しました。
サスペンションにおいては、ナックル及びハブキャリアを鋳造アルミとし、あとはすべて鍛造アルミを採用。部位による効率的な使い分けを行なうことで、より大きな軽量化を可能としています。
また、一般のAアームが板状やパイプの組み合わせで構成されているのに対し、一体成形で骨格化しているため、部品点数が少なく、余分な結合部が無いため、軽量で高強度な優れた特性をもっています。

ダブルウイッシュボーン・サスペンションの走りの資質を
さらに高めた新HPVダンパー。
ピストンだけでなく、ボトムにも新開発のHPV(HONDA PROGRESSEVE VALVE)を採用。路面からの微振動はスムーズに吸収し、大きな振動はしっかりとおさえる高度な対応力で、荒れた路面でも高い接地性と乗り心地のよさをもたらします。 ロールの初期からしっかりと効き、サスペンションの動きにあざやかに追従する、応答性に優れた高性能システムです。   新HPVダンパー

NSXの高出力と高回転に応える
新開発ドライブシャフト。
高性能スポーツカーエンジンのハイパワーと高速走行に対応するため、イン・アウトともに、低振動のフラットローラータイプのジョイントとし、同時にスライド量も大きくした新しいドライブシャフトを開発しました。
これにより、高回転域まで世界トップレベルの低振動を実現するとともに、大きなスライド量がサスペンションの自由度も向上。サスペンションのストローク量とキャンバー変化を増大させ、結果として幅広タイヤの接地性を高めて旋回性能を向上させるなど、走りのための多くの効果を引きだしています。
  新開発ドライブシャフト




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