LEGEND - 1990.10

LEGEND
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CHASSIS

大転舵角を確保し、乗り心地向上にも貢献する、フロントL字型ロアアーム。
フロントL字型ロアアーム
縦置エンジンが生んだスペース効率にL字型ロアアームの採用があいまって、タイヤ切れ角を大幅アップしました。この結果、2,910mmというロングホイールベースでありながら、最小回転半径5.3mという、際立った小回り性を実現しています。また、路面の突起を通過する際などにタイヤへかかる前後方向の外力に対しては、L字型ロアアーム前端を支えるフロントビームとブッシュによってその力を吸収するなど、ほとんどの衝撃を内力化する構造としました。さらに、このL字型ロアアームによって、前後入力をボディが受け止める点を剛性の高いサイドフレーム後端に設定することが可能となり、キャビンへの振動伝達を最小限に抑え、乗り心地向上に寄与しています。

軽量アルミサブフレーム&異方向特性マウントラバー(フロント)。
サブフレームは、高剛性アルミフレーム本体の下面に、さらにアルミロアプレートをボルト締めする新構造をとり入れ、大幅な軽量化を達成しました。同時に、振動低減のためにサブフレーム・マウントラバー付としたにもかかわらず、ラバー無しの場合よりも高いロアアーム取付け点横剛性を実現しています。しかも、4つのサブフレーム・マウントラバーに、ある方向には硬く、その直角方向には柔らかい異方向特性をもたせることで、コーナリング時などのサイドフォースによってサブフレームが回転しようとする力を抑え、トー変化のきわめて少ない構造としました。
サブフレーム サブフレーム

制動時にもまろやかな乗り心地を確保するブレーキバイアスキャンセル機構(リア)。
ラジアスロッドを横V字形状にし、後端をそれぞれアッパーアーム、ロアアームの中間部に取付けたことによって、ブレーキング時にコンプライアンスブッシュへかかる前後力を約20%削減。まろやかな乗り心地を確保しました。また、そのラジアスロッド後端取付位置の設定は、ロッド前端の車体外側への移動を可能にし、ボディのサイドフレーム断面の拡大による高剛性化に寄与しました。(*路面突起により、ホイールセンターがブレーキ力と同等の前後力を受けた場合と比較)
ブレーキバイアスキャンセル

高品位な走りを実現するスプリング/ダンパー特性。
深々としたしなやかさに、なめらかで締まり感のある乗り心地を得ながら、そこに高い安定性も両立させるため、フロント、リアともにスプリング/ダンパー特性の徹底した見直しを図っています。まず路面の変化をソフトに吸収する低バネレートのスプリングを採用。サスペンションストロークも充分に確保しました。その上で大容量のバンプストッパーラバーを設けてバンプ側のストッパーの立ち上がりをなだらかにする一方、リバウンド側の過大な伸びを防ぐリバウンドコントロールスプリングをフロントダンパー内部に組み入れました。この結果、バンプ側、リバウンド側、両方向にバネレートのなだらかな非線形特性をもたせることが可能となり、大きな凹凸路面での突き上げ感を解消して広いストローク域で乗り心地向上を果たしながら、レーンチェンジ時などのロール挙動も抑制。安定性の向上にも寄与しています。また、ダンパーは、路面からの微振動はスムーズに吸収し、大きな振動はしっかり抑えるなど、伸び・縮み速度の急変に対しても優れた応答性の減衰力を発揮するHPVバルブをピストンバルブ、ボトムバルブ双方に採用するとともに、ピストン径も拡大。これにより、バネ下のバタツキ感がない、締まりのある乗り心地を得ると同時に、ロールの収束やタイヤの接地性を向上させ安定感を高めています。さらに、ダンパーマウントラバーを大型化し、サスペンションからボディへの振動を極力、遮断。低バネレート・スプリングと高応答HPVダンパーの絶妙なコンビネーションが高品位な走りの実現に大きく貢献しています。
FRONT CUMPER

ストローク
ゆっくりとしたストローク

ストローク

走りの資質をきわめて高度なレベルまで引き上げた、最適なチューニング。
スプリング/ダンパーの優れた特性などサスペンション自体がそなえた能力、タイヤのもてる能力をつねに最大限に引き出し、高級ドライバーズカーとして、より洗練された乗り味、高度な走行性、操縦性を実現するため、ジオメトリー変化特性をはじめ、入念なチューニングを施しています。
大きめのキャスタートレール設定(フロント)

路面からステアリングへ伝わる反力の要因を分解すると、ドライバーが情報として必要な反力=キャスターアクションと、不要な反力であるトルクステアやワンダリングトルクなどに分けられます。新レジェンドのフロントサスは、トレールを大きく設定することでキャスターアクションを拡大すると同時に、パワーステアリングのアシスト率をアップ。これにより、必要な反力は伝えつつ、不要な反力を縮小し、より確かで洗練されたステアリングフィールを確保しています。
大きめのキャスタートレール設定
●大きめのキャスター角設定(フロント)
キャスター角を増すことにより、旋回時にはタイヤは後傾した回転軸まわりを転舵することになります。この結果、旋回中のタイヤは内側に倒れ込んで外傾を防止。旋回時の外輪キャンバーを確保し、リニアな操縦性を実現しています。また、この大きめのキャスター角設定は、ステアリングへのキックバック削減にも有効です。突起などを乗り越える際に路面から受ける反力の主成分は垂直方向ではなく、少し後方へ傾いているため、キャスター角を増してキングピン軸を後傾させることにより、路面反力によって発生するキングピン軸まわりのモーメント=キックバックを縮小しました。
キャスター角
バンプ時のホイールセンター軌跡の後傾化
バンプ時のホイールセンター軌跡の後傾化(フロント)

路面の突起などに乗り上げた際にホイールの受ける力が垂直方向ではなく、斜め後ろ向きであることから、サスペンションのストローク方向を後傾させ、振動吸収性を向上しました。
コンプライアンスブッシュのプリロード削
コンプライアンスブッシュのプリロード削減(フロント/リア)
コンプライアンスブッシュに前後方向の荷重があらかじめかかっていると、ブッシュが押し潰されて硬くなり、振動の吸収能力が低下し、経年変化も起きやすくなります。とりわけ、後ろ向きに荷重がかかっている場合に、この傾向は強くなります。そこで、フロント/リアともにダンパー/スプリングをサイドから見て直立にレイアウトし、コンプライアンスブッシュにプリロードがかかならない設定にしました。
トー変化特性
●トー変化特性(フロント/リア)
サスペンションストロークの増大に対応するため、タイヤの上下動によるトー変化をフロント、リアともに極小化。限りなく0に近いジオメトリー設定とし、優れた直進安定性を確保しています。
キャンバー変化特性
キャンバー変化特性(フロント/リア)

タイヤの能力を最大限発揮させるには、タイヤはつねに路面に対して垂直であることが理想です。ダブルウイッシュボーン形式の特徴を活かし、バンプするにしたがってネガティブキャンバーが強くなるように設定。コーナリング中にも、路面に対するキャンバーの外傾を極力防ぎました。
ブレーキング時トー変化0特性
ブレーキング時トー変化0特性(フロント/リア)

制動時のトー角変動による、進路の乱れを防ぐため、各ブッシュの配置および特性の最適化を図りました。フロントは、ブレーキ力によるロア・ボールジョイントとタイロッド・ボールジョイントの変位が同一方向となるように前後のブッシュ剛性バランスを設定し、トー変化をほぼ0にしています。一方、リアはロアアームブッシュなどの変形によるトーアウト量と、前後のロアアーム長の差により発生するトーイン量がキャンセルし合う設定とし、トー変化を極小化しました。
ロールセンター/ロール軸レイアウト

ロールセンター/ロール軸レイアウト


ロールセンター高を、フロント・サスペンションは低く、リアは高めに設定。つまりロール軸を前方向に傾斜させるとともに、接地点軌跡半径もフロントに対してリアを若干長めにとりました。これにより、ボディサイズを感じさせない軽快なターンインを可能にし、「ジャッキアップ現象」を抑えて安定感あるロール姿勢を得ています。また、このフロント・ロールセンター高を下げた結果 、バンプ/リバウンド時のトレッド変化が減少し、路面ジョイントなどを通 過する際のステアリングへのキックバックやタイヤの進路ズレがきわめて少ない落ち着いた乗り味を獲得しています。

接地点軌跡半径=サスペンションが上下動する時のタイヤの接地点の軌跡を後方から見ると、ほぼ円弧 を描きます。この円弧の中心から接地点までの長さが接地点軌跡半径です。
ロールセンター高=接地点軌跡半径と車両中心面との交点の地上高をロールセンター高と呼びます。
ロール軸=フロント・サスペンションとリア・サスペンションのロールセンターを結ぶ直線を指します。
ロールセンター高、接地点軌跡半径、ロール軸と車両挙動の関係=ロールセンター高が高いとコーナリング中のロール角を減少させることができますが、高すぎるとコーナリング時に「ジャッキアップ現象」を起こしたり、突起に乗り上げた際の外乱が大きくなる傾向があります。一方、接地点軌跡半径が短すぎると、車高変化によるロールセンター高の差が過大となり操安性にも影響を及ぼします。また、ロール軸を前下がりに設定することによって、ステアリング切りはじめのターンイン挙動をスムーズにする効果 があります。

アンチリフトジオメトリー(リア)
アンチリフトジオメトリー(リア)


ラジアスアームなどのリンク配置を最適に設定し、制動時の姿勢変化を抑えています。                                             




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